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公開 2020年12月31日  

超低出生体重児で生まれてきた息子。1歳になりパパが思うこと<第5回投稿コンテスト NO.39>

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育休中のパパの日常を、オノカオルさんがつづってくれました。



『行ってきまーす、こぐまさんよろしくね〜!』

妻が1階の玄関から叫びます。

『いってらっしゃーい、気をつけて〜!』

2階から叫ぶ僕の声に、玄関の扉が閉まる音が重なります。

妻が1年間の育休を勤め上げ、いよいよ僕に育児のバトンがまわってきました。

時刻は8時。

長いようで短い、僕とこぐまさん(1歳)の一日が始まります。


現在は、朝の離乳食が終わった直後。

イナゴの大群が押し寄せた田畑のような情景がテーブルの上に広がっています。

ちなみに僕のGoogleカレンダーには30分刻みで予定が入っていますが、すべてが予定通りいった日はまだありません。

これから先もきっとないでしょう。

仕事と同じように、否、それ以上に“切り替え”が大事なことは、この短い育休期間の中で学んだことのひとつです。


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さてまず、食後のミルクを飲ませます。

ちなみにこぐまさん、ハンガーストライキ絶頂時代には「飲まない」「泣き出す」「吐き戻す」の三冠王を達成し、メンタルの図太い妻をヒステリックにさせるほどのパフォーマンスを発揮していました。

僕は横にして飲ませてあげる<側位>と正面から飲ませる<対位>を使い分けつつ、立っちだっこも織り交ぜながら、それでもダメなら秘技<半落ち飲ませ>を繰り出し、20分間一本勝負でこぐまさんにミルクを飲ませます。

ミルクのあと、朝寝をしてくれようものならば即座に家事モードに切り替えます。

カオスになったテーブル周りを拭き、こぐまさんのエプロンと哺乳瓶を洗い、我々の食器やら料理器具やらをまとめて洗ってしまいます。

朝寝は長くはもちません。急がねばです。

乾燥機にかけてあった洗濯物を取り込み、こぐまさん・妻・僕のと仕分けしながら畳みます。

抜き足・差し足・忍び足で寝室に行き、天気がよければ布団を干します。

母親に似たのか、こぐまさんはふかふかのお布団が大好きなのです。

大体この辺までで、こぐまさんが起きます。

起きて誰もそばにいないと、大層ご立腹になるので注意が必要です。


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そしてこぐまさん、今はなんでも口にくわえる時期です。

家事をしながら目を光らせ、なんでも口に入れようとするこぐまさんを引き離します。

光ったり音が鳴ったりするのが面白いのでしょうか。

こぐまさんの大好物は、ルンバです。

果敢にズリはいで近寄り、ボタンを押しまくります。

当然スイッチがオンされることもあり、そうなるとこぐまさんを乗せたままルンバが縦横無尽にリビングを駆け回ることになります。

僕はそっとこぐまさんをサルベージしてルンバを止めます。

そうこうしているうちに、2回目のミルクタイムがやってきます。

ミルク手前でオムツを替えてあげないと気持ちよく飲んでくれないので手早く替えます。

うちは布おむつを採用しており、この1年間で<布おむつを畳んだ旦那選手権>があればかなりいいところまでいける自負があります。

朝イチとこの時間は、ミルクのゴールデンタイム。

なんとかミルク摂取量の飛距離を稼ぎたいところです。

それでも、無理は禁物。

今までにもここで不用意な粘りをしたせいで何度こぐまさんの吐いたものを被ってきたことか。

慎重かつ大胆に、丁寧かつ迅速に。

ミルクをちゅぱちゅぱ飲ませていきます。


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昼の離乳食の時間が来るまでこぐまさんが寝なければ一緒に遊び、寝てくれようものなら、僕もここで仮眠を取ります。

