いま話題の「デュアルライフ」は二地域居住とも呼ばれる、新しいライフスタイルのこと。詳細な言葉の定義は特にないのですが、一般には、「都市と農山漁村の二つの地域を行き来する暮らし方」と言われています。(詳しくは、前回の記事をご参照ください)
母親の役割は、そばに「いる」ことだけではない~今話題の“デュアルライフ”のメリット・デメリットとは~
2,900 View前回の記事では、東京で仕事をしながら長野で子どもたちと暮らす、我が家の”デュアルライフ”のスタイルをご紹介しました。今回は、デュアルライフのメリット・デメリットについて考えてみます。
デュアルライフって、どんな暮らし?
わたしの場合は、仕事は東京都中央区、住まいは長野県伊那市という、道のりで約250km、4時間ほど離れた場所を移動してのデュアルライフを送っています。
デュアルライフの子育ては「ママ不在」で、大丈夫?
デュアルライフをスタートして約5ヶ月。
私の場合は、1週間のうち2~3日を東京に滞在し、残りの日数は家族が暮らす長野県伊那市で過ごしています。東京にいる間は、ホテルやAirbnb、友人の家などに宿泊しています。
週の3分の1程度、わたしが家を空けることになるため、子どもをどう育てているのか、といった質問をいただくこともありますが、実際にやってみるとあまり影響がないというのが本当のところ。
子どもたちが「ぜんぜん大丈夫だよ!」と言われるのに、ちょっと寂しさもありますが、でも、例えばパパが週のうち2~3日が地方出張するようなご家庭を思い浮かべていただければ、分かりやすいですよね。
母親が週に2~3日いないことそのものが、大きな問題になることはあまりなく、
・おいしくて元気になれる食事をつくってくれる人
・お風呂に入れてきれいな寝床を準備してくれる人
・学校や園の支度と「いってらっしゃい」を笑顔でしてくれる人
・「おかえり」と言って、その日の話に耳を傾けてくれる人
・間違えたら叱り、よくできたら褒めてくれる人
こうして子どもたちに愛情を持って接してくれる親なり祖父母なりが1人いれば、子どもはあまり不自由なく過ごせるのではないかと思います。
例えば、母親が毎日いても、不機嫌に怒ってばかりいたり、仕事やゲームばかりしていては、子どもはあまり楽しくないはず。母親の役割は「いる」ことがすべてではないのかもしれません。
我が家の場合は、わたしがいてもいなくても、毎日の生活の部分を、夫、そして最近同居を始めた父も一緒に力を貸してくれ、みんなで子どもたちを笑顔で元気に育てようとしています。
世界中の宿泊施設が予約できるサイト「Airbnb」。都内での滞在にぴったり
デュアルライフはお金がかる?
先日、「実践者が語るデュアルライフの本音」というイベントに登壇させていただきました。登壇者は、わたしともう1名、軽井沢に住み・新幹線で毎日都内に通う櫻井さんという方でした。
このイベントの中でも、「デュアルライフって、お金がかかるの?」といった質問がでましたが、櫻井さんもわたしも答えは「どちらとも言えない」でした。
我が家の場合は
都内で暮らしていた時よりもかかっているコストは
+都内へ通う往復の交通費
+都内での宿泊費
+長野で買った車代(都内では車を持っていませんでした)
+ガソリン代や保険代など、車の関連費用
です。反対に下がったコストは
-家賃(または住宅ローン)
-週末のレジャー費用
(公園や川遊びばかりしているので、お金がかかりません!)
-食費(食材が安く、野菜は新鮮で長持ち)
おおまかにこのような増減です。
これらを足し引きすると、おおむねトントン。デュアルライフをスタートする前と比べても1ヶ月にかかるコストはほぼ変わっていません。
イベントでご一緒させていただいた櫻井さんのケースは、”少し余分にかかっているお金はあるものの、トータルで考えて何を価値と感じるかが重要”とおっしゃっていました。
たしかに、コストが多少増えても得られるものが上回っていれば、全体の満足度は高いはずです。
ちなみに、我が家は都内のマンションから→長野に現在一軒家を建てており、1ヶ月当たりにかかる家賃はかなり下がりました。が、広さは2.5倍くらいになりました。一概に金銭の増減だけでは測れないものも多いような気がします。
towerイベント「都市で働き、地方に住む。実践者が語る、デュアルライフの本音」
デュアルライフは、ここがしんどい!
広々とした豊かな土地で子育てをし、仕事は都会でいきいきと!
お金もさほどかからず、子育てにはまったく問題なし。
と、デュアルライフは良いことづくめのようですが、実際はデュアルライフがリスクになることや、大変さもあるように思います。
先述のイベント登壇者の櫻井さんは、「災害時に家族と離れた場所にいるリスク」を指摘なさっていました。たしかに、都内事務所と長野県伊那市まで250kmほどあり、途中には高い山もそびえています。
とても徒歩で帰れるような場所ではありません。
また、かなりパワーを要する部分もあります。デュアルライフをスタートする前には、現地の調査や引越しの手配、家族での話し合い、仕事先への説明と理解。
いざ生活が始まった後も、スケジュールをコントロールしたり、宿泊やチケットの手配(とくにGWやお盆、年末年始の繁忙期の混雑)、都内と伊那市を行ったり来たりしているので、忘れ物もけっこうしました。
あまりにも忘れ物をするのでコスメなどは2つずつ購入し、スペアを都内に置くようにする、など暮らしが安定するまでの調整にも苦労しました。
子育てにおいても、ベーシックなことは問題ないのですが、子どもの行事などのイレギュラーな事態には少々弱い面があります。運動会など、年間で決まっているものはあらかじめスケジュールしておけるものの、1ヶ月前にお便りが届く「保護者会」などが都内にいる日程とぶつかることもしばしば。
夫となんとか交代しつつこなしています。
このように、仕事・生活・身の回りのこと・子育てと、あらゆる面で大変さや工夫・調整が必要な部分は多々あります。
親が特別教えなくても、大切なことを学び続けられる環境
多少の苦労もありつつも、やっぱり思い切ってやってみてよかったと思う、デュアルライフ。
引っ越してきた当時は乾いた土だった田んぼに、水が入り、苗が植えられ、日差しとともにグングンと稲の背丈が大きくなってカエルが鳴き始め、先週あたりから稲の花が咲き始めました。
秋になれば、稲は黄金色になって穂を垂らし、バッタやイナゴが飛び始めることでしょう。
親が特別何かを教えてなくても、散歩や虫取りをしながら、四季の変化や食べ物の成り立ち、命のつながりを子どもたちが暮らしの中で見ていてくれることが、いまはなによりうれしいです。
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