わが家の息子はもうすぐ5歳。
息子は約3年前、私が年子の妹を妊娠中から赤ちゃん返りが始まりました。
その後さらにイヤイヤ期とママイヤ期を同時進行させ、当時ワンオペ育児中だった私は正直、精神的にかなり追い込まれました。
記憶が曖昧になるほど忙しい毎日の中で、息子とうまくコミュニケーションが取れないことが不甲斐なく、私は毎日のように1人で泣いていました。
そんな息子も、4歳になってからはずいぶんと落ち着き、「ママ、遊ぼ〜」と誘ってくれるように。
(それまではパパとばかり遊びたがっていました。涙)
やっと心穏やかな日々が訪れた…!と喜んだのも束の間。
今度は、3歳になった下の娘のイヤイヤ期が始まりました。
遅れてやってきたイヤイヤ期はかなり苛烈で、それまで聞き分けが良かったぶん戸惑いもあり……。
成長の一過程とはいえ、娘への対応に悩むことも多くなっていました。
そんな中、息子の歯医者の定期検診の予約を朝一番でしていた日のこと。
先に娘だけ保育園に預け、息子を歯医者に連れて行く予定でした。
娘は行きの車内で機嫌よく鼻歌を歌っていたので、「時間も余裕あるし、良かった……」などと油断していました。
ところが、娘は園に着いた途端、「保育園、行かない!」と言い始めたのです。
優しく言い聞かせても、お願いしても、気を逸らそうとしてもガンとして玄関から入ろうとしない娘。
いつも一緒の兄と別れ、自分1人で園に行くのが嫌だったのかもしれません。
でも歯医者の予約の時間が迫るなか、後の仕事の予定を考えて焦ってしまう私。
そんな私の思いを知ってか知らずか、娘は頑なに登園を拒否。朝の混み合う玄関で、私や先生の抱っこを拒否して暴れる娘と、マスクをしててもわかるであろう困り果てた顔をした私。
周りの目も気になり、神経がすり減る時間が流れました。
担任の先生が色々と働きかけてくれて、なんとか園の中に娘が入った頃には、予約の時間になっていました。
やっとの思いで歯医者に息子を連れて行きましたが、予約の時間はとうに過ぎており、受付では「今日診察はできません」と予約の取り直しに。
歯医者嫌いの息子は、診察にも時間がかかるためだと思われます。
仕方のないことですが、「前々から息子を説得してせっかく連れてきたのに……」と、私は悲しい気持ちになりました。
歯医者に備え付けてあるオモチャを触っていた息子を車に連れて戻り、「ごめん、予約に間に合わなくて今日の歯医者は無くなっちゃったんだ」と車内で謝りました。
「え、妹ちゃんが保育園に行かなかったせいじゃん!」と憤る息子。
私は娘へのフォローの意味も込めて、「違うんだよ、ママがうまく妹ちゃんにお話できなかったからだよ。ママ、お話下手っぴだったから失敗しちゃったんだ」と話したところ、息子が、思わぬ言葉を返してくれたのです。
「下手っぴなんかじゃないよ!そんなこと言っちゃダメだよ」
予想外のひと言に、私は驚いて少し反応が遅れました。
ママイヤ期の頃の息子のイメージで、「ママのせいだ!」と怒られるのかなぁと勝手に予想していたからです。
そんな私を見て心配になったのか、さらに息子は「難しいことなんだからしかたないよ、下手っぴじゃないんだよ」とさらに言葉を続けました。
急な予定変更、娘からの激しい拒否、気になる周りの目など朝からかなりストレスが溜まっていた私。
優しい言葉をかけてくれる息子の前で一気に涙腺崩壊して、「そっか、そうだよね、ありがとう」と言うのが精いっぱいでした。
涙が出たのは息子の言葉の内容にももちろんですが、まさか、「あの」息子からこんな励ましの言葉をもらう日が来るなんて!
という気持ちも大きかったです。
ママイヤ期全盛だった頃。
ワンオペでパパがいないのに、
「ママとお風呂入りたくない!パパがいい!」
「ママの(注いだ)牛乳飲みたくない!パパがいい!」
などとママイヤ期をそこらじゅうで炸裂させていたあの頃の息子。
目の前にいたのはもう、「ママはイヤ!」と言ってばかりのあの頃の幼い男の子ではなく、「下手っぴ」というワードにひそかに込めていた母の自虐を掬いとる思いやりを持つ少年でした。
愛情はあるのに、それを伝えることすら難しかったあの頃。
私が母親じゃなければこんなことにならなかったのだろうかとまで悩んだ、息子との日々。
そんな悩み多き母親の元でも、息子はしっかりと成長してくれていました。
「息子くんからそんなふうに言ってもらえるなんて思ってなかったから、ママびっくりしたし嬉しかった。ありがとう」
と泣きながら私が話したら、「悲しい時以外は泣かなくていいんだよ!」と照れ隠しのように言いながら、私の涙を拭おうとしてくれたのか、笑顔で軽く目潰しをされました。笑
家族の一員として、こんなにも頼もしく育ってくれた息子。
多分、私はこの日のことを一生、忘れることはないと思います。
あの頃の悩んでいた自分に、「大丈夫だよー!息子くんはこんなに頼もしく育ってくれるよ」と全力で伝えてあげたい、そんな気持ちになった出来事でした。