育児は休みのない長期戦。

『休み方も働き方』は、妻から貰った名言です。

自分のお昼(大体は冷凍食品)は5分でたいらげ、オムツ替え、昼の離乳食、3回目のミルク、拭き掃除、洗い物と立て続くラッシュアワーを無の境地でこなしていきます。

『やり始めれば、もう半分終わったようなものだ』と座右の銘を口にしながら黙々と任務を遂行し、布団を取り込み、和室に敷きます。

夕寝はなかなか難しいので、僕はここで“こぐまさんぽ”を挟むようにしています。

オムツを新しいのに替えたら抱っこ紐を装着し、こぐまさんを抱っこ、この時だけはカンガルーの気分になって散歩に出掛けます。

神社まで、往復30分のコース。

揺られるのが気持ちいいのか、こぐまさんはほぼ100%ここで夕寝を取ってくれます。

帰ってきたら、お風呂の準備。

風呂掃除をするついでに、こぐまさんの布おむつを風呂場でゴシゴシ洗います。

諸々の用意ができたら一緒にお風呂に入ります。

至福の時間です。

ポカポカになったこぐまさんを冷えないうちに寝巻きに着替えさせ、必要があればこぐまさんを背負って、夜の離乳食とミルクを用意します。


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男2人だけの食卓は、どことなく寂しいものです。

言葉少なめにご馳走さまを迎え、再びカオスになったテーブルを横目にミルクをあげる頃、ようやく妻が帰ってきます。

このご時世なので、すぐにこぐまさんを抱っこすることは叶いません。

シュッシュと消毒、お風呂に浸かってからです。

その頃、こぐまさんはもう夢の中。

愛する我が子の寝顔を拝みに、妻はいそいそと和室へと急ぎます。

その間に僕は風呂場へ。

洗って浸けてあった布おむつなど1日分の洗濯物を取りまとめ、洗濯機をまわします。

こぐまさんの顔を拝んだ妻は手早に夕飯を済ませ、寝支度に入ります。明日も早いのです。

洗濯が終わったら部屋干しするものと乾燥機にかけてしまうものに分け、ようやく僕の家事も終了です。

最後のミルクは寝込みを襲うので、こぐまさんの顔もまともに見ることができません。

それでも、この時間がなんともじんわりと幸せです。

1日の終わり。

サチュレーションモニターを見ながら、100ccにも満たない量のミルクをあげる、この時間。

日中はどうしても余裕がないけれど、暗くなった和室で今日一日をゆっくりと振り返り、こぐまさんが出来るようになったことをひとつずつ数えます。

この未知の感染症の流行中に一緒に長い時間を過ごすことで、まだ言葉は交わせないけれど、たくさんの会話をしているような気分になります。

どこにもお出かけ出来ないけれど、たくさんの思い出が毎日増えていきます。

週刊少年ジャンプより軽い体重で生まれてきたこぐまさんは、生まれた直後からの1年間で、おそらくは人生最大の危機を迎えてしまいました。


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だから、今こうして。

一緒に朝を迎えられることも、ご飯をいっぱい食べてくれることも、すやすやと眠ってくれることも、遊んでやると狂喜乱舞することも、ぜんぶがぜんぶ、奇跡のようにまぶしく映ります。

きみが手術で取り出される、前の日。

引っ越してきたばかりの家に真新しい表札が届いた、あの日。

妻は病院にいて、きみはまだお母さんのお腹の中にいて、僕はひとりで家にいました。

心配で胸が押し潰されそうになりながら僕は表札を玄関に取り付けて、少しだけ涙を流しながら、絶対3人で帰ってくるんだと胸に誓ったのです。

日々の育児・家事で何かしんどいことがあったときは、僕はこぐまさんを抱っこして玄関まで行き、表札を眺めるようにしています。

「必ず3人で帰ってくるんだ」と誓った表札を見るようにしています。

大抵のことはそれで吹っ飛んでいきます。

それが我が家の、というか僕の、秘密のルーティンです。

さて、長いようで短かった一日が終わります。

こぐまさんは夜泣きを滅多にしないので、今日も3人、仲良く川の字で眠ることができそうです。


(ライター:オノカオル)


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※ この記事は2024年09月16日に再公開された記事です。

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