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公開 2021年10月01日  

小1男子「オレ」問題、そのココロは…?息子の言い分が秀逸だった話

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小1男子のツンデレ!?成長記録。


毎日、さながらスペイン

我が家には毎日「朝のなかよしタイム」なるものがある。

単に「おはよ〜」と言いながらギュッとしたり、匂いを嗅いだり、スキンシップの時間、とでも言おうか。

なんて穏やかで幸せな時間……と思っていたのだが、長男(7歳)の様子が最近ちょっとおかしい。

なんだか「うおー!」と言って突進してくるのである。

今までは「朝のなかよしタイムだよ〜」、「おかあさ〜ん(ぎゅっ)」だったのが、「朝のなかよしタイムだよ〜」、「うおー!!!!」になったのである。


闘牛かよ。

息子が闘牛なら、私は闘牛士になるしかなく、でもサッと避けるわけには行かず、向かってくる23キロの塊を受け止めて持ち上げて、ソファに落とす。

喜ぶ闘牛。

闘牛だからスペインかな、と思ったけれど、書き起こしてみたら、むしろ相撲だったことに今気付く。


何はともあれ、あ、もう、ギュッとか恥ずかしいお年頃なのね、と思って、ある日スルーしてみた。

すると、息子の方から「ねえ今日の仲良しタイムは?」と聞いてくるではないか。

「あ、やるの?」

「うん」

「うおー!!!!」

……。


獅子えもん部屋にて、毎朝のぶつかり稽古が不本意ながらも繰り広げられている。

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家の中と外、「呼び方」問題

さて、春先にPTAの当番で息子の小学校に行く用事があった。

内容は2時間ほど、子どもたちが自由に遊ぶのを見守る、というざっくりな任務。

息子は「お母さんが学校に来る」というイレギュラーな行事に「ちゃんと来てね、忘れちゃダメだよ」と朝から心弾ませる。

一方「○○ちゃん(息子の家での呼び名)って呼ばないでね、絶対」と母に注意を促す。

家での「オレ」を学校で出してくれるなよ、と。

オッケーオッケー、分かっているとも。

息子が「外の世界」での一人称を「オレ」に変えた年長のあたりから、私も息子を呼ぶときに、場所を問わず「○○ちゃん」ではなく、下の名前で呼ぶように、意識的に変えた。

それでも家では時折、赤ちゃんからの呼び名「○○ちゃん」が出てしまうのに息子は気付いているのであろう。

母もそこはきちんと心して、家を出た。

学校での息子の態度

さて、当番の時間に学校に着いた。

当然だけれども、子どもが、わんさかいる。

私は深呼吸する。

こういう時、上手に子どもと戯れることができる人を、心底尊敬する。

よし、愚直に見守るぞ!と身構えていると、息子より明らかに体の大きい男の子達が近づいてきた。


「オセロでこの場合って、こことここもひっくり返りますよね!?」

「おかしいよね!?」

「おかしくないですよね!?」


名札を見ると4年生の男の子たちであった。

オセロのルールで揉めているらしい。

「ええっと……ちょっとよく見せてね」

そうやって頭を抱える私の肩をトントン、と叩く人がいた。

「ちょっと、アンタ、ここで何してるの?」

いや、見ず知らずの大人に、「アンタ」って。

胸にざらりとしたものを感じつつ、振り向いた時、私は驚いた。

息子だったのである。

全然見ず知らずじゃない。

超知ってる。

ここ7年半くらい毎日欠かさず見てる顔。


「体育館で待ってたのに、来ないから探しにきた」

「さ、3時までここの部屋担当で、って言われたんだよ」

動揺しつつ答える私。


「あれ、息子くんのお母さんなの?」

「そ!オレのお母さん!」

出た!オレ!家ではいまだに自分を名前で呼んでるくせにぃ!


「あ、3時だよ!体育館行こう!」

なんとかオセロの仲裁を終え、体育館へ向かう。

息子はサッと私と手を繋いだ。

「手、つなぐの?」と私がボソッと呟くと、急いで私の手を振り払って、「うおー!!!」と体育館へ友達と突進して行った。

私はその後ろ姿を、ニヤリと見守る。

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ハートはやじろべえ

帰る道すがら、「楽しかった!またお母さん学校に来てほしい!」と言う息子。

「今年度はもう当番ないからなー」と答えて、さらにややイジワルな顔でこう付け加えてみた。

「あ、息子、さっきお母さんに『ちょっと、アンタ』って言ったでしょ」

息子は「いやーーん」と私の腕に絡まってきた。

その表情は完全に家で甘える時の、幼さ溢れる、それであった。

「違うの違うの、あれは息子が言ったんじゃなくて、“もう一人の息子“がそう言え、って言ったから、だから、その、本当の息子が言ったんじゃないんだよおーー!!」


自分の中の、“もう一人の自分“。

この言い訳がやけにしっくり来て、笑ってしまった。

息子には分かってるよ、怒ってないよ、といなしながら手を繋いで帰った。


今日は息子の「ツンデレ」を一通り味わった1日だったな、と思った。

学校での我が子が「ツン」で、家での我が子が「デレ」。

うーん、違うな。

正確に言うと「ON」と「OFF」だ。

外の世界では「ON」、家の中では「OFF」。

それは大人になった私たちも持ち合わせているスイッチだけれど、息子くらいの年代だと、自分の中に突如現れたそのスイッチを操ろうと調整し始めた頃なのだろう。

学校に行く前の、朝の仲良しタイムで突進して来るのが「ON」に備えつつある息子。

親を「アンタ」と呼んでしまう、「ON」に振り切った息子。

寝る前に「こっち向いて寝て」と甘えてくる、完全に「OFF」な息子。

彼の心はやじろべえのように、あっちにユラリ、こっちにユラリ、と忙しいのである。


実は私ははじめ、「親をアンタなんて呼んで!」と苦情を申し入れようと思っていた。

だけど、友達の前で親に虚勢を張ってしまう自分の子ども時代を思い出し、また、息子の言い訳が説得力満点だったので、穏やかな気持ちに戻れた。


息子が外の世界に触れるにつれて、「え!?」と思うような言葉を投げてきたり、こっちの気持ちがザワザワとしてしまうことも、ままある。

けれど、それも「背が伸びる」や「出来ることが増える」と同じ、前向きなベクトルの「成長」なはず。


それに子育ての先は長い。

まだまだ序の口と、自分に言い聞かせる。

中学生くらいになったら、これの何十倍ものエネルギーで彼はぶつかってくるのであろう。

私はそれに耐えられるだろうか……。

その時は息子の言うように「“もう一人の息子“がやっちまった」と思うことにしよう。

うん、そう考えたらさっき少々憎らしかった「もう一人の息子」も、とっても存在意義ある!!

いずれにしろ、私と「本当の息子」と「息子の中の”もう一人の息子”」との付き合いはまだまだ長そうだ。

程良い距離感で、見守っていきたい親心である。

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※ この記事は2024年12月07日に再公開された記事です。

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