【医師監修】水中出産って本当に安全?費用は?水中出産のメリット、デメリット教えます
17,781 View水中出産は、ママが自由な体制で出産に臨むアクティブバースのひとつ。有名人の出産体験などで水中出産という言葉を目にし、興味を持った人もいるのではないでしょうか。でも、日本ではまだ一般的ではないため、情報が少ないですよね。そこでこの記事では、水中出産とはどういうものか、メリット、デメリットなどを紹介します。《監修:つづきレディスクリニック》
水中出産ってどんな方法?
水中出産は、その名の通りママがプールや浴槽など水の中にいる状態で出産をすること。
安全を確保しながらも医療の介入を最小限にとどめ、ママが主体的に出産できると注目を集める「アクティブバース」「フリースタイル分娩」などと呼ばれる出産方法のひとつです。
水中出産は、おおむね次のような流れで進められることが多いようです。
1. 陣痛開始からある程度出産が進んだところで、温水プールに入ります。
2. そのままプールの中でママのタイミングに合わせながら、水中分娩を進めます。
3. 安全を十分に確保しながら出産し、すぐに赤ちゃんをケアします。
水中出産ではママが自分で赤ちゃんを取り上げることもあるのだとか。
母子ともに安全であれば、ママは生まれたばかりの赤ちゃんをプールの中から抱くこともできます。
タイミングを見計らってママはプールから出て産後の処置をしてもらいます。
処置が終わったらベッドや布団で休みます。
水の中で出産するか、分娩台の上で出産するかの違いで、一般的な出産方法と流れはそれほど変わりません。
また、水中出産といっても水中分娩は行わず、陣痛開始から子宮口全開までを水中で過ごし、出産は水から出て分娩台で行う場合もあります。
一口に水中出産といっても、産院によって具体的な流れは異なるようです。
有名人が水中出産経験を公表するなど、注目を集める出産方法ではありますが、日本ではまだする人は少なく、水中出産ができる産院も限られています。
参考:日本赤十字医療センター「自分らしく満足する出産のために」
参考:NPO法人市民科学研究室「ドイツの水中出産」
水中出産のメリット
1800年代初めにフランスで始まったといわれる水中出産。
ママにも赤ちゃんにも、さまざまなメリットがあるといわれています。
どのようなメリットがあるのか、詳しく見てみましょう。
ママのメリット
水中出産をするママには、次のようなメリットがあるといわれています。
・体温に近い水温の中でリラックスした状態で分娩できる
・陣痛の痛みを緩和する
・通常の分娩よりも会陰切開になる確率が低い
・陣痛開始から出産までの時間が短い
・家族が立ち合いやすい
水中出産における水の温度は人の体温に近い37度ほど。適度な温かさに筋肉が緩んでリラックスでき、陣痛の痛みも緩和できるそう。
水の浮力もあって体勢を変えやすく、四つん這いになったりしゃがんだり、痛みの度合いや赤ちゃんの位置などにあわせて楽な姿勢で出産にのぞめるともいわれます。
また、水によって皮膚が柔らかくなるためなのか、会陰切開をする人も水中出産の方が少ないのだとか。
出産後すぐに赤ちゃんのお世話をスタートするママにとって、「鼻からスイカが出るよう」といわれる痛みを緩和できたり、会陰切開をしなくて済んだりするのはとても魅力的に感じるのではないでしょうか。
参考:久産婦人科「分娩スタイル」
参考:イシコメ「水中分娩のメリット・デメリットについて知りたい!産婦人科医120名に聞きました」
赤ちゃんのメリット
水中出産をすることによるメリットは、赤ちゃん側にもあるといわれています。
・水中でママがリラックスした状態の出産になるため、赤ちゃんの負担が少ない
・羊水に似た環境を生み出すことで赤ちゃんのストレスが少なくなる
などがあげられますが、まだ研究が進んでおらず「水中出産による赤ちゃんのメリットはよくわからない」という医師も少なくありません。
水中出産のデメリット
たくさんのメリットがあるといわれる水中出産ですが、デメリットもあるようです。
・水の中にいるため、会陰切開や吸引分娩などに即座に対応できない
・心音確認などのモニターができない
・ママも赤ちゃんも感染リスクが高まる
・ママの出血量が自然分娩よりも増える可能性がある
・水中で出血しても量がわからない
・浮力によってうまくいきめない場合がある
・水の中にいるためママが疲れやすい
・赤ちゃんが水を飲んでしまう可能性がある
・赤ちゃんにへその緒が巻き付く可能性がある
出産の状況によっては会陰切開や吸引分娩など医師の処置が必要になる可能性もあります。
そんなとき、水中出産では体制を整えるのに多少時間を要することになります。
