【医師監修】母乳が出ない…母乳の出を良くするために試したいことと先輩ママの体験談
3,673 View赤ちゃんが生まれる前まで、当たり前のように母乳育児を想像していたママも多いのではないでしょうか?けれど、実際は産後に「思ったより母乳が出ない」という話はよく聞きます。今回は、母乳の出を良くするために試したいこと、さらに母乳が出なかった時どうするか、といったことについてご紹介していきます。《監修:つづきレディスクリニック》
母乳が出ない?
母乳育児には
・母子のスキンシップが高まる
・母乳を通して赤ちゃんに免疫力をつけられる
・脳やあごを発達させられる
・ママも産後の体型を戻しやすい
などメリットがたくさんあります。
そのため、「母乳育児=いいこと」というようなイメージがある人も多いのではないでしょうか。
もちろん母乳育児は赤ちゃんにとってもいいことなのですが、実際は思うように母乳が出ずに悩んでいるママも多くいます。
「母乳育児=いいこと」というイメージからか、中には母乳が出ない自分を責めてしまうママも…。
母乳が出る、出ないはママのせいではありません。
一般的に母乳が出ない原因としては以下のことが考えられます。
・赤ちゃんがまだ上手に母乳を飲めていない
・不規則なストレスや疲れ
・食生活の乱れ
・乳管が開通していない
・出産時の大量出血や病気など医学的な理由
母乳が出ない原因が医学的な理由である場合は難しいですが、それ以外の原因の場合は母乳の出がよくなる可能性があります。
母乳が出る仕組み
そもそもどのような仕組みで母乳は出るのでしょうか。
母乳が出る仕組みを理解することも、母乳の出を良くするヒントになるかもしれません。
母乳が出る仕組みは以下の通りとされています。
1.出産後に胎盤が体外に排出されると、胎盤から分泌されていたエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少する
2.乳汁の分泌抑制がとれると、プロラクチンというホルモンが乳腺に活発に働きかけ、乳汁の生産を開始する
3.生産された乳汁は乳管を通って、乳管洞というところに蓄えられる
4.赤ちゃんが乳頭をくわえて吸う刺激により、乳頭の筋肉が緩み乳汁が分泌される
母乳は色が白く、少しなめてみると甘い味がしますが、その原料はママの血液です。
母乳が服などにつき、乾くと鉄っぽい血液の匂いがするのはそのためです。
原料が血液ということは、ママが食事から得た栄養と水分がその素になっています。
だからこそ、授乳中のママは栄養バランスの取れた食事を心がけ、積極的に水分を摂る必要があるのです。
母乳の出をよくする方法
医学的な理由で母乳が出ない場合以外は、まだ母乳の出が良くなる可能性があります。
ここでは、母乳が出ない時に試したい対処法を1つずつご紹介していきます。
赤ちゃんがまだ上手に飲めていない
母乳が出る仕組みでもご紹介した通り、母乳は赤ちゃんに吸ってもらうことで出てきます。
赤ちゃんの哺乳力にも個人差がありますが、ママも赤ちゃんも母乳育児の初心者。
母子ともにコツをつかむまで、諦めずに頻繁に授乳して赤ちゃんに吸ってもらうようにしましょう。
この時、哺乳力はあってもきちんと乳首をくわえられていないと上手に飲めません。
赤ちゃんが上手におっぱいをくわえられているか、くわえ方を確認しながら授乳しましょう。
もし、上手なくわえ方ができているかわからない場合は、産院の助産師さんに確認してもらうといいでしょう。
不規則な生活によるストレスや疲れ
産後のママは夜間授乳が頻回にあるため、常に寝不足な状態です。
このような状態ではいつ、誰が不規則な生活によるストレスや疲れで母乳が出なくなっても不思議ではありません。
ママのストレスは母乳の分泌を促すホルモンに影響を与えることがわかっているようです。
急に母乳が出なくなったママは頑張り過ぎなのかもしれません。
できるだけゆっくりと体を休め、無理のないように過ごしましょう。
食生活の乱れ
赤ちゃんのお世話にかかりっきりで、自分の食生活をおろそかにしてしまうのは産後のママあるあるです。
しかし、ママの栄養不足も母乳の分泌を促すホルモンに影響し、ママの血液からできている母乳にも直接関係します。
赤ちゃんに良質な母乳をあげるためにも、まずは自分の食生活を見直してみましょう。
また、体が冷えると血液の流れが悪くなるので、野菜を食べる場合には火の通った温野菜がおすすめです。
それではどのような食べ物が母乳に良いとされているのか、いくつかご紹介していきましょう。
【米類】
白米(無農薬のものがベスト)、あわ、ひえ、胚芽米、米粉パン
【小麦粉類】
うどん、そうめん、そば
食パン(天然酵母、保存料無添加、国産小麦粉使用)
※アレルギーの疑いがある場合は、小麦粉製品は除去する
【豆、豆製品】
豆腐、味噌(酒精、アルコールの使用していないもの)、豆乳
※大豆アレルギーの疑いがある場合は除去する
【肉、魚、卵】
鶏肉、羊肉(炒めるよりもゆで料理がベスト)、白身魚、イワシ、卵は1日1個
※卵アレルギーが疑われる場合は鶏肉も要注意
【海草】
わかめ、昆布、ひじき、あらめ、もずく
【野菜、果物】
根菜類(大根、人参、ごぼうなど)
果物は旬のものを少量
【油物】
えごま油(しその実油)、なたね油、ごま油、オリーブオイル(ごま油、オリーブオイルについては取り過ぎには注意)
【菓子類】
甘さ控えめのベビースナック、アレルギー用のお菓子
【飲み物】
番茶、麦茶、ほうじ茶、ハーブティー、たんぽぽコーヒー、たんぽぽ茶、ルイボスティー、どくだみ茶、柿の葉茶、果汁100%ジュース(加糖のものには注意)
【砂糖類】
一温糖、てんさい糖
いくつか試してみて、自分に合いそうなものを選んでくださいね。
乳管が開通していない
産後すぐはまだ乳管が開通しておらず、母乳も少ししか出ないことが多いようです。
また、一度開通しても乳管が詰まることもあります。
乳管が詰まるとおっぱいが循環しなくなり、乳腺炎を引き起こしてしまう可能性も。
母乳外来をしている産婦人科や助産院で母乳マッサージをしてくれるところを探してみましょう。
母乳が出ない時はどうすればよい?
