子どもがスポーツをしているパパ、ママなら聞いたことがあるかもしれない「身代わりアスリート」という言葉。
みなさん、ご存知でしょうか?
私は子どもたちがサッカーをするまで聞いたことがありませんでした。
「身代わりアスリート」とは、親が果たせなかった夢を、まるで身代わりのように子どもに託してしまうこと。
過度な期待をすることで、子どもにプレッシャーを与えてしまうことをいいます。
最初は子どもが楽しんでスポーツをしている姿を微笑ましく応援しているパパ、ママが多いです。
しかし高学年になるにつれて試合が多くなったり、チーム内での競争が激しくなっていくうちに
「上手になってほしい」
「試合に勝ってほしい」
「試合で活躍してほしい」
と、親の思いが先行してしまうことを、私も少なからず感じるときがあります。
もちろん親の立場からすると、子どもに活躍してほしいと思うのは当然かもしれません。
しかし親の思いが度を過ぎてしまうと、子どもを追い詰めてしまうことも。
親のために頑張るのではなく、”子ども自身がスポーツを楽しむこと”が大切だと改めて感じたエピソードをご紹介します。
子どもファーストを忘れないで!親の意識を変えてくれた、コーチからの手紙
14,960 View我が家の子どもたちは、サッカー少年。小学校のときに所属していたチームは、全国大会にも出場する強豪チームでした。ある日、コーチから保護者に対して一枚のお便りが配られました。そのお知らせには「身代わりアスリート」の文字が・・・。
「身代わりアスリート」って?
少しずつ感じ始めた違和感
子ども達が所属していたチームには、サッカー経験があるお父さんがたくさんいたため、保護者同士で子どものプレーについて話すこともありました。
子ども達も親も仲が良く、チーム全体がとてもいい雰囲気だったのですが、ある日を境にちょっと様子が変わってきたのです。
その日は、同じ地元の強豪チームとのトレーニングマッチでした。
その試合にA君は出場していました。
いつもニコニコ活発なA君がその日、キョロキョロとして落ち着きがありませんでした。
「どうしたのかな」と他の保護者たちもいつもと違う空気を感じていました。
試合中のA君の視線はベンチにいる監督ではなく、常にA君のお父さんに向けられていました。
A君のお父さんは、大きな声で応援をしています。
しかし、その応援はいつもと違っていました。
「もっとサイドからあがれ」などと指示を出しており、ときには暗号のようなジェスチャーまでしているのです。
この姿は、同じチームの保護者はもちろん、他のチームの選手や保護者の注目の的となっていました。
子どものために”一生懸命”が、いつしか……
A君のお父さんは、とっても明るく、よく子どものお世話をしてくれる人です。
サッカー経験があり、昔はプロを目指していたのですが、ケガのため夢をあきめることになったそうです。
きっとA君のお父さんは、A君の姿とかつての自分の姿が重なっていたのでしょう。
A君はいつもお父さんの姿を目で追うようになり、笑顔は少しずつ減っていきました。
しかし、お父さんはA君の将来のために一生懸命で、指導や声援はますます熱を帯びていくばかり。
親子で同じ夢を見ているはずが、いつの日からかA君はお父さんのためにサッカーをしているようでした。
試合に勝つ日もあれば、負ける日もあります。
徐々にA君のお父さんは、コーチにも意見をするようになりました。
思ったことを言うのは、悪いことではないと思います。
しかし、コーチが不快に思うようなことがあれば、それは少し問題があるかもしれません。
試合中もコーチ以上に子どもに声をかけ、A君以外の選手にも指示を出すようになりました。
最終的にはチームの運営にも意見するようになり、次第にコーチと対立するようになっていったのです。
そしてある日
「スタメンの親は偉いんだ」
A君のお父さんは、ついにこの言葉をコーチの前で発してしまったのです。
コーチからの手紙
その数ヵ後ヶ月チームの中心選手として活躍していたA君は、サッカーをやめたいと言い出しました。
もちろん同じチームの私たちも驚きましたが、それ以上に驚いたのはA君のお父さんだったと思います。
それから1ヶ月間、A君は練習を休むことになりました。
その間にコーチから保護者に向けて1枚のお便りが配られました。
「どうか、子どもたちにサッカーを楽しませてあげてください。
親御さんの応援に子どもたちは勇気をもらっているはずです。
しかし、ときとしてその応援が子どもたちへのプレッシャーとなってしまうこともあります。
どうか、ご理解ください。
サッカーをしているのは子どもたちです。
試合に勝ったときも、負けたときもどうかほめてあげてください。
これが全国をめざす原動力になります。」
子ども達が、心から楽しめる環境を!
このお便りをきっかけに、私も考えさせられることがありました。
「もっとシュート打てたんじゃないの?」
私の口出しに息子はいつも
「お母さん、できないくせに。うるさい!」
そうなんです。
自分ではできないのに、言っていたのです。
活躍してほしい一心で言っていたその言葉も、息子にとっては責められているように感じていたのかもしれません。
私自身の言動を、反省しました。
その後A君は練習に復活し、元気な笑顔を見せてくれるようになりました。
A君のお父さんは、チーム全員の水分補給を手伝うなど裏方のお仕事に徹していました。
これもご縁なのか、高校生になった息子とA君は同じサッカーチームに所属し、毎日練習に励んでいます!
「サッカーを通して、親子で成長ができたね」と、A君のお父さんはよく話しています。
今、心からサッカー楽しんでいる様子のA君の姿。
また、自身の行動を反省し、子どもの達のサポートに徹するA君のお父さんの姿。
その姿から私も多くのことを学ばせてもらっています。
A君親子との出会いや、コーチの言葉は親としての私を成長させてくれています。
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