育児をする中で難しいと思った一つが、「ごめんなさい」という言葉との付き合い方です。
人付き合いをする中で、「ありがとう」と「ごめんなさい」は大切な言葉。
けれども、特に「ごめんなさい」を言う難易度は、子どもには高いように思っています。
それは、「ごめんなさい」と言うまでには多くのステップがあり、状況の理解、それまでの経験、想像力が必要だと私は感じているからです。
たとえば、お友達とおもちゃの取り合いをして、相手が泣いてしまったとき、どんなステップが必要か考えてみます。
①「おもちゃの取り合いをしていて、相手が泣いている」という、状況を正確に理解する
②泣いている相手を見て、「相手もオモチャが欲しかったのだ」と相手の立場に立って気持ちを想像する
③「おもちゃを取られて悔しい思いをした」という自分の経験を思い出して、共感する
「自分もオモチャで遊びたい」という気持ちを持っている中、これらのステップを踏まえ、「ごめんね」と言う。
…とっても難しいですよね。
子どもの場合、状況の理解が難しかったり、経験が少ない分、相手の気持ちを想像しにくいもの。
また、自分の欲求に素直なのが子どもですし、それを胸にしまい込んでほしくありません。
これらのことを考えると、その場ですぐに「ごめんなさい」と言うのは、子どもにとってかなり難易度が高いと思っています。
「ごめんなさい」が言えない息子。丁寧に伝え続け、変化が訪れた日は突然だった
37,900 View「ごめんなさい」ってなかなか言えない子、状況に応じて言える子、必要ないときでさえ連発する子。「ごめんなさい」という一言に対して、親は同じように教えていても、3兄妹ではこれだけの差がありました。そんな中、長男の「ごめんなさい」との向き合い方が気になっていたのですが…
「ごめんなさい」と言うまでのステップを考えた
実践した「ごめんなさい」の伝え方
「ごめんなさい」という言葉を、どう教えればいいのか悩んだ私。
そんな中、「ごめんなさいはすぐに言えなくてもいい。言えるときを待っていい」という考えを知りました。
必要なときは教えながら、強要はせず、本人が言えるようになるまで待つスタイルをとろうと決めました。
「気持ちがなくても、『ごめんなさい』って言っておけばいい」と、子どもが思ってしまうことは避けたかったのです。
私が気を付けていたのが、まずはお互いの気持ちや考えを確認し合うこと。
子どもが「ごめんなさい」を言う相手は、きょうだいやお友達ということがほとんど。
「お友達もオモチャが欲しかったんだね」「そうされると痛いし、悲しいんだよ」と相手の気持ちを代弁すると、分かりやすいと思ったのです。
同時に、本人の気持ちや考えも聞きました。
何をしようと思っていたのか、どんな気持ちだったのか聞いたり、悲しさや悔しさといった感情も代弁し、お互いの気持ちを言葉にしたのです。
相手を思いやったり、仲直りしたいという気持ちがあることがわかれば、「そういう時は、”ごめんなさい”って言うといいんだよ」と話しました。
その上で、まずは私が謝るように。
それは、「親が謝る姿を見せると、子どもも学び、自ら考える」と聞いたことがあるから。
強要はしない代わり、私自身の行動から学んでくれるといいなと思いました。
3兄妹、それぞれの「ごめんなさい」
さて、「ごめんなさい」の教え方は同じでしたが、わが家の子ども3人の反応はそれぞれです。
まずは、末っ子で3歳の娘。
彼女は、すぐに「ごめん!」と言います。
謝らなくてもいい場面でも、「ごめんごめん~!」と言っています。
むしろ「ごめん~」と歌いながら走っているときも……。
「今の場面では言わなくていいんだよ」などと、根気よく「ごめんなさい」の意味を伝えていますが、まだまだ勉強中です。
次に3兄妹の真ん中で、年長の次男。
彼は、自分で悪かったなと判断すると、すぐに「ごめんなさい」と言います。
最初は言えなかったのですが、年中の頃、段々と言うようになりました。
一方で、自分が悪くないと判断したときは、「今、自分はこう考えて、こうして、こういうことが起こった。だから悪くない!」とはっきり説明し、主張します。
彼を見ていると、「ごめんなさい」を言う、言わないの判断力に感心させられます。
最後に3兄妹の一番上、小4の長男。
彼は、ずっと自分から「ごめんなさい」が言えませんでした。
兄弟げんかをして、明らかに自分が悪くても言えない。
本人の考えや気持ちを聞いても、何も言わずに黙り続けるのです。
長男は、寝る前に自分の本音を打ち明けることが多いので、布団の中で長男の気持ちや考えを聞きながら、「あれが悔しかったんだね」「向こうはこういう気持ちだと思うよ」と話をするように。
それでもあまり変化のない長男。
いつかは…と思いつつも、少し気がかりでした。
ある日突然の「ごめんなさい」
長男が「ごめんなさい」と言えないことを、心配していたある日。
長男と次男の兄弟げんかが始まりました。
けんか中、明らかにいけないことをした長男。
次男の気持ちを代弁しつつ、長男と次男には4歳の年齢差があることなども説明し、長男の考えを聞きました。
いつものように、何も言わない長男。
この日は珍しく何度も兄弟げんかをしていたので、こういう状況でも謝れないのかと肩を落とした私。
落ち込んだ気持ちを戻そうとキッチンに行き、片付けたり、料理をしていました。
すると少ししてからキッチンへ長男が来て、「さっきはごめんね」とひと言。
次男にも、「さっきはごめん」と言いました。
私は、こういう日って突然にくるのかと、驚き、少しの間呆然としてしまいました。
それから長男と2人で、本音の話し合い。
長男はたくさんの自分の考えや意見をもっている一方で、感情を溜め込むところがあると感じていました。
私は、「自分の気持ちや考えを口に出せるようになれば、本人の気持ちが楽になる」と思っていたのですが…
長男としては、「言うほどのストレスじゃないときは、話すことで思い出しちゃうから嫌だし、話したくない。でも、言わないとダメになるほどストレスが溜まったときは、話すから聞いて」とのこと。
どうして「ごめんなさい」が言えたのか、詳しい理由は聞き出せませんでした。
それでも、”いつでもあなたの話を聞くよ”という私の気持ちは長男には伝わっている。
そんな安心感があったので、「じゃあ、2人きりのときでも、寝る前でも、いつでもいいから話したいときに話してね」と伝えました。
長男の変化から思うこと
小さい頃はその日にあったことを何でも「ママ、聞いて聞いて!」と言っていた長男。
そんな彼も、もう小学4年生。
親に「話したいこと」と「話したくないこと」を自分で考え、選ぶようになったのだと、学びました。
そして、親に促されなくても自分で考え、「ごめんなさい」を言う決断ができるまでに成長していました。
長男自らの「ごめんね」はまだ始まったばかり。
もちろん言えないときもあります。
これまで、「ずっと言えなかったらどうしよう」という不安を感じたときもありました。
”ある日突然言えるようになった”と感じ、驚いた私。
ですが、長男は長男なりのステップを踏んでおり、一歩一歩進んでいたのかもしれません。
言われてすぐ理解する子もいれば、時間をかけて理解していく子もいる。
1年後かもしれないし、明日かもしれない。
その子のペースがあることを実感しました。
これからも、3兄弟それぞれの歩み方を理解し、信頼して見守っていきたいと思います。
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