子どものいるご家庭では大体のママとパパは
「朝は戦争です」
そう言う。
今この平和な日本で、本気の戦争を知ってる人がどの位いるのか、そんな事に思いを馳せている隙間もない位、みんな同じ事を言う。
我が家、12歳の中学生、9歳の小学生、そして3歳の、この子の立ち位置は少し微妙なのだけれど、幼稚園に在籍しながらちょっとややこしい病気もあって今はお休み中、代わりにたまに一時保育のような場所に行く幼稚園児(仮)。
この3人のいる朝も御多分に漏れず戦争だと思う。
そしてこれを書いているのは朝、戦闘開始のカウントダウンの直前なので、私は同じ戦場に居る皆の事を戦友と呼びたい。
各地の戦友たちは今どうしているんだろうか、今ですか、朝の4時30分です。
非常事態宣言という言葉がすっかり耳慣れてしまった2021年の今、在宅で仕事をしている人の割合は、私の周囲でぐんと増えた。
そして私は、その宣言以前から、ずっと家で小さな仕事をしている人種で、そこは全然変わらない気がする、でもひとつだけ変わったというかアテが外れた事がある。
3歳の次女を預かってくれる幼稚園、そこへの入園がすっかり遅れていて、もうどうしていいかわからない、そんな状況が発生しているのだった。
これは本当に誰も悪くない。不可抗力。
でも1日中、活発すぎな3歳児に付きまとわれて仕事なんかできると思いますか友よ。
それで仕方なく毎朝、何なら太陽よりも早起きして、少しだけ仕事をしている。
でもそれも5時過ぎまでの事だ。
毎日元気に長距離通勤している夫が、ニコニコして起きてきてしまうから。
この人はいつも朝「おはよう」の代わりに
「朝ごはんなあに?」
そう言って起きて来る。
それをウン、自分で作ってくれる?とは少し言いにくい。
この夫は、事務手続きとか子どもの公園遊びとか、12歳の長男の中間テストのフォローとか、私が苦手とする全般を網羅してやってくれるのだけれど 、料理が本気で出来ない。
出来ないだけじゃない、それをやらせると台所が大変な事になる。
もう清浄の地が瞬く間に腐海に飲まれると言うか。
それで、私の就業時間は例え3時に起きても、約2時間程度。
どうして私にだけ1日が48時位ないのかなあと思う事は1年に300日位はある。
でも時空は歪んだりしないのだから仕方ない。
私は5時すぎからまず1人目、夫の朝ごはんとお弁当を作る。
それからそんなに早くに起きてこなくてもいいのに次女が6時ちょうど位に起きてきて。
「ママー!アサゴハンタベル!」
そう言い出し、ハイ、パンですか、ゴハンですか、何?お菓子?そういう我儘を聞いている間に次、7時に長男が起きてくる。
この少年は一切の寝間着というものを放棄して何故かパンツ一丁で布団から這い出してくる、服を着なさい、服を。
その長男にパンやらソーセージやらを焼いて出す、そして満足してまた布団に戻って行く。
出来たらそのまま起きておいて欲しい。
その後、起こさないと絶対起きてこない9歳の長女を叩き起こして、低血圧なのか何なのかぼんやりしている長女に朝食を食べさせて、時間は7時45分。
ねえ体操服は、水筒は?昨日、絵の具のお金持って行くっていってたアレどうしたの?
玄関前で大騒ぎしてから小学生と中学生を送りだして8時。
毎朝、本当に疲れる。
聞くところによると、この状態を駆け抜けながら、更にご自身が出勤している親御さんも世には沢山いるらしい。
大丈夫?みんな息してる?
