【医師監修】出産の痛みってどれくらい?陣痛から分娩の流れ、痛みを軽減する方法も
3,615 View「出産には痛みがつきもの」と思っている方は多いでしょう。また、初めての出産で、どんな痛みがどれくらい続くのか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。理解を深めれば、ポジティブな気持ちで出産に臨むことができます。ここでは、陣痛や分娩の流れ、帝王切開や会陰切開、痛みを和らげるコツや無痛分娩についてご紹介します。《監修:つづきレディスクリニック》
陣痛ってどんな痛み?
陣痛に対して、「痛い」「苦しい」「辛い」というネガティブなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
陣痛の痛みの感じ方は人それぞれですが、「鼻からスイカが出るよう」「腰の骨が砕けそう」「10ヶ月分の便秘を出したいのに出ないようなつらさ」などといったエピソードを耳にすることがあります。
陣痛は確かに痛みを伴うものですが、ネガティブなイメージばかり先行してしまうと、緊張で身体が硬直してしまい、通常よりも痛く感じてしまうことも。
陣痛は、赤ちゃんが生まれるために必要なもの。
子宮と赤ちゃんが協力して、赤ちゃんを外の世界に出そうとしていると考え、陣痛をポジティブに受け止めてみましょう。
分娩ってどんな痛み?
陣痛で痛みを感じる場所はお産が進むにつれて変わっていきますが、主に外陰部から肛門の周りに痛みを感じることが多く、赤ちゃんが外に出るとき、ピークに達します。
「すごく強い力で引っ張られる」「焼けつくような痛みを感じた」と表現する妊婦さんもいます。
次の章では、陣痛について、お産の進行状況に沿って詳しくみていきましょう。
陣痛の始まりから出産までの痛みの変化
陣痛は、お産の進み具合によって、痛みの強さや痛む場所が変わってきます。
分娩の流れと痛みの様子をみていきましょう。
陣痛の兆候
前駆陣痛やおしるしは、もうすく陣痛が始まるという兆候です。
【前駆陣痛】
妊娠後期にお腹の前あたりに感じる痛みで、陣痛の練習のようなものです。
規則的で次第に強くなっていく本陣痛とは違い、前駆陣痛は不規則で弱い痛みで、歩いたり休憩したりしているうちに消えてしまいます。
前駆陣痛から本陣痛までの時間は、個人差が大きいです。
【おしるし】
お産が近づき子宮が収縮するときに、卵膜の一部がはがれて出血し、粘液と混ざって出てくるのがおしるしです。
粘り気があることが多いですが、量や色、おしるしから陣痛までの間隔は人それぞれです。
おしるし自体がない場合もあります。
分娩第1期~陣痛の始まり~子宮口が全開になるまで~
陣痛が始まり、子宮口が全開するまでの経過を「分娩第1期」と呼びます。
陣痛の間隔や痛み、子宮口の開き具合は、次のような流れを目安としておけば良いでしょう。
① 子宮口が0~2.5cmになるまで…陣痛の間隔は10分以内で、まだまだ耐えられる痛み
② 子宮口が2.5cm~4cmになるまで…陣痛の間隔は5~7分で、痛みは徐々に強くなって30~90秒と長くなっていく
③ 子宮口が全開に向かって急速に開いていく段階…陣痛の間隔は約3分で、痛みはピークに
④ 子宮口が9cm~10cm…陣痛の間隔は1~2分おきで、ピークの痛みが続く
最初は、お腹の張りや生理痛のような痛みから始まり、次第に痛みは強くなって痛みの間隔もせまくなってきます。
子宮口が10cmまで開くと全開のサイン。
第2分娩期では、いよいよ赤ちゃんが外の世界に出てきます。
分娩第2期~子宮口が全開になってから赤ちゃんが出てくるまで~
第2分娩期では、赤ちゃんの頭が骨盤にすっぽりとはまり、旋回しながらゆっくりと外に出てきます。
陣痛は1~2分おきになり、膣から会陰にかけて痛みのピークが続きます。
ここでは、医師や助産師の指示に従っていきみ、赤ちゃんが外に出てこようとするのを助けてあげましょう。
待ちに待った赤ちゃんとの対面です。
分娩第3期~赤ちゃんが産まれてから胎盤が出てくるまで~
産後5分ほど経つと、軽い陣痛のような痛みとともに子宮から胎盤がはがれ出てきます。
子宮が元に戻るために、後陣痛という微弱な陣痛が起こることもあります。
帝王切開・会陰切開をした場合の痛みレベルは?
帝王切開や会陰切開をした場合、痛みはどれくらいのものなのでしょうか?
