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公開 2020年11月27日  

夫のゆるがない信念がもたらした、正しい反抗期<第5回投稿コンテスト NO.5>

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「愛情を以て接す」が信念の、ママンレーヌさんのご主人。娘が生まれてから、一度も変わらないその姿勢とは。



待望の第一子は女の子だった。

主人は

「女の子は無条件に可愛がって育てる。愛情を存分に受けた子は、愛される子になるのだ!」

と、誰かから聞きかじった中途半端な理論を、産まれる前から熱く語っていた。


うちの主人は、自分の主義を語るのが好きで、めんどくさくもあるのだが、押し付けることはないので、まぁ、しようがないと広い心で黙認していた。

私自身の育児信念としては、産前は

「甘やかさず甘えさせる」

と、第一子ならではの、意識高い系の目標をかかげていた。

だが、産後はあっさりと、「元気でいればバンバンザイ」と、ざっくり系に転換した。


結局、育児に必要なのは、信念より、辛抱。

小さい子は掟やぶりの無法者だ。

まだまだパターン化されてない行動は、その都度、こつこつと注意していくしかない。

と、いうことに気付いたら

「どうして、私の育児は理想通りにいかないのかしら?」

と、しょげることもなくなった。

親子がお互い楽になるなら、信念は、とりあえず、棚上げしておいて、必要なとき取り出して、ホコリを払って使えばいい。


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愛情に満ちた父親と、得意技は棚上げの母親は、グッドコップ&バッドコップコンビ。

娘がわるさを働くと、私が叱り、主人が慰めるという役割分担で育児をしてきた。

私は、「後で、お父さんがフォローしてくれるから」と、安心して叱ることができ、主人は思う存分娘を甘やかし、娘からの愛情を勝ち得ていた。


小さいくせに、なぜか女の子は結婚願望があるものだ。

父親の愛情を欲しいままにしていた娘は、「大きくなったらお父さんと結婚してあげる!」と、上の立場から主人に申し出た。

愛して結婚するより、愛されて結婚するほうがいいと察するとは、幼いながら、実に打算的な小悪魔娘だ。
(だが、そのあざとさも我が子だとかわいらしい。)

主人はすでに妻帯者でありながら、ニッコニコの満面の笑みで

「こいちゃん(娘の愛称)を必ず幸せにするよ!」

と、約束していた。

私が娘に「お母さんは、お父さんのお嫁さんさんなんだけど、どうしたらいい?」とたずねると

「お母さんは、ご飯係ね!」

と、とてもいい笑顔で任命された。


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時を経て、娘は成長して、反抗期に突入した。

惜しみない愛情を注いだ主人は、今、子育ての逆風にさらされている。

「お父さん、うっとうしい!」
「お父さんは、何にも分かっていないのに、口出さないでよ!」
「お父さんて、どうして人の話を理解できないの!?」

主人は、最愛の娘に悪しざまに言われても、へこんだりしない。

自分への甘えだと、分かっているから。


分別のある母親を気取りたい私は

「父親に対して、ああいう態度はよろしくない。ちゃんと叱るべきではないか。」

と、提言するのだが、主人は、一向に気にしていない。

「こい(娘)は、今、自分が反抗期なのを分かっていない。自分が全て正しく、周囲が間違っていると思い込んでいるだけだ。頭ごなしに否定しても、仕方ない。まず、今は受け入れる。ありのままの自分を受け入れてもらえたら、自分を振り返ることが、できるようになるから。」

「あら、カッコいい。なんかの映画のセリフ?」

淡々と言う主人を、ついヒヤかしたが、実は感心していた。

あんな暴言をさらりとかわせるなんて、私にはできない。


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「何を言っても、お父さんは自分の味方だ」と、娘は意識下で信じている。

主人への攻撃は、甘えなのだが、それを言うと、「そんなんじゃないから!」と激怒するだろうから決して口にしてはならない。

怒った娘は、私に瓜二つで、けっこうコワイ。

主人は言う。

愛情を注いだ娘は、愛されている自信があり、正しく反抗期を迎えていると。

なるほど、主人にたいするように、私には反抗してこない。

私の愛情は、スパイスたっぷりで、複雑なお味だったもんね。


主人は、どんなに言われても、娘の自分へ対する信頼を、微塵も疑わない。

「愛されてきた自信があるからこそ、親に反抗できるのだ」

なんという愉快な逆説だろう。

だが、それでなんとなく、子どもの反抗期をやり過ごせる気分になる。

「愛情を以て接すれば、必ず分かりあえる」

そんな古典的な言い伝えを、なぜ、うちの主人は妄信してるのだろう、とかつての私は、頭を45度に傾げていた。

だが、愛情で地盤改良されていれば、根底は揺るがないのだ。

そんな、小さな奇跡を目の当たりにできて、母は、幸せです。


(ライター:ママンレーヌ)


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※ この記事は2024年12月02日に再公開された記事です。

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