産後パパ育休(出生時育児休業)とは、産後8週間以内に、4週間(28日)を限度として取得できる休業のことです。
出生日(予定日)から取得可能で、申請者の希望に応じて2回に分けて取得できます。
産後パパ育休は、通常の育児休業とは別に取得できる制度として、2022年4月の育児・介護休業法改正に伴って創設されました。
改正前は「パパ休暇」と呼ばれる同様の制度がありましたが、産後パパ育休はパパ休暇よりも柔軟で、取得しやすい制度となっています。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは ?育休との違いやメリットを分かりやすく解説
4,554 View近年、パパが育休を取りやすくするための制度が次々に整えられています。そのうちのひとつが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。産後パパ育休を取得すれば、通常の育休とは別で休業を取得できます。今回の記事では、産後パパ育休の概要やメリット、通常の育休との違いなどについてご紹介します。産後パパ育休について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは ?いつから取得できるのか
参考:厚生労働省「育児・介護休業法改正のポイント」
育休(育児休業)との違い
産後パパ育休と混同されやすい制度が、通常の育休(育児休業)です。
産後パパ育休と育休の違いは、主に以下のとおりです。
上記のように、産後パパ育休と育休では、対象期間や申出期限、休業中の就業可否などが異なります。
それぞれの特性を踏まえて、2つの制度をうまく活用しましょう。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
産後パパ育休(出生時育児休業)のメリット
産後パパ育休には、産後のパパママに嬉しいさまざまなメリットがあります。
ここからは、産後パパ育休のメリットについてご紹介します。
生後8週間以内に、育休を2回に分けて(合計4週間まで)取得できる
産後パパ育休の対象期間は、赤ちゃんの出生日(予定日)から8週間以内の期間です。
この期間内であれば、最長4週間まで2回に分けて取得できます。
もちろん、まとめて4週間取得することも可能です。
ママの職場復帰やご家庭の事情に合わせて、休業期間を柔軟に決められるのは大きなポイントです。
原則、休業の2週間前までに申請すれば利用できる
産後パパ育休は、原則休業の2週間前までに申請すれば利用可能です。
ただし、事業主が雇用環境の整備などに関して、育児・介護休業法で義務付けられている内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとなります。
詳細については、会社に確認しておくと安心です。
なお、出生日が予定日よりも早い場合・遅い場合は、取得可能期間が以下のようになります。
・出生日が予定日よりも早い場合:出生日から予定日の8週間後まで
・出生日が予定日よりも遅い場合:予定日から出生日の8週間後まで
予定日よりも早く赤ちゃんが生まれる場合は、休業を開始しようとする日の1週間前までに、取得期間変更の届け出をする必要があります。
参考:厚生労働省「Ⅱ-2 産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)」
はじめに2回分をまとめて申請できる
産後パパ育休では、休業を2回に分けて取得したい場合、はじめに2回分をまとめて申請できます。
1回ずつ手続きを繰り返す手間が省けるので、育児の時期の負担を軽減することが可能です。
ただし、いったん産後パパ育休に入ってしまうと、2回分割には変更できない点に注意してください。
休業中に条件付きで就業も可能
産後パパ育休は通常の育休と異なり、休業中に条件付きで就業可能です。
休業中に就業する条件は、以下のように定められています。
・就業可能日は休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・休業開始・終了予定日を就業日とする場合、就業可能時間は当該日の所定労働時間数未満
また、産後パパ育休期間中に就業させられる労働者の範囲について、事前に労使協定を締結しておく必要があります。
なお、産後パパ育休期間中に就業して得た賃金額、および出生時育児休業給付金の合計が「休業前賃金日額×休業日数の80%」を超過する場合は、超過した金額が出生時育児休業給付金から減額される点に注意しましょう。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」
一定の要件を満たせば、社会保険料が免除になる
以下の要件を満たしている場合、育児休業期間(産後パパ育休を含む)における、月ごとの月給・賞与にかかる社会保険料が免除になります。
1.その月の末日が育休期間である
2.同一月内で育休を取得(開始・終了)し、その日数が14日以上である
なお、賞与にかかる保険料に関しては、連続して1ヶ月を超える育休を取得した場合にのみ免除されます。
