7月31日、男性の育児休業取得率(以下、育休取得率)に関する2つの調査結果の発表がありました。
「令和4年度雇用均等基本調査」と「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)です。
それぞれの結果を見ていきましょう。
雇用均等基本調査の目的は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態を把握すること。
ニュースでよく扱われる「男性の育休取得率」は、雇用均等基本調査の数値を指しています。
雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は17.13%。
過去最高の数値を記録したものの、政府の目標からはかけ離れている状況です。
2013年には男性の育休取得率が2%台だったことを考えると、この10年で男性の育休取得が進んできたといえます。
しかし、政府が掲げる目標値には遠く及んでいません。
「こども未来戦略方針案」、いわゆる「異次元の少子化対策」では、男性の育休取得率の目標値は以下の通りです。
2025年公務員85%(1週間以上の取得率)、民間 50%
2030 年公務員85%(2週間以上の取得率)、民間 85%
雇用均等基本調査の対象は民間企業ですから、直近の取得率である17.13%は政府が定めた目標値にはほど遠いことがわかります。
雇用均等基本調査で発表された育休取得率は、「いつ時点」のものなのでしょうか。
同調査によると、最新の育休取得率は以下の条件下で割り出されています。
女性:2020年 10 月1日〜2021年9月 30 日までの1年間で在職中に出産した女性のうち、2022年 10 月1日までに育休を開始した者。
男性:2020年 10 月1日〜2021年9月 30 日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、2022年 10 月1日までに育休を開始した者。
2020年10月と調査結果が発表された2023年7月31日とでは社会情勢が異なっています。
この間に、男性の育休をめぐる制度の整備が進んでいることには注意が必要です。
2022年4月には改正育児・介護休業法が施行され、男性従業員への育休制度の周知や育休取得の意向を確認することが事業主に義務づけられました。
前述の雇用均等機会調査の結果には、このような施策の効果を反映しきれていません。
そこで厚生労働省は、従業員1000人超の企業・団体を対象とした調査を実施し、「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)として結果を発表しました。
同調査によると、昨年度における男性の育休等取得率は46.2%で、取得日数の平均は46.5日でした。
さらに2023年4月からは常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育休取得の状況を1年に1回公表することも義務づけられました。
育休取得率の公表義務化で感じたメリットの上位には、「社内の男性育休取得率の増加」、「男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化」、「新卒・中途採用応募人材の増加」などがランクインしました。
参考:
「令和4年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r04.html
「こども未来戦略方針案」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai6/siryou1.pdf
「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/jigyou_ryouritsu/topics/tp100618-1_00002.html