今からさかのぼること数年前。
現在6歳、今日も見えない敵と戦いまくる息子も、当時はまだ2歳。
前日、サンタクロースからはオモチャの図鑑とタッチペンが届いていた。
本を触ると、何か教えてくれる優れモノもので、「ライオン、ガオー」と何度も言わせている。
平和だ。
私はいつ切り出そうかと考えていた。
息子、機嫌良し。
夫、機嫌良し(いつも通り)。
数日後にせまる、私にとっては今年最初で最後の重要案件について、真っ向から話し合うべき時が来ている。
話が思わず白熱し、息子を不安にさせてはいけないので、話し合いは別室がベターだ。
録画しておいた、息子の大好きなアニメ番組をポチり。
「あ!アパ、みう〜」
よし。
「夫よ、ちょっと折り入って相談が」
「なに〜?」
別室に招き入れ、ドアを閉める。
「年末年始のお義母さんお泊まり作戦会議を始めます!!」
「……なるほど、はい!」
義母が4連泊!ザワつく心を一転させた、息子の偉大なる無邪気
240,035 View引っ越し後の新居のお披露目も兼ねて、年末年始、義母が泊まりに来ることに。嫁の立場としては、なかなかの一大イベントだったけれど……。
ある年のクリスマス翌日
義母と過ごす年末年始
義実家にお邪魔したことはあったけれど、こちらに来ていただくのは初めて。
結婚後、初めて迎える年末年始に夫と二人で帰省した時は、たしか3泊だった。
長かったような、あっという間だったような3泊4日を過ごした。
私もまだ初々しい新妻であったし、右も左もわからず、文字通り右往左往していたことだろう……。
会話もイマイチ弾まず、静かに気まずい空気が流れたような。
そして3年後の今年。
飛行機の距離の義実家へ親子3人で帰省するより、義母1人に来てもらった方が平和且つ経済的、と考えた我ら。
そのXデーが、3日後に迫っているのだ。(しかも4泊!)
あれから時は経ち、家族も増え、私も当時より少しは良き妻に成長しているだろうか……!?
サッとお茶を出せたり、気の利いた話題を振ったり、できるようになっているだろうか……!
正直、あまり自信はない!!!
それだけは、自信がある!(キリッ)
「夫君、年末年始はどのように過ごすおつもりでしょうか?」
「はい、精一杯サポートします!家事も何でもします!」
「ほぅ。一切家事をしない夫さんが何でも、ですと?」
「え、あ、今日から修行するということで……」
鳴呼、修行期間の短さよ。
3日後やぞ。
夫は家事が苦手だ
苦手というか、そこまで!?というレベル。
独身時代は3食外食やコンビニで済ませ、コップを洗いたくないから飲み物は全部買う、という徹底ぶり。
私がつわりの時には、リンゴを所望したら、家を出て20分後、カットパインを手にした夫が帰ってきた。
「えっと…何でパインを…?」
「えっと、皮剥いたリンゴは残念ながら売ってなくて。
でもパイナップルは売ってたから。
半分は合ってるかな〜と思って!」
〈夫の脳内〉
りんご (apple)
パイナップル (pineapple) …いける!
包丁を使いたくないが為に出た、突然のトンチ。
一休さんが我が家におります。
でも一休さんにも良いところはある!
私の家事に一切口出ししないところだ。
息子の機嫌が悪くて掃除が出来ず、部屋がぐちゃぐちゃでも、夕飯が粗末な物しか作れない日でもクレームがきたことはない。
折に触れて「いつもありがとう!」と言ってくれる。
そんなわけで普段は特に争うことなく、平和に暮らしている我が家。
しかし、義母が来るとなれば話が別ではないか!
家事がドドドッと増える。
3食の用意、寝具の用意、日中お茶出すタイミングはいつ?
夫と義母の間には、基本的に会話がない。
義母が色々と夫に話しかけてるのに、返答はだいたい、「うん」か「いや、違う」か「分からん」の3パターン。
スマホの方が饒舌だぞ。
もっと優しく話してあげておくれよ。
それで私と義母が話すしかない流れになる。
私、そんなに引き出しないから……!
4泊もの間、丸投げされても困るのであります。
「そんなわけで家事はさておき、私とお義母さんをあまり放置しないでほしいのですが……」
「よし、分かった!」
「あと外出予定を何でも良いから作りましょう。」
「了解。でも年末年始どこも混むからなぁ。
人混みに慣れてないうちの親にはちょっとキツいかも。」
「うーん、それはそうだね。
でも外出しないと間が持たなくない?
あと息子も……あれ?そういえば息子こっち来ないな……」
私たちの会議は20分をオーバーしていた
後追いの激しい息子が私の姿が見えないのに静かにしている。
この世の親達が会得している「こども妙に静かにしてる時、良からぬことしてるんじゃ?センサー」が発動した。
サササと移動し、テレビの前の息子に声をかける。
あれ、おにいさん、何かに夢中でいらっしゃる……?
振り向く息子。
ワーオ!!
お、遅れてきたサンタクロースがそこにいたのだ。
息子はリビングに常備してある保湿クリーム缶(特大)に拳を突っ込んで、服の上から全身を保湿していた。
そして私がいつも「可愛いほっぺを守るよ~」と言いながら塗っていたせいか、ご丁寧にちょうど顔の下半分に大量のクリームを塗りたくっていたのだ。
12月26日に白髭のサンタクロース。
やるな、おぬし。
「夫~、リビングにサンタいるよ。」
「え!?サンタ?」
夫は爆笑し、得意げに笑う息子の写真を何枚も撮った。
こどもって、かわいい。
「あ、そうだよ。今年は息子がいるじゃないか。きっと大丈夫だよ!」
―そうか。
結婚直後の実家帰省と明らかに違うこと、それは息子(孫)がいてくれること。
心強いメンバーが追加されていたのだ。
―さて、結果は
1月2日の午後、ミッションを終えた私たちはリビングで天を仰いだ。
無事終わったのだ。
息子は想像以上の働きをしてくれ、自分のおもちゃを一生懸命紹介したり、夫との仲良し振りを義母に披露して場を和ませてくれた。
これは以前にはなかった時間で、本当に助かった。
私のヒーロー、MVP賞を差し上げたい。
一方で義母と夫間の会話は依然として盛り上がっていなかった。
でも義母と夫は、私と夫よりも長い時間を一緒に過ごしてきたのだから、それで二人が心地良いならと見守ることにした。
そして現在。
6歳になった息子と、新メンバーの2歳娘は強力な戦力で、義母への電話の際にも大活躍してくれる。
ちなみに夫にも、あの時なぜあんなに協力してくれたのか、聞いてみた。
「まぁ自分だったらと思えば、確かにしんどいこともあるしね。
せっかくの年末年始、息子も一緒に平和に過ごしたいもんね」
ありがたい。
この件では素敵な解決法を導き出してくれた一休さん。
夫婦二人で出来なかったことも、子どもを加えたパワーアップした家族なら出来ることがあるなと実感した出来事だった。
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