また、生まれた瞬間の赤ちゃんはへその緒から酸素を受け取っているため、生まれてすぐに水から取りだせば窒息することはありませんが、気道確保が遅れて赤ちゃんが水を飲んでしまう、などのトラブルが生じる可能性もゼロではありません。
メリット、デメリットを考慮したうえで水中出産するかどうかを選択してください。
参考:現代ビジネス「『コウノドリ』産科医が教える「正しい出産場所の選び方」~”イケてるお産”にダマされてはいけません」
水中出産が可能な条件
水中出産の進んでいる欧米では、どんな人なら水中出産ができるのかを定めたガイドラインがあります。
しかし、日本ではまだ水中出産が普及していないため、一定のガイドラインは設けられていません。
すべてのママが希望すれば水中出産に臨めるかというとそうでもありません。
ママと赤ちゃんの安全を優先するため、
・妊娠の経過が良好
・早産ではない
・胎児の心拍が正常
・胎児の推定体重が2,500g以上ある(低出生体重児にあたらない)
・逆子ではない
・多胎妊娠ではない
・高齢出産ではない
・妊娠高血圧症候群や持病などがない
など、産院によって水中出産ができる条件が定められています。
水中出産を希望する人は、希望の産院で条件を確認してみましょう。
参考:NPO法人市民科学研究室「ドイツの水中出産」
水中出産の費用はどのぐらい?自然分娩と比較
通常の出産では約50万円の費用がかかるといわれています。
水中出産の場合は、この費用に施設などの利用料として約3万円~5万円の追加料金が発生するようです。
ただし、助産院か総合病院か、入院は個室か大部屋か、土日祝日か平日かなどによって出産にかかる費用は異なります。
また、水中出産の過程で何らかの処置が必要になった場合は、その分の追加料金も発生します。
とはいえ、「出産育児一時金」として子ども一人あたり42万円(産科医療補償制度対象外の出産では39万円)を受け取ることができるため、実際に負担する金額はそこまで大きくならないでしょう。
参考:育良クリニック「分娩予約・料金」
参考:日本赤十字医療センター「出産費用について」
水中出産ができる産院の選び方
水中出産は、日本ではまだ馴染みのない出産方法です。
そのため、水中出産ができる場所は少なく、ホームページなどに詳細を掲載している産院もほぼありません。
水中出産ができる産院を探す場合は、気になる産院、陣痛が来た際に足を運びやすい立地にある産院などに電話で問い合わせをしてみましょう。
水中出産に対応している産院の多くは説明会を開催していますので、希望の産院が見つかったら説明会に参加することをおすすめします。
水中出産に対する産院の考え方やスタッフの雰囲気など、実際に足を運んで、次のようなポイントをチェックしてみてください。
・水中出産の流れ(水中分娩をするのか、子宮口が開いたら分娩台に上がるのかなど)
・水中出産にかかる費用
・水中出産の実績や過去のトラブル事例
・トラブル時の対処法(産科医との連携、通常分娩との切り替え判断基準など)
・使用する浴槽や設備
・浴槽の清掃状況(消毒の仕方や頻度、使用していないときは乾燥させているかなど)
国が定めたガイドラインはなく、水中出産についての考え方は産院によるところが大きいです。
どんな産院なのか、助産師や看護師はどんな人なのか、メリットばかりでなくリスクも詳しく説明してくれるかなど、実際に自分の目で見て確認しましょう。
水中出産の流れと注意点
水中出産に興味を持ったら、産院を調べて実際に足を運んでみましょう。
説明会に参加したり助産師さんの話を聞いたりなどして水中出産のメリット、デメリットを整理し、じっくり検討してみてください。
安心して出産に臨めるよう、不安や質問がある場合は事前によく確認することをおすすめします。
感染症のリスクが高まるなど、水中出産にはデメリットもあります。
水中出産についてしっかり調べ、家族とよく話し合ったうえで水中出産をするかどうか、じっくり検討しましょう。
【監修】つづきレディスクリニック
・理事長 吉岡範人
2005年、聖マリアンナ医科大学大学院を卒業後、同大学初期臨床研修センター産婦人科に入局。
16年間の医局勤務中、約2年間にわたりカナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学へ留学しがんの研究に従事。
2019年に事業を引き継ぐ形でつづきレディスクリニックの院長に就任。
・医師 鈴木季美枝
2006年に聖マリアンナ医科大学を卒業後、同大学にて周産期専門医の資格を取得し、産科医療を中心に従事。
現在はつづきレディスクリニックにて非常勤医師として勤務。
つづきレディスクリニック(http://www.tsuzuki-ladys.com/)
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