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公開 2022年06月22日  

一舟のたこ焼きをアツアツのまま食べきる。そんな境界線を超えた日

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熱々のたこ焼きをひとりで食べたあの日、ひとつの大きな境界線をまたいだ気がしたのでした。


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例えば、子どもが初めて自転車に乗れた日だとか。

例えば、子どもが初めて自分の名前を書いた日だとか。

子育てにはいろんな境界線がある。

いろんなあっち側からそっち側に行く瞬間があって、そのたびいろんな感慨がついてくる。

自転車に乗れるようになった子どもは、もう乗れなかった日には戻れない。

あっち側から、こっち側にお引越しをしたのだ。

ひとつの季節が終わった瞬間を何度またいできただろう。


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突然何を言い出すのかと思われそうなのだけど、私はたこ焼きが好きだ。

それもものすごく。

家でつくるたこ焼きももちろんいいのだけど、やっぱりたこ焼きはお店のに限る。

大きくふっくら膨らんだまん丸い愛しいフォルム。

パックを開けた瞬間に立ち上る湯気と一緒に訪れる高揚感。

鼻をくすぐる鰹節の匂いがたまらない。

たこ焼きってなんであんなにおいしいの。


関西に住んでいた頃、私が住んでいた町ではそこら中にたこ焼き屋さんがあって、駅から家に帰るまでのたった10分の間にたこ焼き屋さんが4軒もあった。

いつでもたこ焼きが食べられた。

なのに、今の町に住んでからはどうだろう。

たこ焼き屋さんがショッピングモールのフードコートまで行かないとないのだ。

子連れでショッピングモールに行くのはなかなか骨が折れるし、敷居が高い。

そして何より、たこ焼きはみんなが大好きなのだ。

長女も、長男も、一番下の子だって、みんな大好き。

それはつまり、たこ焼きを一舟、または二舟買っても、私のお口にたこ焼きはなかなか到達しないということでもある。

こんなに好きなのに。


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たこ焼きって熱いから、まずは一個ずつ割りばしで穴をあけて熱気を逃がしてやる。

それぞれ小皿を持たせて、配給して、お祭り気分で付属の爪楊枝を使って食べたがる子ももちろんあるので、小皿を抱えて食べていただく。

ころんと転げ落ちたらソースやマヨネーズがコロコロとあちこちについてティッシュを持ってバタバタすることになる。

慎重に慎重に。


まだ子どもたちの手元がおぼつかない小さい頃は、介助をしているだけで忙しない。

自分のお口にたこ焼きがやってくる頃には、しんと冷え切った食べかけのたこ焼きになっているのが常だった。

長女が産まれてから我が家には長い間、常に未就園児がいて、自分ひとりの時間なんてなくて当たり前だったので、いつかの遠い記憶の中の私が熱々のたこ焼きを一舟丸ごと食べていたことなんてほとんど忘れて暮らしていたのだった。


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※ この記事は2024年09月24日に再公開された記事です。

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