去年の、冬。
「娘ちゃんはクリスマス何が欲しいのかな〜?」
探りを入れる日々を過ごしていた。
「むすめちゃんはこれ!これほしいの!!」
お〜、どれどれ?
アニメの合間に流れる、テレビCMに目を向けた。
おおおおん!?
TV画面の中には子どもに大人気、お世話人形がキラキラの光を放ちながら、鎮座しておられたのである。
何を隠そう、私は文字通り、人の形をした「人形」が得意ではない。
他のオモチャに比べて魂の宿り具合がハンパない。
そんな折、ママ友のお宅にお邪魔する機会があったので相談をしてみた。
「ゴニョゴニョ……というわけなんだけど、どう?みんなは平気?」
ママ友Aさん「あー私は大丈夫!うちにもいるよ!娘の2歳のプレゼントだったよ〜」
ママ友Bさん「私は、一緒だなぁ。怖いんだよね〜」
良かった〜。
私は仲間を見つけて、そっと胸を撫で下ろした。
こんな親は自分だけじゃないかと危惧していたのだ。
そういえばBさんの家のお子さんは3姉妹だけど、お世話人形がない。
その代わりに着せ替え人形が沢山あった。
「着せ替え人形はOKなの?」と聞くと
「万が一、夜中に歩いてても見なかったことに出来るサイズ!!」と言って、グッと親指を立てた。
私は彼女のこういうところが好きだ。
娘の「これほしい!」に、絶句…!?
迫るタイムリミット、母の決心
3歳の移り気に期待をしてみたのだけれども、肝心のクリスマスが近くなっても娘の「お世話人形推し」は変わる様子はなく、むしろ一層思いが強くなっている。
「あした、くりすます?」
「サンタさん、お人形ちゃん、くれる?」
圧倒的期待の眼差しッ……!!
その眼差しにやられた母は、ついに腹を括ることにしたのである。
おもちゃ屋でもらってきたパンフレットを広げ、「どれが欲しいの?」と聞いてみた。
「これとー、これ!」
「はじめてのお世話セット」に加えて「ワンちゃんニャンちゃんお世話セット」も欲しいというではないか。
はじめてのお世話が上手くいくとも限らないのに、犬と猫まで世話しちゃうの!?
「サンタさん、1つしかプレゼントくれないかな~。2つは無理かもな~」と布石を打ち、私は1人の時におもちゃ屋さんへ向かった。
いつもはもっぱらネットショッピング派の私だが、人の形をしたものを迎えるにあたって、自分の目で見て買いたいと思ったのである。
ニガテ意識の”正体”は?
店内に陳列された商品を見て改めて「うーん、人の形だなあ……」と腕組みをする。
そう、人形って「人の形」をしているのである。
娘がすぐに飽きてしまって、裸で放り出されている人形を想像し、肝を冷やす。
あくまで個人的にだけれども、ブロックがそこらへんに転がっているのと、人形が転がっているのだと、ワケが違う。
それに今すぐでないにしろ、娘は成長すれば、いずれこの人形で遊ばなくなる。
でも可燃ごみに捨てるのもどうなのよって、押し入れの奥にスッと追いやられて、それが何年後かにゴロンと出て来て「ギャー!!」となるのもまた不安材料である。
気が付くと私はお世話人形コーナーで20分も立っていた。
そしてスマホを取り出し、検索した。
「人形 処分 どうする」
するとスマホは私の求めていた結果を導き出してくれた。
「ご葬儀屋さんで人形供養をやってくれるところがあります」
心の中で、スタンディングオベーションが出た。
目の前の霧が少しずつ晴れていく感覚。
とどのつまり、私の胸にずっとつかえていたのは、娘の相棒となるであろう“人形“との別れであったらしい。
気を取り直し「はじめてのお世話セット」を小脇に抱え、勇んでレジへと向かった。
「クリスマス、お世話人形にしたよー」
後日、ママ友AさんとBさんにも報告。
すると、すでにお世話人形と暮らしているAさんからこんなアドバイスをもらった。
「こっちのほうが良いかも!と思って髪を切っちゃうと、とんでもないことになるからそこだけは注意してね〜!」
……すでにちょっと考えていて、心の中ではハサミを構えていた私。
あぶない。
こういうとき、仲間ってありがたい。
娘と人形の生活が始まる
クリスマス当日。
冬の娘はスリーパーを着て、愛おしいもっさり感に包まれている。
そのもっさりの塊がお世話人形を抱きしめ、「やった〜うれしいー!」と喜びをジャンプで表現した。
その日から娘は部屋の中を縦横無尽に、相棒と駆け回っている。
ある日は、抱っこ紐を使って前だっこ。
また別の日は「こっち、いくよー」とラグビーボールのように小脇に抱えて。
そしてまた別の日は「あーいそがしい~」と大胆に髪の毛を鷲掴みして移動。(オイオイ)
小さい子が、更に小さい子を抱えるとこんなに尊いのね、と毎日目を細めて眺めている。
選んでよかった、お世話人形。
そして時折、娘と人形とのおしゃべりでこんな声が聞こえてくる。
「そんなのダメにきまってるでしょ!もう!」
(え?)
「なんで、いうこと、きかないの!」
(ん?)
「はいはい、もうねるじかんでーす。はやく、ねたひとが、かちでーす」
いやいや、それ私がよく子ども達に言っちゃうやつ!!
侮りがたし……お世話人形!
そして去年の冬から早1年。
いそいそとおもちゃ屋に、ワンちゃんニャンちゃんを迎えに行く私がおります。
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