参考:厚生労働省「育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休)には、給付の支給や社会保険料免除があります」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法改正のポイント」
産後パパ育休(出生時育児休業)給付金の支給額
育休開始前の2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上ある方が産後パパ育休を取得した場合、原則として休業開始時点の賃金の67%(180日経過後は50%)の給付を受けられます。
なお、厚生労働省の「こども未来戦略方針」によると、給付金は現行の67%から、賃金の8割程度への引き上げが検討されています。
参考:厚生労働省「育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休)には、給付の支給や社会保険料免除があります」
参考:厚生労働省「こども未来戦略方針」
産後パパ育休(出生時育児休業)の申請方法
産後パパ育休を取得する場合、以下の内容を記載した申請書を会社に提出する必要があります。
・申出年月日
・労働者の氏名
・子どもの氏名、生年月日、労働者との続柄
・産後パパ育休の開始予定日と終了予定日
・ほかに生後8週間未満の子どもがいる場合、その子の氏名、生年月日、労働者との続柄
赤ちゃんが養子の場合は、養子縁組の効力発生日を記載します。
また出産予定日より早く出生するなど、特別な事情によって休業開始日の1週間前に申請する場合は、その旨を記載しましょう。
申出は原則として書面で行う必要があるため、会社ごとに決められた形式の書類を入手してください。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」
産後パパ育休(出生時育児休業)が創設された背景
産後パパ育休が創設された背景には、現代社会の子育てに関するさまざまな問題点があります。
ここからは、産後パパ育休が創設された3つの背景をご紹介します。
問題点1:男性が育児休業を取得しにくい環境
日本で男性の育休取得率が上がらない背景には、男性が育休を取得しにくい環境があります。
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、男性の育休取得率は令和3年度で13.97%とまだまだ高いとはいえません。
男性が育休を取りにくい理由 には「収入を減らしたくない」「職場が育休を取得しにくい雰囲気である」「会社や上司に育休への理解が足りない」などがあります。
育児・介護休業法の改正によって、産後パパ育休の申出がスムーズに行われるよう、研修や相談窓口の設置などが企業側に義務付けられました。
男性が育休を取得しやすい環境を企業側が整えることで、育休取得率の上昇が期待されます。
参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査 事業所調査結果概要」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
問題点2:女性が就業継続しにくい環境
産後パパ育休が創設された背景には、女性が就業継続しにくい環境も影響しています。出産を機にした女性の退職率は、2015~2019年で23.6%です。
厚生労働省の調査によると、女性が出産を機に退職する理由は「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」との意見が41.5%と半数に迫っています。
さらに理由を具体的に挙げると、「配偶者・パートナーの協力が得られなかった、配偶者・パートナーが辞めることを希望した」との回答が25.9%に上りました。
このようにパパが育児に参加するかどうかは、ママの職場復帰に大きく影響しています。
産後パパ育休によって男性の育休取得が進めば、女性の離職防止や男女における雇用格差の改善につながることが期待できるでしょう。
参考:国立社会保障・人口問題研究所「第 16 回出生動向基本調査」
参考:厚生労働省「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
問題点3:少子化の進行
産後パパ育休創設の背景には、近年深刻化する少子化も影響しています。
少子化のスピードはますます加速しており、2019年には90万人を割り込みました。
産後パパ育休の創設によって男性の育休取得率が上がり、女性の退職率が改善されれば、両親が働きながら子育てしやすい社会に近づけるでしょう。
子育てしやすい環境を国全体で整えることで、少子化に歯止めをかけることが期待されています。
参考:厚生労働省「図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移」
参考:厚生労働省「こども未来戦略方針」
まとめ
今回は、産後パパ育休の概要やメリット、通常の育休との違いなどについてご紹介しました。
産後パパ育休は、ご家庭の状況に合わせて男性が柔軟に育休を取得できるよう、2022年に創設されました。
通常の育休と産後パパ育休をうまく活用し、パパママで協力して育児を行いましょう。
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