夫と五歳の息子は、二人でよくデートをする。
家の近所のお餅屋さんが特にお気に入りのデートスポットで、行きつけの場所だ。
店内で小型の七輪を使い、好きなだけ餅を焼いて食べることができるというシステムの店。
この店に二人で通うのが夫と息子の楽しみである。
普段からマメで子ども好きな夫は、息子と遊んだり、家でも家事をして私を助けてくれるタイプだ。
その本領が発揮されたのは、私が下の子を妊娠してからだった。
とにかくつわりがひどくて、何もできない私に代わって、「大丈夫。ぼくがやれることはやるから、寝れるときに寝ておき!」と、言って、家事に加えこれまでよりも頻繁に息子を連れ出してくれるようになった。
自分の体のことで精一杯だった私は、当時は意識朦朧で寝続けて、何も感じていなかったが、後から思うと、夫の頑張りには本当に助けられていたなと思う。
つわり中、夫は進んで息子とお出かけ。2人の姿を眺め、感じた幸せ<第四回投稿コンテスト NO.10>
13,568 Viewままこぶたさんのご主人は、普段から進んで家事をし、育児にも積極的。二人目の妊娠・出産で、頼れるご主人の存在を改めて感じ、夫婦の絆も深まったようです。
話を戻して・・・
二人の行きつけのお餅屋さんのことだが、私が安定期に入ってしばらく経った頃、いつものように、「今日も、息子とでかけてくるわ。いつもの場所やで」と、言って、夫と息子はでかけて行った。
その日は体調もかなり良かったので、スーパーに買い物に行ったついでにお餅屋さんでの二人の様子を覗いてから帰ることにした。
「お、いたいた」
ちょうど、通りに面した窓際の席で、夫と息子がちょんと座って餅を焼いているのが遠目からわかった。
バレるとつまらないので、私はこっそり店に近付き、二人の視界に入らない所から、様子をうかがうことにした。
何を話しているかはわからないが、息子は嬉しそうに、餅を焼きながら夫の方をみて、一生懸命喋っている。
「おもち、やけてきたねぇ。もう食べてもいいかな?お父さんどう?」
と、でも聞いているのかなぁと想像し、ほほえましくて自然と笑みがこぼれた。
一方、夫の方に目を移すと、夫は愛おしいものをみつめる目で、嬉しそうに餅を焼く息子の顔をじーっとみていた。
息子のことが可愛くて仕方ないんだろうなと思った。
母である私の知らない、父と子二人だけの世界。
とても穏やかで優しい空気が二人のあいだに漂っていた。
「あぁ、なんか幸せだな」
私はそう思った。
息子は、つわりで体調が悪い私のことがわかる年齢だ。
私を気遣って、「だいじょうぶ?ねときな」と、言って、心配してくれたりするけれど本当は寂しい気持ちがあるのも知っていた。
そんな息子をいつも外に連れ出してくれる夫。
息子が寂しくないように、父親の自分がいるときは、寂しい気持ちにさせないように、息子が楽しめることを精一杯考えてくれていた。
・・・
二人の光景を少し離れてみているだけで、「あぁ、なんだか私、この人と結婚して良かった、この子とそして今いるお腹の子を授かれて良かった」「こんなに優しい眼差しをそそぐ人の子を育てられるなんて、本当に幸せなことだ」と、思ったのだ。
二人目の妊娠だったこともあり、遠方の実家に里帰りはしなかった。
出産後の私の入院中は、夫が息子の幼稚園の送迎や世話を頑張ってくれた。
実家からの手伝いも頼めなかったので、産後の1ヶ月も、「妻ちゃんと息子の栄養は、ぼくが担うから、妻ちゃんは赤ちゃんのことだけに集中してたらいいよ」と、夫は言い、仕事から帰ってからせっせと栄養をつけるための料理を作ってくれた。
もちろん息子の幼稚園の送迎も世話も込みだ。
夫のおかげで、不安だった産後も家族四人でなんとか乗り越えることができた。
そして何より、『夫がここまで頼りになるのか』と、驚きっぱなしだった私は、夫への信頼を確実に厚くし、夫婦の絆も深まったなぁと思う。
信頼を厚くしたとか絆が深まったとは言うものの、結局些細なことで喧嘩したり、イライラしたりすることもあるけれど…子どもにとって、そして私にとって、夫の存在そのものがベストプレーなのであった。
(ライター:ままこぶた)
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