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公開 2024年08月15日  

あれ?私はいつから、「公園に行かない休日」を1人で過ごすようになったのだろう

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コノビー編集部の選りすぐり!何度でも読みたい、名作体験談。

今回はコノビーで連載されている、ニシハラハコさんの名作を紹介!いつの間にか手がかからなくなった我が子との休日の風景を描いたエピソードです。

初回公開はこちらです。
https://mama.smt.docomo.ne.jp/conobie/article/27708


日曜日。今朝は8時に起こされた。

「お腹すいた」

私はのそのそ起き上がり、納豆ご飯とバナナの朝食を用意した。

娘は、動画サイトで好きな番組を見ながらそれらを食べた。

そういえば、私の友人は子どもの頃、ご飯を食べるときにテレビは見ちゃいけなかったと言っていたのを思い出す。

それを考えると、我が家はゆるゆるだな。

動画サイトを見ながら朝ごはんを食べている娘を横目に、私は自分の分のコーヒーを淹れ、スマホをいじりながらそれを飲んでいる。

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我が家は食育は若干あきらめてしまっていて、スタンスが「食えりゃいい」に近づいてきている。

申し訳ないな、という気持ちもありつつ、家族仲はいいので、そのアドバンテージで補ってくれという気持ちもありつつ。

全部理想通りの育児は、無理な話だ。どこかしらは抜かなければ、核家族でやっていけない。

……と、自分に言い訳している。


さて、今日の仕事は、何をしようかな?

