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公開 2021年04月02日  

6歳×母の「はじめてのローン契約」。あれ買って!が激減したワケ

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いつから始める?マネー教育。


6歳、人生初の「ローン契約」!


「今日さ、ローン返すの、やる?」

「そうだねぇ、へんさいきげん もあるから、やる!!」

「了解〜」


このような会話が我が家では頻繁に交わされている。

一見すると6歳の日常にそぐわない会話だが、もちろん経緯あってのことだ。


ある日、息子とスーパーに行った。

息子がある棚の前で歩みをピタッと止め、「こ、これは……!」と息を漏らす。

息子が最近ハマっているゲームの攻略本のようだ。


「お母さんこれ欲しい!おねがい!」


お値段、1000円也。

買ってあげられない額ではないが、何でもない日に、はいよ!と買うのもなんだか違う気もする。

そこで「じゃあいつもみたいにアルバイトしたら?」と提案してみた。

しかし息子は「そうすると1ヶ月後でしょ?どうしても今欲しいんだよ……」と言う。

我が家はお小遣いをまだあげていない。

その代わりに欲しいものがあった時には、アルバイト制度を活用することになっている。

家の手伝いを30回してくれると1000円程度のものが買える制度だ。

今回もこの制度で行く?と提案したが、息子はどうしても今欲しいとのこと。

彼はすでに、労働して対価(お金)を受け取る→それで欲しいものを買う、というマネー教育の第1段階はクリアしている。

そろそろ次の段階に移ってもいい頃かもしれない。

「息子、お母さんとローン契約を結ぼう」

「ろーん、って?」

ポカンとする息子。

「いつもより多めにお手伝いしないといけないけど、代わりに今、手に入るよ」

そう伝えると、「もちろんやる!」の乗り気な様子だった。

詳しい契約内容は家に戻ってから話そう、と、とりあえず本を買って帰った。


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アルバイトとの違いは?


「じゃ、今契約書書きますんでねー」

サラサラとペンを走らせ、契約書を息子の前に差し出した。


【契約書】  

息子は、好きな本(1000円)を買うためにお母さんと、ローン契約を結びます。

①お手伝いを 35回 やります

②返済期限 ⚫️月30日まで

③途中でやめたら、2度とローン契約はできません!


続いて、息子からの質問タイムが始まる。


「どうしてお手伝い、いつもより5回増えてるの?」

「うん、息子はいつもは30回やった後に、1000円のものが手に入るよね。

ローンはすぐ手に入る代わりに、いつもより多めにお手伝いしないといけないんだよ」


「へんさいきげん、ってなに?」

「これは、⚫️月30日までにお手伝い35回を終わらせてね、っていう約束」

「え、なんで!?普通のアルバイトの時、そんなのないよね」

「それはローンだからだよ。

お母さんからしてみたら、本を先に渡したのに、お手伝い全然進んでなかったら、あれ?ほんとにやってくれるの?って思うよ。

だから期限がある」


「しかも途中でやめたら、2度とローンできないの!?」

「そうだよ。途中でやめたら、あー息子はやるって言ったけど、やらなかったわー。

また同じように、欲しいものがあった時に、今度はやるから!っていっても絶対お手伝いやらないな、って思わない?」

「思う......」

「ローン契約をする、ってことはさ、『私はあなたが約束を守ると信じています』ってことなんだよ。

信用してます、ってこと」

「しんよう……」


「さて、どうする?

やっぱりローンはちょっと、って言うのだったら、いつものアルバイトでも、もちろんいいよ」

「やる!絶対やります!」

決意と共に、契約書に息子の署名をもらった。


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思いがけないローンの効果


私は、息子はローンを途中で投げ出すことはないだろう、と踏んでいた。

彼は、すこぶる真面目な男なのである。

親として興味があったのは、彼がローンを組んでからどのくらいのペースで返済していくのか、だった。

期限までは、あと50日くらいある。

彼が出来るアルバイトは、夕飯の準備を手伝う、お皿を拭く、洗濯物を干す、の1日最大3つだ。

コツコツ毎日、たまには休みを挟みながら、やるのか。

溜めに溜めて、最後に一気に毎日、3つずつやるのか。

張り切って、スタートダッシュで終わらせてしまうのか。

そしてすでに例の本は手に入ってしまい、喜びを味わってしまった息子。

最後の最後に、ローン組んだことを後悔しないのか、いかに!?


結果から言うと、息子は無事、ローンを完済した。

休みを挟みながら、自分でペースを決めて、しっかりやり切った。

ローンで買った攻略本は、やはり他の本より大切にしているように見受けられる。

とりわけ、このローン契約を経験し、劇的に改善したことがある。

「おねだりの激減」である。

今までなら「これ、いいなー欲しい!」と言ったものを「ダメだよ、高いし、本当に欲しいなら誕生日かクリスマス!」と一刀両断していたところ……。

「お、どうしても欲しいならローンやる?」と水を向けると、「お手伝い、何回?」と目をキラキラさせてくる。

「えっと、欲しいものは5000円だね。

お手伝い30回で1000円相当だから、150回……ローンだと、172回かな!」


息子、とても遠い目をしている。

「高いんだね……これは誕生日プレゼントまで我慢しようかな」

自分の欲求と労働の大変さを天秤にかけて、自ら考えるようになったのである。


ちなみに後になって「ローン契約の感想は?」と聞いてみた。

「ローンはすぐに欲しいものが手に入って、サイコーの制度だけど、途中でやめたら2度とローン出来ないところが怖い」

なるほど。

返済期限よりも、信用問題の方が息子の心に刺さったようだ。


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いつやるか?マネー教育


マネー教育というと、投資や保険などの親すらも尻込みしてしまうものを想像しがちだ。

しかし、買いたいものを我慢する、または買いたいものの為にベストな方法を考え、それを交渉する、等も立派なマネー教育の1つだと我が家は考えた。

お金のことを子どもに懇々と話すのはなんだかな、と思う一方、お金から子どもを遠ざけていてはいつまでもその大切さを学ぶことが出来ない。

そのバランスが難しいな〜、と思っていたが、“興味を持った時が始め時“と、我が家はお金のエトセトラを小出しにしていくことにした。


そして息子が聞く。

「おかあさんは、ローンくんでるの?」

「お母さんはローン組んだことはないけど、お父さんは家のローンを組んでいるよ。

家族の為の大事なものだけど、びっくりするくらい高いからさ」

「そうなんだ!いくらなの?」

「(よそで喋られても困るから…)いくらかは言えないけど、35年毎月払い続けるローンだよ」

「さんじゅう……ごねん……!?それ本当なの!?」

「そう、35年……。す、すごいよね。」

改めて考えて、少し震える。

いや、35年て。

……明日からもっと夫に優しくしよう。

朝起きたら、いつもお仕事してくれてありがとうって言おうね、と誓う母と子であった。


※ この記事は2024年09月28日に再公開された記事です。

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