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公開 2015年07月14日  

妊娠により引き起こされる病気、妊娠中に気をつけたい血栓症とは?

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妊娠中は母体に様々な変化がおこります。その中でも特に注意したいのが血栓症。血管内に血液の塊が出来てしまう病気なのですが、時に命に関わる重篤な症状を引き起こします。今回は産婦人科医 のきゅーさんが、妊娠中の血栓症について解説します。妊娠中の方はもちろん、そのご家族の方も読んでみてくださいね。


血栓症(深部静脈血栓症)とは?

血液は様々な働きを持っていますが、その1つに血を固める作用があります。

私達が怪我をして出血をしても、自然に血が止まるのはこの作用によるもの。血栓症とは、体の太い血管内の血液の流れが淀んでしまう事により、血栓という血液の塊が出来てしまう病気です。



多くは下肢の血管に出来て、時にふくらはぎの痛みや片側の足が赤く腫れ上がるといった症状が出ますが、無症状の事も多いのです。しかしながらこの血栓が、何かの拍子に飛んでしまうと肺の動脈に血栓が詰まってしまう肺塞栓症(エコノミークラス症候群)という病態を引き起こしてしまう事があります。



死亡率は約15%と高く、さらに発症直後に心停止した症例では死亡率は30%以上となります。そのため肺塞栓症を発症する前に血栓症のリスクを減らす事が重要です。

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妊娠が血栓症のリスクになる?

血栓症のリスクはいくつか知られていて、そのリスクが重なれば重なる程、発症リスクが高くなります。

肥満や喫煙等も大きなリスクとなりますし、実は女性である事や妊娠する事は血栓症のリスクの一つになります。



妊娠初期の、つわりの時期に水分摂取が出来ず脱水になる事で、血液が濃縮してしまうことや、中期以降お腹が張りやすく自宅での安静指示をされた場合等に全く下肢を動かさないでいる事による血流鬱滞は大きなリスク。

さらに腹部の大きな手術は血栓症の最も大きな危険因子であり、帝王切開によるお産になった場合には特に注意が必要です。



女性は妊娠するだけで血栓症のリスクは上昇してしまいますし、妊娠経過によってはよりリスクが高くなってしまいます。そのため肥満や喫煙等、妊娠前に血栓症のリスクとなり得るものは、まえまえから気にかけて改善する事が大切です。

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妊娠中に注意してほしいこと!飛行機と血栓症の関係

肺血栓塞栓症の別名はエコノミークラス症候群です。

飛行機に乗る時に狭い空間に長時間座っている事で、下肢の血流鬱滞が起こり、結果的に血栓が形成され座席から立ち上がった際に肺塞栓症を発症してしまう事が多いのです。



妊娠中の飛行機搭乗は基本的には勧められませんが、やむを得ない場合は血栓症予防のため、十分な水分摂取を行う事と、着席時も下肢を十分に動かし、定期的に座席から立ち上がり歩行する事が重要です。

まとめ

妊娠と血栓症は非常に身近です。血栓症のリスク因子をしっかりと把握し、できれば妊娠前からリスク軽減の努力を積極的に行いましょう。また肺塞栓症の症状についても覚えておき、思い当たる症状があればすぐに救急機関への連絡・受診を行うことが大切です。

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