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公開 2020年12月01日  

我が家にとっての“ライナスの毛布”はどこの家にもあるアレでした<第5回投稿コンテスト NO.9>

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我が家はみんなアレが大好きなんです。



「なんやろうね?この子はタオル握らせておいたらスッと寝るね」

初めての子ども、初めての育児。何をするにも手探りだった6年前。息子は夜泣きがひどく、授乳なしではなかなか寝られない夜泣きボーイだった。

精もこんも尽き果てた私は、息子が10ヶ月の頃に断乳を決意し、無事成功、その後夜泣きもなくなった。

 「ほんまに、ついこの間まであんなに苦労してたのが嘘みたいやわ」

と、私が言うと、

「もう毎日地獄みたいやったもんな。朝起きてからもやし、夜寝るときも、毎日がしんどい怖いって言っててほんまに妻ちゃんが辛そうでかわいそうやったもん」

と、夫が言った。

そんな話をしながら私たち夫婦が見つめていたのは、当時もうすぐ一歳になろうかという息子だった。

手には肌触りが良くて息子の名前が刺繍された愛用のハンドタオル。

息子はそのタオルをにぎにぎしながら、スヤスヤと眠っていた。


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あれからあっという間に月日は過ぎ、夜泣きボーイだった息子ももう6歳になった。

今は夜泣きどころか、どんなに雑音が入ろうとも朝までぐっすり寝てくれるボーイになった。

ただ成長した息子の寝るための必須アイテムは、今でもハンドタオル。

ハンドタオルは何度か世代交代をしつつも、常に息子にとっての愛用品として、毎晩息子のお供をしている。

「お母さん、ぼくのタオルは?」

爽やかな夏はあっという間に過ぎ去り、ぬくぬくのお布団が恋しい季節がやってきた。

湯冷めしないように暖かく身支度を整えた息子は、今晩も自分のタオルの所在を確認している。

「今日洗濯したから、そこにあるでしょう」

と、私。


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さぁ寝ようかと、ベッドに潜り込む私と息子。

それと、私たち二人の間にもう一人。今年生まれた娘が真ん中を陣取って転がっている。

ちょうど10ヶ月を迎えたばかりの娘はコロコロと転がるので寝具がベッドの我が家では、娘が転がり落ちないように娘を間に挟んで眠る。

こにょこにょと動き回る娘。まだそんなに眠たくないらしい。

ただ、手元にはふわふわのハンドタオル。

そう、娘にとってもハンドタオルはねんねに欠かせない必須アイテムなのだ。

タオルがないと落ち着かない様子で手をくにくにさせている。

「ねぇ、お母さん、ぼくのタオルないよー」

と、息子はまだ自分のハンドタオルを探している。

その横で、

「あぅあぅあー、あー」

と、娘が少し眠たくなってきたのかタオルをしゃぶりながらにぎにぎしている。

「ほらー、タオルここにあるやんかぁ。はい、どうぞ」

と、言いながら、私は息子にハンドタオルを渡してあげた。

「ありがとうー。今日はまくりたい気分。お母さんまくってー」

と、息子。

『まくる』とは息子用語でタオルを折りたたみ、自分の目の上にアイマスクのようにかぶせる…という意味だ。


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「今日は甘えてるなぁ。いつもは自分でまくるのに」

と、心の中で思いながら、

「きっと今日は甘えたい日なんだ。息子も毎日お兄ちゃん頑張ってるもんな」

と、急に息子のことが愛おしくなった。

娘の背中をトントンしつつ、息子の目元にタオルを乗せた。横で徐々に動きが鈍くなっていく娘。体を私に寄せてくる。

心をキュンとわしづかみにされるような石鹸の良い香りと、ホカホカとした娘の体温。こちらまで心地よくなってくる。

元気者の息子も、ハンドタオルをまくるやいなや、あっという間に静かになり、眠りの世界へ向かっている様子だ。


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さっきまであんなにけたたましかった部屋が、宇宙に私ひとりぼっちになってしまったのかな?というぐらいの静寂に包まれ出した。

「スースー、グォッ」

「シューシュー」

宇宙は言い過ぎた。子どもたちの鼻詰まり調の寝息が静かにハーモニーを奏でていた。

「はぁー、今日も一日終わった。みんなお疲れ様、おやすみ」

そう言って私は寝室を出た。

その後夫が仕事から帰って、ご飯を食べている間、私は今日の出来事なんかを夫に話したりして過ごした。

先に寝ると言ってベッドに向かった夫を尻目に、私はしばしの一人時間を、子どもたちに隠していたおやつと共に楽しんだ。

「さて、そろそろ寝るか」

そう思って、静かに寝室のドアを開けると、

目にまくっていたはずのハンドタオルを手に握りしめながら眠っている息子。

相変わらずタオルをにぎにぎしつつ、掛け布団にくるまりながら眠っている娘。

そしてその横には、夫が愛用のハンドタオルを自分の目にまくりながらガーガーといびきをかきながら眠っていた。

そう、我が家はみんなタオルが好きなのだ。

目の上に乗せるアイマスク仕様(通称、まくる)を息子に教えたのも、なんてことはない、夫だ。

父から子へきっちりとタオルの使い方は伝授されているようだ。

私はそんな三人を見ながら、

「ふふっ、おもしろっ」

と、何気ない光景に幸せを感じながら、自分用の少し長めのマイタオルを、首に巻き付けてスヤスヤと眠りに落ちていった。

何を隠そう、私もタオルが首にないと眠れない。

我が家は全員タオルがないと眠れない、タオル大好き一家なのだった。


(ライター:ままぶたこぶた)


※タオルを目にかける等は、子どもが大きくなり、自分で取り払うことができるようになってから、ご家庭の判断でお願いします。小さいうちは決してやらないでください。


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※ この記事は2024年09月12日に再公開された記事です。

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