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公開 2021年01月01日  

仲良し学生時代から10年後の私たち。変化することは寂しい?それとも…?

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年が明けると、いつものメンバーから明けましておめでとうメールが届く。
毎年、元旦ではない1月3日頃。この絶妙なユルさが心地良い。
みんな元気にしてるかな?と思う時、自然と頭に浮かぶ数年前のあの日のこと。


悲願のランチ会


私は今日、一人で出かけている!!

2歳の息子は、行政サービスの一時預かりを利用させてもらった。

誰に怒られるわけでもないのに、一時預かり申請用紙の預ける理由欄の「リフレッシュ」におどおど丸をつけた。

保育士さんが笑顔で送り出してくれたので、よろしくお願いします!とこちらも笑顔で施設を出る。

今にも雨が降り出しそうな空だけど、私の心は日本晴れ。

平日に一人で出掛けられるなんて、いつ振りだろう。

身軽だ。

点滅する青信号も、ダッシュで渡れちゃう。

電車待ちの列に割り込みされても全然平気!

そう、声を大にして言いたい。

「わたし今日、久々のひとりお出かけなんで!」


さて、今日の外出目的は、学生時代の仲良しメンバーとのランチ。

私たちが4人揃うのは実に5年ぶりのことだったのだ。

否が応でもテンションは高まる。

誰かが都外に転勤になったり、妊娠&出産したり、子どもが風邪引いた、転職活動で忙しくて、など、みんな色々事情があったのだ。

さて、そんな”悲願のランチ”へと向かう電車へ、いざ乗り込む。

空席もまばらな車内で、ようやく見つけた座席に腰をおろした。

イヤホンを取り出して、耳に装着。

電車の中で音楽を聴くのも、なんて久しぶりなんだろう。

いつも、息子が騒ぎ出さないかと絵本片手にヒヤヒヤしている私には、すべてが尊い瞬間。


ふと周りをよく見たら、みんなワイヤレスイヤホンじゃないか。

学生風の人もしているから、そんなに高価なものじゃないのかな。

時間ある時、調べてみよう……。いや今調べよう。

育児中の私が、心置きなく調べものを出来る時間なんて、そうそうないのだから。

「お、意外とお手頃」と、スマホの画面をスクロールしているうちに、目的の駅に到着した。



張り切って一番乗りしてしまったようで、みんなを出迎える形になった。

「久しぶりー!!」手を取り合って喜んでしまう。

みんな元気そうで嬉しい。

同時に、子連れでないランチにも喜びを見出す私。

現在6歳の息子も、この時はまだまだ手のかかる2歳児だったのだ。

子どもに取り分けることを考えず、メニューを自由に選べることからすでに嬉しい。

同じく子持ちの友人と顔を見合わせ、「辛いのいく?辛いのいっちゃう!?」とニヤニヤする。

食事が提供されるまで、自由に話せるのも嬉しい。

「それ触らないよ」「声が大きい。静かに!しーっ。しーっ」

そんなセリフとも今日は無縁だ。

間もなく食事が提供されて、私たちはお互いの近況報告をしたり「これ美味しそう!」なんて和気あいあいと学生時代のように盛り上がった。


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あれ?なんだか…寂しい?