コノビーの記事をそろそろ書かないといけないし、週明けにはネームも上げたい(ネームというのは、漫画のラフのようなものだ)。

連載中の漫画もあるし、新しく作りたい漫画もある。

何から手をつけようか。


私の仕事は、大きく二種類に分けることができる。

考える作業と、手を動かす作業。

ネームは考える作業で、実際に漫画を描くのは手を動かす作業。

手を動かす作業になると、画材が色々必要なので家でやるしかないが、考える作業はどこでもできる。

というより、どこか集中できる場所でやりたい。


「午前中、ちょっと出ていい?」

後から起きてきた夫に聞くと

「どうぞ」

とのこと。

私は、今日は外で考える作業をしようと決めた。


近所の喫茶店は、8時半から開いている。

私の書斎である。違うけど、書斎のように使っている。

コーヒー1杯390円。

それで、昼の混み合う時間の少し手前まで粘る。


私はノートとタブレットを出し、仕事を始める。

考える作業は、喫茶店でやるとすこぶるはかどるのだ。

家でやると、つい寝てしまう。

例えば、ネームのように頭の中でキャラクターを動かしてどんなことをしゃべらせよう?と考えていると、それに集中すればするほど、うとうとと眠たくなる。

思うに、夢を見ている状態に近いんだろう。

漫画の物語を深く想像すればするほど、夢を見ているような気分になって、どこかの一線を越えるとストンと落ちてしまう。

それが、喫茶店では寝ないでいられる。

外出中の緊張感が、私を睡魔から守ってくれているのかもしれない。


この時間の店内は、私と同じように黙々と仕事をしている人が多い。

みんな何やってるのかな。

もしかして、私と同じように作家業をやっている人もいるかもしれない。

でも、もちろんそんなことはお構いなしに、みんなそれぞれ自分の世界に没頭している。


なんとなく、その感じも心地よいと思う。

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しばらく仕事に没頭した。

11時を過ぎ、そろそろ帰ることにした。

店を出て、夫に電話する。

「お昼どうする?」

「パスタならできるよ」

「じゃあ、何も買ってこなくていいか」


そのまま帰宅する。

「ただいま」

と家に帰ると、夫はパソコンを見て何か仕事していて、娘はタブレットで遊んでいた。

2人とも「おかえり」と言ったきり、そのまま自分の世界に没頭している。


私は、手を洗ってから仕事部屋に行き、さっきの仕事の続きができるよう、リュックから荷物を出す。

ふうと一息。

またやるぞ、と仕事に励む。


しばらくすると、台所で夫がお昼の準備をしているらしい音が聞こえてきた。

あと30分くらいかな?頑張って集中しよう。


時々娘が「お母さん、見てみてー」と、タブレットで描いた絵を見せに来る。

「おお、かわいく描けたねー」

とひとこと言うと、満足そうにすぐにまたリビングへ戻っていく。


私は、また仕事に戻る。


そうしているうちに30分くらい経って、

「パスタできましたよ」

と、夫に呼ばれる。

カブとズッキーニとパプリカの、色鮮やかなパスタだった。

部屋中ニンニクのいい香りが立ち込めている。

「美味しそう」

パプリカの苦手な娘は、レトルトのボロネーゼだ。

娘はまた動画サイトを見ながら食べると言って、別のテーブルに持って行ってしまった。

私は夫と向かい合わせに座り、みんなで

「いただきます」

と言って食べ始める。

野菜の旨みがじんわり広がる、美味しいパスタだ。


娘が

「お茶忘れてた」

とコップを出し、お茶を注いでまた自分の席に戻って行った。

私は、食べながらそれを見ていた。



……あれ?

なんだろう、この休日は……


不思議な感覚に陥って、食べる手を止めた。

いつの間にこんな感じになってたんだっけ?

ちょっと前まではこんな感じじゃなかった。

つい、ほんの最近までだ。


金曜日の夜には、夫と2人で「明日はどうする?」と作戦会議をしていた。

子どもが一日家にいるというのは、大変なエネルギーを使うことだった。

家の中では持て余してしまうので、たいてい近所の公園に行く。

テントも持って行って、お昼も近くのコンビニで買い、1日を公園で過ごした。

なんなら、友達家族も誘った。

電車に乗ってちょっと大きめの公園に行ったりもした。

友達がいる時は、子ども同士で遊んでくれるのでちょっと楽だったが、気づいたらケンカしていたりするので、目は離せなかった。

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最近、私は公園に行っていない。

あんなに休みの度に過ごした公園に、パタリと行かなくなっていた。

そうか、もう娘は1人で公園に行っている。

休みの日も、大人が何か計画してあげなくても、1人で自分の時間を楽しんでいる。

それを私も当たり前のように受け止めて、午前中は1人で喫茶店に行ってしまった。


昔は夫にワンオペ育児を強いて、1人仕事することを、もう少し心苦しく感じていたような気がする。

夫がワンオペで頑張ってくれている時間を無駄にできないぞ、という気持ちで、意気込んで仕事していた。

それが今や、フラっと喫茶店に行き、フラっと帰ってきて、夫も娘もそれをフラっと受け流している。

夫は?

いつからパプリカやズッキーニを使うようになったのだろう?

というか、いつから夫がお昼を作るのが当たり前になったのだろう?

昔は、確かに私が家の食材を管理していて、毎食の心配をしていたのだ。

それが、私の仕事が忙しくなって、

「ちょっとこの時間仕事させて」

と言って時間をもらっているうちに、それが当たり前になった。

時間のある夫の方が、食材を管理するようになっていった。

それを私もことさら感謝もせずに、「美味しい〜、ご馳走様〜」と、当たり前のように受け止めている。


今はもう、娘のお茶を注いであげなくてもいいし、お昼を食べながら晩ごはんの献立に1人で悩まなくてもいい。

私はいつの間にか、家事育児よりも仕事のウエイトが大きくなって、休みの日も当然のように仕事をしている。

家族もそれを当たり前のように受け入れてくれている。

少し前までは、全然当たり前ではなかったのだ。


こんな風に、自然と家族のスタイルは変わっていくのか。

子どもが育っていくって、こんな感じなんだな。


家計を気にしながら毎日料理していた日々も、公園で1日家族みんなで過ごしていた日々も、懐かしく愛おしい。

そう思いながら、それぞれの時間を過ごす家族を眺めている「今日」という日のことも、いつか懐かしく思うのだろう。

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