人気料理研究家・コウケンテツさんのエッセイには、「料理をつくるのがしんどい」と感じる方の心を軽くしてくれる言葉がたくさん。
今回は書籍から一部抜粋して、コウケンテツさんが考える、「おうちごはんを作りたくなくなってしまったワケ」をご紹介します。
楽しみだった料理。ある日を境に「しんどい」に変わってしまった
8,259 View『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』(コウケンテツ著/ぴあ株式会社)より、その一部をご紹介します。
なぜごはん作りはしんどいのか
「毎日のごはん作りが大変すぎる」
「しんどい」
そんな言葉を聞くことが増えました。
講演会に来てくれるお客様、子どもを通じて交流のあるママたち、また仕事で出会う女性たちから。
また、僕のインスタグラムへの投稿など、SNSの場でも。
もしかしたら、これまでは、そう思っていてもあまり口に出せなかったのかもしれないのですが……。
その要因として真っ先に僕が思うのは、日本の家庭料理に求められるレベルがあまりにも高すぎるのではないか、ということです。
僕は日本の家庭料理を「ワールドワイドハイスペック家庭料理」と呼んでいます。
これまでに世界中の様々な国のご家庭 を訪ねてきましたが、日本の家庭料理がいかにレベルが高いか、いかにバラエティが豊かかということを、身に染みて感じました。
次に思うのは「料理に取り組む体制の問題」。
育児だけではなく、料理もワンオペという方が多い。
きちんとごはんを作りたいけれど、気持ちにも時間にも余裕がなく、 思い通りにいかない。
そんなジレンマに苦しめられているのではないでしょうか。
そしてやっかいなのが、「見えざるプレッシャー」です。
家族のために栄養バランスを考えて作らなければならない、手作りしなければならない、お惣菜やレトルト食品に頼ることには罪悪感を覚える。
そのため「もっとがんばらなくては……」と自分自身を追い込んでしまう。
そして最終的には「私が我慢してごはんを作ればいいのよね……」とあきらめてしまう。
そんな結論に至ってしまうのではないでしょうか。
そして実は僕が最も大きな要因だと思っているのは、「食べるだけの人の問題」。
料理をする人ががんばって作ごはんを作っても、「ただ食べるだけ」の家族は感謝の気持ちを持たない。
おまけに「食べたくない」「味がいまいち」などと言いたい放題言われることもあるといいます。
これではモチベーションを保てないのは当然のことですよね。
どうでしょう。
当てはまることはありませんか?
こんなにたくさんの「しんどさ」を乗り越えつつ、皆さんは毎日ごはんを作っているんです。
「やる気がでない」、「しんどい」のはある意味当たり前なのかもしれません。
料理研究家だって、 毎日のごはん作りはしんどいんです
僕にとって、そもそも料理することは「楽しみ」でした。
自分の好きな料理が食べられるので日々のごはん作りはもちろん、料理研究家として仕事を始めてからは、いろいろなレシピを生み出すことにやりがいを感じていまし た。
毎日がとても忙しく、しかしとても充実していました。
ただそれは結婚して、子どもが生まれる前、まだ、妻と二人三脚で仕事をしていたころの記憶です。
ところが……。
子どもが1人、2人、3人と生まれると、なんだか料理作りがしんどい……考えるのが面倒だ、今日は作りたくない……。
そんな日が増えていったのです。
自分が食べたいものは二の次にして子どもの好き嫌いや栄養バランスを考えなければいけない。
家事や育児の時間が増えて、自分の時間はもちろん、楽しく料理をする余裕さえうばわれてしまう……。
毎日家庭の中心でごはんを作っている人なら、(おそらく主にママだと思いますが)共感してくれる人も多いのではないでしょうか?
長男や長女はよくお友達に 「お父さんが料理研究家で毎日いろいろなおいしい料理が食べられていいな~」と言われるそうです。
僕も、「お子さんは幸せですね」とよく言われます。
でも実際、日々のごはんはびっくりするくらい質素です。
我が家の定番料理は鶏の塩焼きやしょうゆ焼き、そこに簡単な味噌汁とナムルなど。
子どもが帰って来てから寝るまでは何しろ時間がないので、短時間でパパッとできる簡単料理が基本です。
そして子どもが喜ぶシンプルな味付け。
切った素材を並べるだけなんて日も多々あります。
もちろん撮影で作ったアイデアにあふれたバラエティ豊かな料理(?)が余って、食卓にのりきらないほど豪華な夕食になる日もあります。
でも食に冒険をしない我が子たちは、そんな目新しい料理には、まっっっったく! といっていいほど手をつけないのです。
実際、毎日のごはんは「質素ごはん」で充分なんですよね。
でも、その「質素ごはん」でさえ、誰かが作らなければいけないし、家族のためを思うと悩みのタネになってしまうのです。
毎日ごはんを作るのは終わりなき戦いのようなものです。
作っても、作っても、作らないといけないんですから。
「料理が好きで興味があったのに、ある日を境に嫌になる。それはあなたのせいではない」
コウケンテツさんがつづるエッセイは「手作りの料理」に追い詰められてしまいそうなパパやママの心をふっと軽くしてくれます。
次回は、おうちごはんの「しなければならない」を手放すヒントについて、コノビーでご紹介します!
(編集:コノビー編集部 大塚)
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