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公開 2020年05月02日  

繰り返される兄弟げんかに散らかった部屋。夫の言葉に救われた日<第四回投稿コンテスト NO.3>

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4歳と1歳の息子を育てる、もろこしさん。繰り返される兄弟げんか、片付けても片付けても散らかる部屋。その日も、うまくいかないことの連続にため息が漏れたといいます。しかし、帰宅した夫から、ある言葉をかけられ…。誰かの言葉で、明日も頑張れる。そんな気持ちになれるお話です。



今日は特にうまくいかない1日。

気づけばもう夕方。散らかったたまの絵本、プラレール、トミカ。

取り込んだだけで放置している洗濯物。お風呂掃除はいつしようか…。

4歳の長男は、自分の遊びに夢中。

一生懸命作ったブロックの車は、今日の彼の最高傑作である。

1歳の次男には、長男が面白そうに遊んでいる最高傑作を壊さないなんて選択肢はない。

そして始まる長男の泣き叫びながらの抗議。

「じなんがブロックこわした!じなんはさわっちゃダメ!あっちいってよ、あっち!!」

少しずつ我慢というものができるようになってきた4歳でも、大事な作品を壊されて怒らずにいられるほど、おとなに近づいたわけではない。

またこれだ…。

今日、長男と次男の争いを止めるのは、これで何回目だろうか…。

泣きながら怒る長男に、泣きながらブロックを奪おうとする次男。

おい、泣きたいのは私だぞ。

なんて思っていても、長男と次男に母の気持ちなど伝わらない。自然とため息がこぼれる。


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午後6時。

もうすぐ夫が帰ってくる。

ただトマトを切って、肉を焼いて、さつまいもをふかしただけの夕飯を、子どもたちの相手をしながら何とか準備した。

とはいえ、仕事から疲れて帰ってきた夫が、食卓につけばすぐに夕飯を食べられるわけではない。

「おかえり、お疲れ様。ごめんね、夕飯、これからテーブルに並べるんだ。」

「ただいま。もろこしもお疲れ様。長男、次男もただいま。今日も可愛いな~。」

笑顔でお迎えをした長男と次男に、ニヤニヤした顔で嬉しそうにしている夫。そして夫は、台所にあった夕飯を手に取り、食卓に並べてくれた。

「ごめんね、手伝ってくれてありがとう。助かるよ。」

「いいよ別に。大変だったでしょ、今日も。長男も次男も元気すぎるから。あーあー、派手にオモチャぶちまけて…。」

「夕飯も切る・焼く・ふかすの超簡単手抜きメニューです…。」

「美味しそうじゃん、ありがとう。健康にも良さそうだし!」

いや正直、健康のこととかあんまり考えて作ってないけど…。


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「いただきます!」

4人で食卓を囲み、手を合わせた後、夕飯を食べる。

「ひどい部屋だよね…このプラレールとトミカのマキビシ…。読まないくせに、何で絵本までまき散らしてくるんだか…。片付けられてなくてごめんね。」

「仕方ないよ。片しても片しても散らかされるでしょ。大変だったね、お疲れ様。」

夫の優しい言葉が、乾いた私の心を癒してくれる。

とりあえず言えるのは、プラレールもトミカも踏むと悶絶するほど痛いから、くれぐれもマキビシには気をつけてねということだ。

「俺も実際に育児して初めて気づいたけど、何だろうね、あの前に進んでない感。お世話してもお世話しても、長男と次男は次から次へとしでかしてくれるしさ。会社は仕事すればお金になるけど、家事と育児で給料はもらえないしさ。でも、家にいる時に自分が育児してると、会社じゃないのに何であんなにやつれてるのか、いつも不思議で仕方ないわ。」

私の気持ちを、夫が全て語ってくれた。この人、心の声でも聞こえるんだろうか。

「進んでない感ばっかりでもさ、育児しないと子どもたちは生きていけないわけで。だから、もろこしは毎日お疲れ様。今日も大変だったね。たくさんありがとう。」


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父親と母親が自分のことを話しているというのに、子どもたちはニコニコと夕飯を食べている。

「見てみなよ、この長男と次男の幸せそうな顔。本当にお母さんが大好きなんだなー。ごはん美味しいよ。健康にもいいしね!」

…だから、健康のこととか考えてないけど。

育児とは、マイナスをゼロにする繰り返しである。

食事の準備から、片付いた部屋、たたまれた洗濯物、沸かすだけの風呂釜。

そして、元気にすごしている子どもたち。

全てが揃ってゼロになり、何かが欠けているとマイナスになる。

そのマイナスをゼロにする労力というのは、なかなか心身ともに疲れるものだ。

幼い子どもたちは、母親にやってもらって当たり前。

思い通りにいかないと、容赦なく私を責めてくる。


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でも、母親だって人間だ。

自分なりに頑張った一日を、誰にも認めてもらえないのは空しくなる。

結果はどうであれ、自分なりに家事と育児をした今日の私が、確かにここに存在するのだから。

うまくいかない一日。だけど、今日の私を夫が認めてくれた。

当たり前のことだけど、「ありがとう」と感謝してくれ、「お疲れ様」と労ってくれた。

単純な私は、それだけで明日も、同じような一日を頑張れるのだ。

寛大な夫よ、未熟な妻からありがとう。

ヤンチャな幼い子どもたちよ、父親の背中を見て育てよ。


(ライター:もろこし)


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※ この記事は2024年10月31日に再公開された記事です。

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