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公開 2020年06月06日  

新米ママにとって、お気楽な夫は敵に見えた。味方に変わった日のこと<第四回投稿コンテストNO.61>

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産後、想定通りにいかない育児に戸惑っていた、さくちゃんさん。普段から自由奔放な夫の言葉にも、イライラしてしまう日が続いていたそうです。



現在は、小学校中学年から幼稚園年少児まで、3人の子どもを育てる私。

実際のところはそこまで余裕がないものの、ママ友から「ベテランママ」との称号をもらい、自分の時間ももてるようになりました。


そんな私にももちろん新米ママの時代があったのですが、もともと思考回路に柔軟性がない私は「こうしなきゃ。こうでなきゃ」と毎日が、いや、1分1秒が精一杯でした。

自身の家庭環境に問題があり、里帰りを選ぶことはなく、そうかといって「うちに来たら?」と声をかけてくれた義実家に頼ることもなく、早朝から夜遅くまで働く夫と住むマンションで1人「母とはこういうもの」「妻とはこういうもの」という意識のもとに、家事をこなしながら、長女を育てていました。


ママが新米なら赤ちゃんも新米。

適温で外界からの刺激から守られ、栄養も自動的に共有される胎内から外に出てきたばかりでは、おっぱいの吸い方も心地よい寝方もわからなくて当然です。

「3時間睡眠」「3時間ごと授乳」など育児書どおりに生活が送れるはずもなく、すんなり5時間寝たと思ったら夜中に3時間寝ないとか、おっぱいをくわえたら1時間ほど離さないとかといったイレギュラーなことがずっと起こります。

いえ、本来はそれがふつうなのですが、ママになるまで計画どおりに、イメージしたように人生を進めてきた私は、別人格である我が子までをも、自分の計画どおりになると思い込み、自分で自分の首を絞めていたのです。


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一方、どちらかといえば自由奔放で柔軟な考えをもつ夫は、完全母乳にとらわれている私に「足りなきゃ足せばいいじゃない?」「ミルクなら俺でもできるし」と一言。

午後7時台に長女を必死に寝かしつけようと寝室を暗くして、長時間抱っこでウロウロする私に「眠たくないだけでしょ」とまた一言。

初めての育児ですべてのことに過敏になっていた私は、そんな夫の助言さえも敵からのヤジだと思ってしまうほど、余裕のない状態でした。
 

しかし長女が生後2ヶ月になった頃、敵だと思っていた夫が心強い味方に変わる日がやってきたのです。

まだまだ長女の睡眠時間は安定せず、夜中に何時間も起きたままの日があるなど、疲労がたまる日々を過ごしていました。

睡眠不足も当然つらかったのですが、私にとって何よりストレスとなったのは、思いどおりにいかないこと、そしてそのつらさを誰にもわかってもらえないことでした。

「どうして寝てくれないの?」

「こんなにがんばっているのにどうして?」

そんな思いばかりで、きっと娘を抱く顔もこわばり、肩にも力が入っていたことでしょう。

夜中に目を覚まして寝てくれない長女を、夫も眠る狭い寝室でただひたすら抱っこをして歩き、半ば強引に授乳を繰り返す……。

どれぐらい時間が経ったでしょうか。

張り詰めていた糸がプツンと切れ、「いいかげんに寝てよ!」と言いながら、長女を抱く私の手は拳となり、授乳の際に座っていた布団を殴ってしまったのです。


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そのとき、それまでは「母乳だからどうしようもない」と夜泣きの対応をしてこなかった夫が起きました。

「俺が代わるから寝たら?」と言って長女を抱き、そのまま寝室から出ていったあと、夫は何やら優しく話しかけながら、時には歌いながら、寝かしつけをしているようで、長女もとくにグズつくわけではありません。

そんな状態になってもまだ「あの子は私がいないと眠れないのでは?」「いやいや、寝室から出たら寝ないでしょ?」と思い込み、夫の対応を信頼しきれなかったのですが、もう心身ともに限界を感じていたので、そのまま長女を任せて布団をかぶりました。

数時間後にふと目を覚ますと、長女は隣でスヤスヤと寝ていました。そして夫はいつものように出勤していきました。

夫が交代してくれて自分が眠れたことよりも、仕事が大変なのにも関わらず、わからないなりに助けてくれたこと、それによって「どうしてもつらいときには頼れる相手がいる、私は孤独ではない」と思えたことが、育児パートナーである夫のベストプレーの功績です。


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それからも山あり谷ありの毎日の中で、時々夫が手を差し伸べてくれ、長女の生活リズムが整って一安心できた頃に、長男が生まれ、また次女が生まれました。

育児への悩みやストレスは、子どもたちがある程度大きくなった今でも、そしてこれからもエンドレスです。

流行りのワンオペ育児を続行中の私は、3人を育てるなかで徐々に適当になり、良くも悪くも諦めることを覚え、育児を楽しむ余裕も出てきました。

一方、夫の自由奔放さは変わらず、それが育児チームの危機を招くこともありますが、私が本当にピンチの時には、代打でホームランを打ってくれる、そんな夫はこれからも、ベンチから私の激闘を見守ってくれることでしょう。

そして何より、私が怒り出す前に空気を読み、私と同じ口調で弟と妹にゲキを飛ばしてくれる長女監督、少々チームの雰囲気を乱しながらも誰も想定しないプレーで笑いをもたらしてくれる長男選手、とびきりの笑顔でメンバーにねぎらいと愛の言葉をかけてくれる次女マネージャーがそろっている我が育児チームは、これからさらに強く成長することでしょう。



(ライター:さくちゃん)


※ この記事は2024年11月18日に再公開された記事です。

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