いろいろな所で絵本を紹介したり読ませていただく仕事をしていますが、小学生に向けて絵本を読む機会があると、学年が上がるほど、読む前にこんな質問をさせていただいています。
「絵本は、読んでいますか?」と。
すると、手が上がるのは、ほんのわずかであることが多いです。
でも、改めて「絵本は、好きでしたか?」と尋ねます。
すると、「あ、好きだった!」と、思い出したようにたくさんの手が上がります。
「好きでしたか?」・・・この質問をすると、懐かしい時を思い返し、表情がちょっと柔らかくなるようにも見え、それが、やさしいうれしい記憶を辿っているように、受け取れるのです。
私は、それが見たくて、この質問をしているのかもしれません。
絵本の力~子どもと育む絵本コミュニケーションについて~
3,435 View児童館、学校、Cafeやイベント、・・・etc、いろんな場所で、子どものために、ときには大人のために、絵本を読んだり、紹介したりする「絵本プレゼンター」としての活動の中で、絵本を届けるために大事にしていることをお伝えします。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11038020112絵本は好き「でした」か?
中学生の職業体験
ある児童館に、絵本の読み聞かせに訪れたときのことです。
その日は、児童館に中学生が職業体験にきていました。中学1年生、3人の男の子たち。せっかくですので、彼らに絵本を読んでもらうことにしました。中学生たちは、普段絵本なんてもちろん読んでいなくて、気恥ずかしそうに絵本を選んでいました。小さい子達のためにどんな絵本を読んだらいいのか悩みながら、それぞれに絵本を決めました。
本番までの短い時間で練習をし、少しだけアドバイスをしました。そして、「大事なのは、この本を選んだ理由。たのしいな、ここ好きだな、って思ったことをみんなに伝えられたらいいよね。」と話しました。
いよいよ本番
あっという間に本番です。
彼らが絵本を読んでくれるのを聴いていて、気づいたことがありました。
彼ら自身が選んだその絵本が、それぞれにとても似合うなぁということです。作品を伝えるというよりも、その子らしさ、個性が絵本から伝わります。元気溌剌に『りんごです』『いちごです』を読んでくれた陽気な子からは元気をもらい、まじめで優しそうな子が読んでくれた『ぐりとぐらのいちねんかん』では、素朴な世界が広がり、物静かで繊細な印象の子が読む『あのひのクジラ』は、主人公がまるで彼自身のようで、グッときました。素直で素朴で繊細なものが届くのは、彼らが純粋だからだろうか、飾らないからかなぁ。・・・そんなことを思いながら聴いていました。
授業で教科書を読むように「読まされてまーす」的になるのは、職業体験だとはいえ寂しいなと思ってたのですが、そうではありませんでした。楽しんで読んでくれているのがわかりました。
手持ちのCDで、急遽BGMもつけてみました。これは私が普段絵本を読むときに使う手法です。
『ぐりとぐら・・・』のとき、作品の終わりと、曲の終わりが、きれいに合いました。その瞬間、『りんごです』を読んでくれた子が、うれしそうに私の方を振り向きました。そして、一緒にガッツポーズ!たまらなくうれしい瞬間でした。
絵本を読んでよかった
終わってから、絵本を読んでみてどうだった?と尋ねたら、すぐ答えが返ってきました。
「読んでたら、子どもたちが走ってきてくれたり、お母さんたちが笑ってくれたりして、楽しくなってきました。読んでよかったと思いました。」
「自分の好きだった絵本を読んだのだけど、みんなが自分の好きな絵本を聴いてくれてるというのがうれしかった」
「教科書を読むより、・・・・絵本を読むほうが方がずっとたのしかった」
この感想に、今日読んでもらってよかったと心から思いました。
そして、私が帰るとき、「あの、、、、これからも、がんばってください!」と、三人が頭を下げてくれました。まさかの言葉に戸惑いながらも、うれしくて感動してしまいました。この職業体験で、大事なものをもらったのは、私のほうでした。
絵本コミュニケーションとは
みなさんご存知の通り、絵本はいいものです。
でもそれは、感受性や、想像力、国語力といったものを育てるというだけではなくて、絵本を通して、心を通じ合わせたコミュニケーションが生まるものという意味で、大切なものだと思うのです。絵本というのは、内容だけではないのです。本を通して「読む人」が表れるのです。
子どもに向けて絵本を読むとき、その子は読んでくれるその人をたっぷりと感じているのではないでしょうか。そして、読み手にとっては、伝えたい思いを届ける方法でもある、だからこそ、心が繋がったような感覚を得られるのではないでしょうか。
絵本が心を繋ぐ「絵本コミュニケーション」
これが、私が絵本を通して伝えていきたいことです。絵本が子どものためだけでなく、お母さんもその作品を楽しんでいただきたいなぁと思います。それは、結果として、子どものためにもなるのだと思います。これからもそんな思いを込めて、絵本をご紹介させていただこうと思っています。
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つん
2
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