教科書を開き、問題を解き、正解を求め、回答をする。
これが私の中の、学校での「勉強」のイメージです。最近ではだいぶ授業のありかたなども変わってきたようですが、こうした「勉強」のカタチが全くなくなったとはいえないのが現状。
しかし、大人になってみると、多くの人が、社会には教科書も、正解がある問題も、そしてお決まりの必勝解法も、ほとんど存在しないということに気づきます。
そんな不明確な社会の中では、与えられた知識を覚えたり、正解のある問題を解くことのできる「勉強する力」よりも、自分で考え行動する基礎となる「学ぶ力」を育んで欲しい。そう考えるお父さんやお母さんも多いのではないでしょうか。私もそう考える親のひとりでした。
ではホンモノの「学ぶ力」とはなんなのだろう。
そう考えていたときに出会ったのが、「経験学習の4つのステップ」の話でした。この4つのステップは子育てのみならず、私の考え方にも大きな影響を与えたので、ぜひみなさんにも知ってもらえたらと思います。
「勉強する力」よりも、一生使えるホンモノの「学ぶ力」を育む~学びを加速させる4つのステップとは~
14,570 View不明確な社会のなかでは、答えのある問題を解く「勉強する力」よりも、自分で考え行動する基礎となる「学ぶ力」を育んで欲しい。そう考えるお父さん、お母さんに知ってほしい「経験学習の4つのステップ」をお伝えします。
学校で必要な「勉強する力」と社会で必要な「学ぶ力」
経験学習の4つのステップ
「経験学習の4つのステップ」を提唱したのは、組織行動学者のデービッド・コルブ。
まずコルブは、決まった答えを導くことを重視する「勉強する力」と、自分なりの答えを導くプロセスを重視する「学ぶ力」を区別しています。
学校においては、答えが決まった問題を解く「勉強する力」が求められますが、社会においては答えがない中で自分なりの答えを導く「学ぶ力」が重要になってきます。
コルブによれば、そんな「学ぶ力」は「体験→省察→概念化→行動」という4つのステップに分けることができるとのこと。
少し難しいので、日常生活においてこの「学ぶ力の4つのステップ」とはどういうことなのかを考えてみたいと思います。例えば、お子さんが公園に蝉を捕りに行き、次のように考えたとします。
蝉を捕りに公園に行った(体験)
蝉がいっぱいいるのは、ひまわり公園よりチューリップ公園なんだなあ(省察)
チューリップ公園は木が多いから、「木が多い場所=蝉がいっぱいいる」のかな(概念化)
蝉をいっぱい捕まえたいから、もっと木が多い公園に行ってみよう(行動)
こう考えて、木の多い公園に行った子どもがたくさんの蝉を捕まえることができれば、自分の考えた「木が多い場所=蝉がいっぱいいる」という(概念)が正しかったいたことを学ぶことができますし、そうでなければ、もう一度、見つからなかったという(体験)を元に(省察)(概念化)(行動)を繰り返して、自分なりの答えを探していきます。
これが、コルブのいう「経験学習の4つのステップ」です。
ただしい答えを覚えたり、決められた正解を求めたりする「勉強する力」とは異なり、自分の体験から、自らの頭で考えて答えを導き出す「学ぶ力」がどのようなものかがよく分かるかと思います。
自分の経験から言っても、大人になっても体験を振り返り、教訓として次の行動につなげていけるというのは、とても重要なことだと思います。
子どもの「学ぶ力」を加速させる声かけはシンプルに
最初から子どもがこのように考えるのは難しいもの。では、子どもの「学ぶ力」を育むために親はどのような声かけをすればよいのでしょうか?
私なりの声かけは、
「どうだった?」
「なんでだろう?」
「やってみたら」
という、いたってシンプルな3つ。
省察、概念化、行動というと難しく聞こえますが、なんらかの体験をした子どもに対して、
「どうだった?」と体験を振り返り、
「なんでだろう」と一緒に考える機会を持ち、
「やってみたら」と次に向けて、肩をそっと押してあげる
「勉強」ではないので、親がハンドルを握って「正しい答え」を教えてあげる必要はないのだと思います。重要なのは、このステップを子どもが自然と踏むための「学ぶ力」を身につけるサポートをすること、そう私は考えています。
子どもの発想力は宝箱ですから、「どうだった?」にも「なんでだろう?」にも、大人が思いもよらない答えがいっぱいつまっています。
「こっちの公園のほうが暖かいから!」「こっちの公園はいいにおいがする」「友達がみんな取りにいくからあっちの公園は蝉が少ないんだよ」
それこそ、「答え」は子どもの数だけあるからこそ、問いかけをしたほうも楽しみになる。そんな学びを親も一緒に楽しんでいきたいと思います。
「勉強」していなくても、子どもは「学んでいる」
でも…この問いかけを子どもたちにしたからといって、いつでも4つのステップを踏めるわけではない、というのはお父さんやお母さんなら経験上分かるかと思います。
それでも、私はいいなと思っています。なぜなら、この「学ぶ力」の話で私が1番学んだのは、
「こうすれば我が子は賢くなる」
という必勝教育法なんかではなくて、
子どもは「勉強」してなくても、「学んでいる」のだ
という気づきだったから。
実は私は、この「経験学習の4つのステップ」を知るまで、「勉強しなさい」と言いがちなお母さんでした。身に覚えのある方も多いかもしれませんが、これは言う親も、聞く子どもも苦しいもの。
その裏には、学習とは机に座ってやるものだ、という思い込みが私自身にあったからなのだと思います。でも、「勉強」と「学び」の違いやこのステップの話を聞くことで、自分の正しいと思っている「勉強」を押しつけるのではなく、息子や娘なりの「学び」を尊重する姿勢を持ちたいと考えられるようになりました。
遊んでいたって、何をしていたって、子どもなりに日々色々「学んで」いるんだ
こう考えることで、自分自身の気持ちが楽になると同時に、子どもたちも「自分で考える」ことの楽しさを少しずつ分かってきてくれたように思います。
もちろん「勉強」も知らない世界を見せてくれる大切なもの。でも、それだけにとらわれず、多くの「学び」の世界に子どもたちを連れて行ってあげたいなと思います。
「勉強しなさい」とついつい言いがちなお父さん、お母さん。ぜひ一度、子どもたちの「学び」に目を向けてみてはいかがでしょうか。
※コルブは、「勉強する力」「学ぶ力」という表現は用いていませんが、分かりやすくするためにそのように表現させていただきました。
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