母乳を出すための対策をしても、すぐにたくさん出るようになるわけではありません。
まだ母乳が出ない、または急に出なくなった時の対処法をご紹介します。
良く寝て適度に運動をする
いろいろと試行錯誤しても出ない場合は、思い切ってよく寝て適度に運動することを試してみましょう。
産後すぐで新生児がいるとなかなか難しいことではありますが、たまには育児を家族や行政のサポートにお願いして、ゆっくり眠ったり、久しぶりに運動したりしてみてはいかがでしょうか。
健康な生活をすることは良いおっぱいにつながると言われています。
母乳マッサージをしてもらう
母乳外来を探して母乳マッサージをしてもらうのは、即効性がある方法です。
特に乳管の未開通や詰まりが原因の場合、母乳マッサージは効果的です。
無理に自分でマッサージをすると乳腺を傷める原因になるため、プロの助産師さんにお任せするようにしましょう。
その際に、おっぱいのくわえ方チェックや授乳方法についてもアドバイスしてもらうと良いかもしれません。
ミルクに頼ってみる
母乳を出すためにずっと頻回授乳をしていると、ママの乳首が切れてしまったり睡眠不足になってしまったりし、トラブルになってしまうことも。
母乳が全てではありません。
たしかに母乳育児は素晴らしいものですが、そこにこだわりすぎる必要は全くありません。
まして、母乳育児にこだわってママがボロボロになってしまっては本末転倒です。
最近の粉ミルクは、母乳とほとんど変わらない栄養が摂れるようになっています。
国内での液体ミルクの発売も開始されたので、まずは一度試してみてもよいでしょう。
母乳が出なくて悩んだママ達の体験談
実際に母乳が出ずに母乳育児に悩んだ助産師さんの体験談から、今母乳育児に悩んでいるママに紹介したいメッセージがあります。
(以下引用)
完全母乳で育ててみたい、という気持ちは大きかったです。
特に、私は職業として助産師をしていたので、とても苦しかった。
当時は「完全母乳」=「理想の母」この方式を勝手に作ってしまっていて。
きっと、「絶対母乳を頑張りたい!」という気持ちは、お子さんを心から愛おしいと思う気持ちがあるからこそ、なんだと思います。
ついつい頑張りすぎちゃうのが、女性の特徴なのかもしれません。
(中略)
なにが正解でも、不正解でもないのが「子育て」です。
母乳だから、ミルクだから…よりも大切なのは
「あなたがどんな思いでお子様と向き合うか」
ということ。
完全母乳でもミルクでも、子どもを愛して、健やかな成長を願う気持ちに変わりはありません。
その気持ちがあれば母乳でもミルクでも、赤ちゃんとってはママからの最高の愛情だと言えるでしょう。
もし、今母乳育児を頑張りすぎているのなら、少し休憩してみるのもいいかもしれません。
頑張りすぎないことも、母乳の出を良くするために必要なことです。
完全母乳、完全ミルク、混合、いろいろな選択がある
たしかに母乳育児には様々なメリットがあり素晴らしいものですが、そこにこだわりすぎる必要はありません。
また、母乳が出ないことをママ自身が引け目に感じる必要も全くありません。
母乳が出るママも、仕事復帰の都合で早いうちから保育園に預ける場合は、混合ミルクになります。
わたしの場合は、子どもが低出生体重児だったこともあり、とにかく体重を増やすために産後すぐから粉ミルクを足しました。
順調に体重が増えてからは完全母乳にしましたが、保育園に入るタイミングで再び混合ミルクに。
今は母乳が出ないからミルクなのではありません。
ママや赤ちゃん、それぞれの状況からベストな授乳方法を選ぶことができる、ということです。
大切なのは日頃から赤ちゃんとしっかりスキンシップをとること。
母乳育児を頑張るママも素敵ですが、無理はせず時にはミルクも活用しつつ、赤ちゃんとの時間を楽しみましょう。
【監修】つづきレディスクリニック
・理事長 吉岡範人
2005年、聖マリアンナ医科大学大学院を卒業後、同大学初期臨床研修センター産婦人科に入局。
16年間の医局勤務中、約2年間にわたりカナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学しがんの研究に従事。
2019年に事業を引き継ぐ形でつづきレディスクリニックの院長に就任。
・医師 鈴木季美枝
2006年に聖マリアンナ医科大学を卒業後、同大学にて周産期専門医の資格を取得し、産科医療を中心に従事。
現在はつづきレディスクリニックにて非常勤医師として勤務。
つづきレディスクリニック(http://www.tsuzuki-ladys.com/)
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