「不思議の国のアリス症候群」を乗り越えた長女。そのキッカケは・・?のタイトル画像
公開 2015年10月08日  

「不思議の国のアリス症候群」を乗り越えた長女。そのキッカケは・・?

85,955 View

長女が幼少期におばけが見えると壁を怖がる奇妙な症状がみられ、それが「不思議の国のアリス症候群」だとわかりました。症状の正体を知ってからそれを克服するまでの長女と私達親子のお話です。


娘が不思議の国のアリス症候群だと分かったとき

前回の記事で、わが家の長女の不思議の国のアリス症候群について書かせていただきました。

娘が「不思議の国のアリス症候群」だと分かった時、私と主人は「だから彼女は天才なんだ」と思いました。他の人が持っていない才能を持っているからこその症状なのだと思ったのです。

実は彼女は小さいころからずっと絵を描くことが好きで寝ても覚めても絵を描いているような子でした。親ばかな発言ですが私たちはずっと独創的で面白い彼女の絵を見て天才だと思っていました。だから不思議の国のアリス症候群のような奇妙な症状を持ったことで、その彼女の独創性がさらに磨かれたような気になったのです。

本人がその症状と現実を受け止めることの難しさ

不思議の国のアリス症候群について調べていくと社会生活の中で(子どもであれば学校生活の中で)症状が起きてしまう人も多いようです。しかし娘は夜寝る前に自宅で発症するケースが多いことが特徴的でした。

夜寝る前という状況が更に症状に恐怖心を与えていました。症状が起きているときはパニックになっていて私たちの話は何も耳に入っていかない状態ですので、親としては対処に困ってしまいました。まだ小さい娘が自分の症状を冷静に受け止めることはとても難しかったのです。

大人の私だって、彼女が不思議の国のアリス症候群だと分かるまでは「この子にはお化けが見えている」と信じ込んでいましたし、壁を見て「こーなーいーでぇぇ!!」と泣き叫ぶ娘を見て、私には見えないけど確かにそこにお化けがいるのだと、とにかく不安で一緒になってパニックになりそうな夜が多かったのです。

症状の正体がわかった後は、冷静に考えることが出来る大人の私たちはその恐怖心を乗り越えましたが、娘にとっては相変わらずの不安の種で、その症状が出ることをずっと怖がっていました。

主人はずっと「怖がらないで、その症状を楽しんでみたら?」と提案していました。「壁が遠くにいくことも、ママの顔が大きく見えることも、同じ場所にいても他の人には体験できない。自分だけが体験出来ることだから、その状況を客観視して楽しんでみてはどうか」という提案でしたが、「あんな状況の時にそんなことはできない」と娘には一蹴されていました。

ある日の夜の、たったひとつのきっかけ

ある日、また就寝前に娘が怖がり出しました。
その時は「たばこが怖い」と言い続けていました。「たばこが大きい」「たばこが怖い」と。

「不思議の国のアリス症候群」を乗り越えた長女。そのキッカケは・・?の画像1

わが家は私も主人もたばこを吸わないので、何でたばこがあるように見えたのかはわかりません。しかも巨大化したたばこが見えていたようです。あまりに奇妙な娘の状況を、主人が携帯電話で撮影しだしました。撮影した時間は3分くらいだったかと思います。「怖い怖い」と怖がる娘とそれに対応する私を撮影し、彼女にその症状を客観視させてみようと試みたんです。

何でもない、いつも通りの日常で、いつも通りの家で、いつも通りの家族の中で、ひたすら怖がる彼女を撮影したその動画を、翌朝本人に見せてみました。

その動画を見た娘は、ケラケラケラケラ、ひたすら笑ったのです。客観視した時の奇妙な自分の姿に、症状に襲われている時の恐怖が消えたような感覚でした。娘は自分の姿を何度も再生して、ずっと笑って見ていました。

「不思議の国のアリス症候群」を乗り越えた長女。そのキッカケは・・?の画像2

その後も、症状が出ることは何度かありましたが、少しずつ症状も軽くなり、そして頻度も減っていきました。

私は動画を見せたその行動が大きなきっかけだったと思っています。自分自身を受け止めてあげることが今回、娘の不安を取り除くことに一番の効果があったのだと思います。怖いことや不安なこと、苦痛なことから目を逸らさずにむしろその状況と向き合うことが彼女の中で大きな成長を見せたのだと感じています。

治すのではなく、受け止めること

何度か記事に書かせていただいているように、わが家は末っ子も場面緘黙症という症状があります。

末っ子の症状の時も、長女の時も、周りから一番良く言われた言葉は、「治るといいね」「治してあげたいね」でした。「いいお医者さん連れてって治してあげなさい」とか「きっと良くなるよ」とか本当によく言われました。

私たち夫婦にとって、長女の不思議の国のアリス症候群という症状も、末っ子の場面緘黙症という症状も、悪いことだとどうしても思えません。そこが長所にさえ見えます。 だから「治す」とか「良くなる」とかいうワードにはずっと違和感がありました。

長女も末っ子も、本人がその症状を嫌でどうにかしたいと思っているなら、親としてそこは何が何でも、何をしてでも協力しようと思うのですが、周りが「それは悪い症状だから」とか「普通じゃない」と思って無理やり治そうとすることではないと思うのです。

もしこの記事を読んでいる方がお子さんのことで、うちの子達と症状は違えど悩むポイントがあったとしたら、その子自身を受け止めてあげてほしいなと思います。「この症状があるこの子は、本来のこの子に非ず。」と、いま目の前にいるお子さんの症状を否定しないであげてほしいなと思っています。

もちろん、小児メンタルなどで受診して今後の対策を考えることはとても大切なことだと思いますが、まずは自分を受け止めることから、その不安や苦痛を乗り越えることがスタートすると思うのです。

Share!