どういう場合に、帝王切開や会陰切開をするのかも併せてみていきましょう。
会陰切開の痛み
会陰切開とは、医師が必要だと判断した場合に行われる会陰の切開です。
会陰を切開する直前に、会陰部に局部麻酔を注射することが多いため、会陰切開に気づかなかったいう方も。
切開した会陰部分を縫合するときに痛みを感じる場合もありますが、感じ方には個人差があります。
切開の傷は通常であれば4~5日でくっつき、産後1ヶ月頃までには痛みや違和感がなくなることが多いようです。
痛みが治まらない、排便時の痛みがつらいときには、我慢せずに医師に相談しましょう。
帝王切開の痛み
帝王切開とは、経腟分娩(通常のお産)が難しいと医師が判断した場合に、赤ちゃんを取り出すために、お腹と子宮を切開する開腹手術のことです。
帝王切開と聞くと怖いイメージがある人もいるかもしれませんが、「赤ちゃんとママの身体を守るための医療行為」だとポジティブに受け止めましょう。
帝王切開には予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類あります。
・逆子や多胎妊娠
・前置胎盤・低置胎盤
・赤ちゃんが大きい
・手術歴や持病がある
などの理由から、あらかじめ手術の日を決めて行うのが予定帝王切開です。
また、医師が母子の状態を見極めて、経腟分娩から帝王切開に切り替えるのが緊急帝王切開です。
出産時は麻酔を使用しているため痛みは感じませんが、手術後3時間ほどで麻酔の効果が薄れてきたときに、切開部分の痛みと子宮収縮の痛みを感じることも。
痛みがつらいときは、医師に相談して痛み止めを処方してもらいましょう。
陣痛の痛みを軽減させるコツ
陣痛の痛みを軽減させるには、たくさんの方法があります。
個人差があるので、実際に陣痛が来たときに試してみて心地いいと感じるものを実践してみましょう。
呼吸法を試す
鼻からゆっくりと息を吸って、口からゆっくりと長く吐き出す呼吸法である「ソフロロジー法」を試してみるのも効果的です。
長く深く呼吸をすることで身体がリラックスすると、余計な力が身体に入れずに出産に臨めるとされています。
赤ちゃんに酸素をたくさん送る効果も期待できそうです。
立ったり歩いたりする
可能であれば、病院の廊下や階段を歩いてみましょう。
立った姿勢で歩くことにより、重力によって赤ちゃんが下がってくるのでお産を促します。
痛いときには無理をせず、廊下の壁や家族に寄りかかって休みましょう。
腰を左右に大きく振ると、痛みがやわらぐ効果もあるそうです。
楽な姿勢で座る
椅子に腰かけてみたり、あぐらをかいてみたりして、自分の楽な姿勢を探して座ってみましょう。
産院によっては、アクティブチェアやバランスボール、分娩椅子などがある場合も。
好みの道具を使用して、リラックスできる姿勢をみつけましょう。
四つ這いになる
長い妊娠生活で腰痛があるママもいるでしょう。
腰痛がある場合は、四つ這いの姿勢になると産痛が楽になると言われています。
赤ちゃんが旋回しながら降りてくるのを助ける姿勢でもあります。
長時間四つ這いしていると膝が痛くなるので、クッションを使うなどして無理のない程度に行うのが良いでしょう。
マッサージをしてもらう
陣痛の波が来た時、マッサージしてもらったり家族に背中や腰をさすってもらったりすると陣痛の痛みがやわらぐ場合があります。
マッサージは指で圧迫するほか、テニスボールやゴルフボールを使うという方法もあります。
大事なのは、陣痛をやわらげる方法を選択肢としていくつかイメージし、助産師さんや立ち会ってもらう家族などに事前に伝えておくことです。
実際に陣痛がきたときに自分が心地よい方法を見つけられるように準備しておきましょう。
無痛分娩を選んだママたちの体験談
中には、「どうしても陣痛が心配」「陣痛の痛みに耐えられる自信がない」というママもいるでしょう。
陣痛に対する不安は誰もが持っているものです。
麻酔を用いて痛みをやわらげて出産する「無痛分娩」という出産方法もあり、メリットとデメリットを理解した上で選択するのもひとつの方法です。
ここでは、2人目のお子さんを無痛分娩で出産した妻を持つ「こんぺい父さん」が感じた体験談をご紹介します。
こんぺい父さんさんの奥様は、1人目のお子さんの出産時には、破水後に陣痛促進剤の投与をしてもなかなか本陣痛が来ないこともあり、心身ともに大変だったようです。
立ち会っていたこんぺい父さんさんも、何もしてあげられない無力感にさいなまれていたということでした。
そして、無痛分娩で迎えた2人目のお子さんの出産は、うっかり寝てしまうくらいだったといいます。
1人目のときとは比べ物にならないくらい静かな時が流れていて、心の余裕が大分違ったということでした。
陣痛は幸せな出産までの過程
陣痛は確かに痛みを伴うものですが、赤ちゃんが頑張ってママのもとへ出てこようとしている証拠でもあります。
長い妊娠期間を終え、「陣痛を乗り越えるとやっと赤ちゃんと会える!」とぜひポジティブに捉えてみてはいかがでしょうか。
痛みを軽減する方法を準備しておくことで精神的にも余裕を持ち、陣痛とうまく付き合う準備をしておきましょう。
【監修】つづきレディスクリニック
・理事長 吉岡範人
2005年、聖マリアンナ医科大学大学院を卒業後、同大学初期臨床研修センター産婦人科に入局。
16年間の医局勤務中、約2年間にわたりカナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学しがんの研究に従事。
2019年に事業を引き継ぐ形でつづきレディスクリニックの院長に就任。
・医師 鈴木季美枝
2006年に聖マリアンナ医科大学を卒業後、同大学にて周産期専門医の資格を取得し、産科医療を中心に従事。
現在はつづきレディスクリニックにて非常勤医師として勤務。
つづきレディスクリニック(http://www.tsuzuki-ladys.com/)
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