2時間弱のランチ会は終わり、また会おうねー!と手を振り、みんなそれぞれの電車に乗り込んだ。

電車が地下から地上に出ると、雨がポツポツと車窓に当たった。

懐かしいみんなの顔が見られて嬉しかったはずなのに、この時私は少し、寂しさも感じていた。

楽しかったのは揺るぎない事実なのに。

あんなに学生時代、夜通し喋ることの尽きなかった私たちなのに。

実は、最後の方、話すことがなくなってしまったのだ。


学生時代から10年近く経った今、当然ながら私達を取り巻く環境も、当時とはすっかり変わってしまっていた。

細かいことをいえばキリがないのだけど、例えば、自分の仕事を持っているか、パートナーがいるか、結婚しているか、子どもがいるか、等々。

それらが違えば、生活スタイルや関心事はおのずと変わってくるもの。

この日の私達は、みんなで話せる話題を模索しあっていて、4人で共通して思い切り話せる話題がそんなにないということに気付かされたのだ。

学生時代は同じ校舎に通い、同じ授業を受け、お互いのバイトのシフトを把握してしまうほど一緒に時を過ごしていた。

今と違う、といえば当然なのだけれど。

何だか鼻の奥がツーンとする。

いや、泣くほどのことではないな、これは。自然の流れというか。

でも1回、鼻をすすった。

息子を迎えに行く電車の中、私はとある人に今日のことをメールで話してみた。

叔母だ。


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現役50代、叔母の言葉


私の母は専業主婦で、転勤族の父を、そして家族を懸命に支えてくれるタイプの母親だった。

一方叔母は専門職に従事し、結婚&出産後にまた職場に戻り、キャリアを重ね、今も第一線だ。

母と叔母、過ごしてきた環境は違えど、姉妹というだけあって根っこはとても似ており、私は二人とも大大大好きなのだ。


仕方ないよ、と言うかな。

私が仕方ないよな〜と思っているだけに。

しかし返事は、意外なものだった。

「分かる!20代と30代はそう感じること多かったよ〜。

でも大丈夫!50代になると仕事も余裕が出てくるし、子育ても山場は過ぎて、みんな人生の中心が‘’仕事‘’とか‘’家庭‘‘から、また‘‘自分‘’に戻ってくると、私は思うよ!」

また叔母は、続けてこうも言ってくれた。

「お互いまた会いたいな、元気でいるかな?って気にしている間柄なら、また必ず会えるよ。

細々でも連絡を取り合って、時が来たらまた会えるから絶対大丈夫!」


人生の先輩でもある叔母からの心強い言葉が、心に宿った寂しさを少しずつ溶かしていく。

「いやー、大学時代かあ。楽しい思い出を共有してるって、すごく素敵なことだよね」

―楽しい思い出。

思えば今日の一番の盛り上がりポイントも、そうだった。

学生の頃、みんなで学食から出るなり雨が降ってきた時。

『あ!雨降ってきたよ!ここの階段滑るからみんな気を付けてね!』

こう私が言った2秒後に自分が激しくコケた話を思い出して、みんなでお腹を抱えて爆笑したのだ。

不思議と、当時コケて仰いだ空の灰色と、みんなの声が脳にダイレクトに浮かんでくる。

楽しかったよなぁ。

それは、これからも決して変わらない。



自宅の最寄り駅に着くと雨は止んでいた。

電車を降りて、息子の待っている場所まで早足で向かう。

私の顔見たら泣くかな。

それとも新しいオモチャが魅力的過ぎて「かえらない!」っていうかな。

4時間弱会わないだけで、あのふわふわの髪の毛に触りたくてしょうがない。

息子がいたら喜びそうな大きな水溜まりを、大股で通り越して、一時預かり施設の門をくぐった。

「かっか!」満面の笑み。

激突ともとれる再会のハグを、体全体で受け止めた。


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変わっていくもの、変わらないもの


そのランチ以降、学生時代の友達とは何となく、2人きりで会うことが多くなった。

2人ならお互いの話をじっくり聞けるし、誰かが話に置いてきぼりにされることもない。

お互いの日々の話をしながら、友達が幸せに過ごせていることを知り、こちらもふと、幸せな気分になる。

毎日なにかしら大変なことがありながらも、私の日々も、彼女達の人生も続いていく。

遡れば、私たちが一緒に過ごした時間は確実にそこにあって、それはこれからも変わらない。

「お互い会いたいと思えば、またきっと会えるよ」

30を過ぎて、もうめでたいんだか、めでたくないんだか分からない自分の誕生日に、毎年律儀に連絡をくれる友達を大切にしたい。

彼女達に、また会いたいと思ってもらえるような人でありたい。

これからも細くても、長く。

思い出を積み重ねられる間柄。

その決意をあくまでユルく、新たにし、今年も年始のおめでとうメールを送り合う私たちである。


※ この記事は2024年08月30日に再公開された記事です。

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