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公開 2023年02月14日  

数百円の風船を「もったいない」と思ってた。あの頃の自分になかった、余裕

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イタリア人パートナーとの結婚を機にイタリアに移住した著者が、イタリアで暮らし続ける中で見つけた“ちょうどいいかげん"な生き方を、かわいらしいイラストと文章でつづったエッセイ、

『いいかげんなイタリア生活 - イタリア在住15年の私が見つけた頑張りすぎない生き方 -』(ワダ シノブ著/ワニブックス)の一部をコノビーでご紹介します。


ケチな私とイタリアのハロウィン


ハロウィンが「仮装した子どもにお菓子をあげる秋のイベント」として、イタリアで認識されるようになったのは、実は最近のことだ。

イタリアにはハロウィンよりもっと大きな仮装イベントとして、2月の「カルネバーレ(カーニバル)」がある。

山車が出たり、パレードが行われたりと、結構な規模で開催されるイベントだ。

中世風の仮面をつけた、ヴェネツィアのカルネバーレの映像を見たことがある人も多いと思う。

そうした伝統があるせいか、イタリアには仮装に抵抗がない人が多い。

カルネバーレはもちろん、子どもたちはイベントに関係なく仮装して歩いている。

大人だってハロウィンに魔女の帽子を被ったり、クリスマスにトナカイのカチューシャをつけたりする人もたくさんいる。

みんなイベントを楽しむのが上手いのだ。

私が初めてハロウィンを体験したのは、十数年前、イタリアの田舎町のアパートに住んでいた頃のことだ。

「仮装して歩きたい!」という子どもたちの希望を叶えるために、スーパー社交的な義妹と一緒に、プリンセスとスーパーヒーローの仮装をした子どもたちを連れて、アパートの中をぐるぐる回ったのだ。

当時、ハロウィンはまだまだ世間に浸透していなかったため、義妹はアパートの人たちがお菓子を準備していないだろうと見越していた。

だから、突然の訪問を詫びる意味も込めて、こちらからお菓子を渡すように準備していったのだ。

近くに住むおじいさんは、突然現れた私たちを見て最初は驚いたけど、「ハロウィンは知っているけど、うちにお菓子はないよ」と言いながら、朝ごはん用のビスケット(開封済み)を持ってきてくれた。

お菓子を交換しながら「なんかちょっと違う気がするけど、これはこれでいいな」と思ったのが、最初のハロウィンの記憶だ。



現在住んでいるトリノに引っ越してからは、二度ほど子どもとその同級生を連れて、お菓子を持ってアパートの中を回った。

二年目にはお菓子を準備して待ってくれている人も多かった。

年々イタリアでもハロウィンは盛んになり、最近では商店街やショッピングモールでもお菓子を配るようになった。

そして、子どもたちは大きくなるにつれてアパートのハロウィンには興味をなくし、保護者付き添いのもと友達とショッピングモールのハロウィンに行くようになった。

もともとイタリアの商店は、ハロウィンに関係なく子どもにやさしい。

普段からカゴに子ども用の飴を入れて用意している店も少なくない。

だから、ハロウィンに子どもがやって来ても、普段は一つしか渡さない飴を少し多めにあげればいいだけなのだ。

こういうイベントのときに感じるのが、イタリアの人たちのちょっとしたお金を使って楽しむことの上手さだ。

義妹が用意したような自分から配るお菓子に、お店に置かれた子どものための飴、100円で買える紙吹雪やフェイスペイント用のクレヨン。

そうした些細なものにお金を払うことに躊躇しないのだ。

一方私はケチで、そういうお金の使い方が下手だし、なんなら無駄だとすら思っていた。

子どもだけでなく、自分に対しても同じようにケチだった。

バールで飲む100円のカフェや一輪の切り花といった、〝ちょっとした幸せ〞を感じられるものに対して、「これは無駄使いなのでは?」という罪悪感を持っていた。

あまり余裕がないという理由ももちろんあったけれど、それだけでなく、いつか「もっといいお金の使い方」をするために、楽しみは我慢すべきという考えが自分に染みついていたのだ。

「いつか」も「もっといいお金の使い方」も何かわからないうちに月日は流れ、いつの間にか子どもは大きくなって風船を欲しがらなくなり、ケチな自分だけが残されたことに気がついた。

「いつか」のために我慢するよりも、数百円の小さな幸せを子どもにも自分にも、たくさんあげていたらよかったのに。

ここ数年、ハロウィンのコスチュームがショーウィンドウに飾られる季節になるとそう思う。

でも、過去を振り返ってもやもやしているだけでは仕方がない。

少しずつでも変えていかないと。

まずは、今年のハロウィンにかぼちゃのクッキーでも買って、「今の私」が幸せを感じてみようかな。


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カフェでお茶を飲むより、自分の家で飲む方が安上がりだ、そんな風に考えたことはありませんか?

実は「カフェでのお茶」は人件費の他、「あの空間を買っている」意味もあるので、自分で淹れるよりも少し割高なのだとか。

お金に対する考え方は人それぞれですが、時々はほんの少し贅沢してみるのも良いかもしれませんね。


書籍には他にも、イタリアの文化、人、食べ物、考え方など、心が軽くなるイタリア生活のエッセンスが、かわいらしいイラストとともにたくさん紹介されています。

ぜひチェックしてくださいね。


(編集:コノビー編集部 空閑香織)


※ この記事は2024年10月14日に再公開された記事です。

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