平常時がこんななのだから、有事の時にはもう大変な事になる。
つい最近、我が家一帯に早朝から大雨が降った事があった。
朝から雨足の酷く強かったその日、夫が家を出て、子ども達が起きる頃には警報が出るほど雨が激しくなり、まず手初めに私のスマホに通知がひとつ来た。
次女の在園している幼稚園から。
『7時現在大雨警報が発令している為、本日は休園となります』
幼稚園は小回りが利く、何と言うか対応が早い。
昔はメールで来ていたお知らせが、3番目の次女が在園している今、アプリをDLしてそこから連絡が来る。
もう我が子は3人目、界隈ではかなり先輩の域に入って来た私は段々ついて行けない気すらしている。
でもこれはとても便利だ、次女は今幼稚園まだ通園できていないけれど、今後もこれなら安心。
でも、上の2人はとても難しかった。
と言うよりもそもそも、緊急時の対応・災害時の連絡方法という物は多分、4月のどこかで学校から配布されている。
筈。
でも、自室にプリント類を貯める事が趣味の12歳長男と、そして意外に抜けていてその手の物を学校に置き忘れてきてしまう長女、そして何かプリント類を貰っても、ちょっとその辺に置いておく、その後、3歩歩いてから各種お知らせの束の行方が知れなくなる私の組み合わせでは、そうそう、情報を必要な時即取り出すと言う芸当は出来ない。
「ねえ、緊急時って何がどうなるんだけ?警報があるともう学校休み?」
そんな問題が即時解決する訳もなく、7時以降に送られてくる今日の対応のメールを静かに待つ事になる。
ここで更に面倒なのは、長男が今中学生で、長女が小学生であると言う事。
2人とも地域の公立校に行っていて、同じ教育委員会の管轄の筈なのに対応が微妙に違う。
そしてこの中学生と、小学生は性格も全然違う。
「ねえ、本当にお休み?下にお友達集まってない?」
そう言って、外が大雨で横殴りの風さえ吹いて荒れているのに、母親を信用せずにランドセルを背負って水筒を提げ、ならちょっと下に登校班が集まっていないか見て来る!というのを止めないといけないのが長女。
この子は物凄く生真面目で小心者だ。
対して
「そしたら、俺寝るわ」
そう言って、制服を全部脱いで、2段ベッドの上に登って行くのが長男。
オイ、ちょっと待て、オマエが警報解除の速報を随時見守っておくんだよ。
学校は、7時に警報解除だと、10時から登校。
10時に警報解除だと11時に登校。
12時警報解除だと中学生のみ午後から登校で小学生は休み。
そういう
「ああああ、これ、高校の数学でやった気がする、和集合?空集合?補集合?」
かつて算数自体が苦手な自分を散々苦しめて来た数学Aを思わせる、細かい段階を踏んで登校しなくてはいけない。
そしてその警報が解除なのかそうじゃないのか、それを鋭意スマホで確認していると。
雨だからまだ外に出るなと言っていた長女が勝手に外に出たりしている、コラそこ、戻りなさい。
今回の大雨、警報解除が11時を回ったので、中学生は午後から授業、小学生は全日休校となり、もし次女が普通に幼稚園に通っていたら朝から全休確定と、3種類の指示が別々に出た事になる。
これは大変だわと肩を落としながら私は、通勤必須のお仕事をしている近所のママ達を想った。
みんな、生きてる?
そしてこの日、次女はというと、幼稚園に行けない代わりに頼んでいる、疾患や障害のある子のための保育園のような場所のお迎えが雨と風をモノともせずに来てくれて、警報解除の前にとっとと次女を連れて行ってしまったのだった。
週1回だけ、ものの数時間のお預かりだけれど、私はこの人が雨で1日家に閉じ込められないならと安心し、次女は
「イヤ!ニィニトネェネトアソブ!」
非常に不満そうだった。
折角いつもは自分を置いて学校とやらに行ってしまう兄と姉が2人揃って家にいるのに、何故自分だけどこかに行かなくてはいけないのか。
物凄い恨みがましい顔をして連れて行かれた次女はその日、ずっと機嫌が悪かったらしい。
そういう弊害もあるので、今年、これ以上の自然災害とかそういうのは、遠慮してほしいと思う。
ホント、お願いします。