子育てを、かれこれ8年やっているんだけど、適切な衣類を着せるのがいまだ難しい。
夏はまだいいとして、風が冷たくなるころから春を迎えるまで、ここ数年混乱している。
我が家には、8歳の長女を筆頭に3人の子どもがいるのだけど、特に長女と真ん中っこ長男の衣類が難しい。
例えば長女。
いよいよ8歳だし。おしゃれもしたいだろうという、親の思惑とは裏腹に、彼女はいまだに肌触りのよさを重要視する。
寒くなると、長袖や長ズボンやレギンスを着用することが増えるので、夏に比べて布が肌に触れる面積が多い。
そうすると、肌触りへのこだわりが加速するらしい。なにそれ面倒。
布が固いとか、たった5パーセントしか入っていない化繊に「ちくちくする」と、小言を言ったりするので困ってしまう。
また、着心地の良さもかなり重要らしく、レギンスにしたってあまりぴったりと密着しすぎるものは嫌らしい。
ふくらはぎを指して「ここが苦しい」と言う。もちろん、タイツなんて論外。
余談だけれど、長女は食べ物に関してはとてもとても寛容で、だいたいのものに「おいしい」と太鼓判を押してくれる。
酸っぱいとか苦いとか、細かい味のディティールに対しても「まぁ、おいしい」とひっくるめてくれるおおらかな性格。
なのに、こと衣類になるとそうはいかないらしく、そんなところまで気にするのかと思う部分にまで、言及するのだった。
動きにくい、刺繍の裏側がざらざらしてちょっと……、お腹がすかすかする、ちくちくする、縫い目がかたい、なんか気持ち悪い云々。
彼女の五感でもっとも鋭敏なのは、おそらく触覚なんだろう。
なんだけど、服を着ないわけにはいかないんだよ、お願いだから穏便かつ寛容な心で、ひとつ着てもらえないかしら。
長女の審査を潜り抜けることができなかった、屍冬服が、まだ冬が始まる前だというのに、もうすでにたくさんある。
思えば、長女は赤ちゃんの頃から服を着せるのに、ずいぶんと苦労したのだ。
しゃべる前は、服を着せようとすると泣いていたし、喋るようになれば「いやだ」と言って、服を着なかった。
いま8歳の長女を見ながら、「これが伏線回収というやつなのかな」と、思うなど。
真ん中っこ長男に、話を移そう。
彼の衣類問題は、長女に比べるといくらか単純ではある。
どこの世界線にも太古の昔から、クラスに必ず一人はいたであろうあのタイプが、長男6歳。
そう、一年中、半袖半ズボン男子、である。
とにかく長袖を着るのが嫌らしく、断固として拒否をする。
なにがそんなに嫌なのか、こちらとしては心が休まらないので、暖かいものを着ていただきたいのだけれど、どうにも叶わない。
園ではみんな、半袖半ズボンの体操服の下に、長袖のTシャツやレギンスを着用しているのだけど、彼はつんつるてんの体操服から素肌を突き出している。
しかも、あろうことか、肌着すら着てくれない。
お腹が……お腹が冷えてしまうよ……と、胸をざわつかせているのは私だけで、彼はそのスタイルのまま、夕方まで楽しく過ごしている。
ちょっとよく分からないのだけれど、肌着を着て服を着ると、「気持ちが悪い」らしい。
肌着って言うのは、お洋服の下に着るものなんだよ、衣類を重ねることに何ら不自然はないんだよと、何度だって言ったけれど聞きやしない。
先日も、休日にお友達と遊んだのだけれど、お友達がくすんだブルーの薄手ニットにジーンズという季節感漂う装いだった隣に、素肌の上に蛍光イエローの半袖トップス(しかもスポーツ用。通気性がとてもいい)、に半ズボンといういでだちの長男がいた。
盛夏の装いだった。その日に撮った写真を見返すと、時空のバグが起きているのかと錯覚する。
もちろん、その日も「上か下だけでいいから、長いやつを着て」と何度も説得したんだけれど、聞かなかった。
誰に似たのか、みんな頑固だ。
長男は、赤ちゃんのときから3歳くらいまで、衣類を嫌がらなかったので、長女を思うとほんとうに楽だと思ったものだったけれど、6歳になった今、なんかあんまり君ら変わんないな?と思う。
なにこれ遺伝?だれの??
因みに靴下に関してもやかましく、せめてハイソックスを履いてくれたら心が休まるのに、と差し出しても履いてくれない。
つま先の縫い目の具合であるとか、ふくらはぎの感触であるとか、何かしらが気に入らないらしく、拒否されている。
去年の冬は、私もかなりやきもきしたのだけれど、その年もと言うべきだろうか、例年通り風邪ひとつ引かないまま、彼は春を迎えたのだった。
そんな去年の冬を、心のお守りとして、今年は諦め半分、広い心半分で彼の選択を見守ろうと思う。強い心が必要。
最後に、末っ子3歳だけれど、彼女に関しては今のところちょろい。
かわいい絵柄がついていたり、裾がひらんとしていたらそれでオッケーだ。
お着替えが済んだら「か~わいいでしょ~!みて~!」と、くるんと回ってくれさえする。
長袖だろうと、レギンスだろうと、かわいければ着てくれるんだから、この際おかしなコーディネートになっていても、ちっとも構わない。
暖かい衣類を身に着けている、という点をみれば、じゅうぶんだもの。
ただ、上ふたりの事例があるものだから、こんな穏やかな冬も、今年で最後かもしれないことも、もちろん覚悟している。
来年の冬には、どの子もこの子も、衣服に消極的なことを嘆いているのかもしれない。
因みにだけれど、寝間着に関しては、もうあきらめている。
お布団の力を過信することにして、もう何も言うまいという姿勢。
つまり、末っ子以外のふたりは、たいてい下着以外のまともな衣類を、着ていない。
エアコンもついていなければ、どうかしたら窓を開けても「暑い」って言うんだから、仕方ない。
まかり間違って、パジャマを着てくれた日があったとして、寝ぼけて脱いでしまうんだもの。
もうお手上げ。
上下ともにまともな衣類を着ているお子さんを見るたび、どうやってその気になっているんだろう、と延々思う冬の入り口。