「自分なりの子育てをつくる場所」子どもとお母さんの両方が主役のおやこ保育園、その魅力とは?
8,188 Viewこどもみらい探求社が主宰するおやこ保育園。通常の保育園とは違い、親子で通うスタイルのプログラムを提供している独自のスタイルを確立しています。気になるおやこ保育園の一日に、密着取材してみました。
親と子どもが共に過ごせるおやこ保育園
普通の保育園は、子どもを預ける場所。
でもおやこ保育園は、少し変わったスタイルをとっています。
朝9時45分。ベビーカーを押したお母さんたちが、続々と集まってきました。
子どもを降ろすと、自分も靴を脱ぎ、子どもと遊んだり、他のお母さんたちと談笑したり。
ここでは、お母さんたちは、帰らないのです。
おやこ保育園は、こどもみらい探求社の小笠原舞さんと小竹めぐみさんが主宰する連続型の親子向けプログラム。実際に保育園を開設しているのではなく、全8回のレッスンを1クールとして通うスタイルをとっています。月2回の頻度で通っていくと、最後にはちゃんと卒園式が用意されているとか。
この日は乳幼児〜2歳までの子どもたちとそのお母さんたち、全部で9組程の親子が参加されていました。
巣鴨駅の近くのシェアオフィルの地下のジムで開催されているにも関わらず、過去には千葉県や神奈川県の逗子からわざわざ来ている方も。
なぜ、そこまでして親子が集まってくるのでしょうか?
不思議な魅力のあるおやこ保育園に、一日密着取材しました。
朝の会は、気持ちのシェアから
朝の会では1冊絵本を読みます。この日は色遊びのプログラムがあるので『いろ いきてる!』(福音館書店)を、共同主宰の一人である、「舞ちゃん先生」こと小笠原舞さんが読んでくれました。
読み聞かせが終わると、今度はお母さんたちは3人一組になって今の気持ちをシェアします。
「今朝バスで子どもがボタンを押して遊び始めちゃって…。周囲の目線がきつかった〜!」
「うちの子、すぐにバギーから降りたがってしまって、車内でギャーギャー騒がれてほんとに疲れちゃった…。」
「今日は目覚めがよくて、掃除も洗濯もできたから、気持ちは割りとすっきりしているかも。」
「昨日夜泣きがひどくて…。ぶっちゃけ今めちゃくちゃ眠いです。」
などなど。
自分がどんな気持ちでどんな状態にあるのかを振り返り、他人に共有してしまうことで、自分を一旦受け入れることができ、心にゆとりが生まれるようです。
その後、今日一日のおやこ保育園での目標を決めて、これも共有した上で、いよいよ子ども主体の時間へ。
午前中は子どもの時間。今日は色遊び
今日の遊びのテーマは「色」。
たくさんのカラフルな素材を拡げて、思い思いに子どもたちが遊び始めました。
カラフルな洗濯ばさみを色分けして遊ぶ子。
カラーセロファンをマントに見立てて変身ごっこを楽しむ子。
ひたすら目の前のものを舐め回す0歳児。
みんなとても楽しそうです。
子どもたちが遊びに夢中になっている間、お母さんたちはじっとその様子を見つめたり、お母さん同士で話したり、何かを書き込んだりしています。
子どもの事をよく観察し、手元のシートに気づいた事をメモしているのです。
このおやこ保育園では毎回、お母さん達に伝えられているルールが4つありました。
①否定しない
②命令しない
③静かに待つ
④共感する
子どもたちの内側から沸き起こってくる感情や、遊びたい!という気持ちを尊重するということ。
頭では分かっているけども、家ではなかなかそうはいかないことも多いはず。
お友だちとケンカしそうだな・・・。
やり方を教えてあげたいな・・・。
沸き起こってくる気持ちを抑えながら、お母さんたちは「子どもを尊重して、待つ」事の練習をしているようにも見えました。
そして、近くの公園までおさんぽタイム!
さあ、色遊びでちょっとテンションが上がっている子どもたち。
近くの公園までおさんぽです。
セロファンのマントを羽織ったままのお嬢さんも、街へ飛び出していきました(笑)。
「これはみどり!」
「いろんなみどりがあるね」
道ばたでもたくさんの色の発見をしている子どもたち。
でも、「早く早く!」と急かす大人はいません。
公園についた人からブランコに乗ったり、木の枝を集めたり。各々好きに遊びます。中でもこの日はセミの抜け殻集めが大流行!
午後はおとなの時間。テーマは「コミュニケーション」
お昼ごはんを済ませると、今度は大人の学びの時間。この日のテーマは「コミュニケーション」です。
この日の問いかけは、 " なぜ コミュニケーションが大切だと思いますか? " というもの。
ポーンと問いを投げかけられたお母さんたちですが、さすがはおやこ保育園のお母さんたち。
「情報共有だけじゃなくて、分からないことが減ると、不安も減るから」
「コミュニケーションがない状態をイメージしてみるといいかも」
みんなで多様な捉え方を共有した上で、普段の自分のコミュニケーションを見つめなおす時間があります。そこで出てきたお母さんたちの一言が印象的でした。
「人によって、コミュニケーションの方法に得意不得意があるけれど、それを一旦受け止めていいんだ。という気付きがあった。無理して違うキャラになる必要ないなって。みんな何かしらの工夫をしながら生きているみたいだし。」
「自分が相手に求めるコミュニケーションの形が全てではなかったことに気づけて
楽になりました。自分がコミュニケーションをとるときも実は方法はいろいろあったことに気づけたのも発見。」
「私、本当はどうしたいんだっけ」自分なりの子育ての軸を持てる場所
取材を通じて、お母さんたちがとても真摯に自分と向き合えていることに驚きました。これはきっと、おやこ保育園が子どもだけでなく大人にとっても安心できる場所だから。
自分と向き合うという作業は、時として痛みを伴いますし、更にそれを他人に共有するには勇気がいります。それをみなさん乗り越えつつあるようにみえたのでした。
この雰囲気は、やはりもともと意識の高い親御さんが集まっているからなのでしょうか。
「もちろん、こういう取り組みに申し込んでくださる方は、ある程度自分の意志を持てる方だとは思います。ですがここに集まったお母さんたちも、最初からうまく自分と向き合えたわけではなかったと思います。2週間ごとにおやこ保育園に通うにつれて、ここは何を言ってもいい場所なんだと感じ、悩みを言語化したり、いろんな視点を得たり、他の子の成長を一緒に喜んだりするうちに、徐々に変化していくんです。」
そう語ってくれたのは、共同主宰の一人、小竹めぐみさん。
子どもたちに対して接するようなスタンスで、大人同士が接してみる。そこから生まれる大人の余裕こそが、子どもたちのいきいきとした活動を保障できるのかもしれません。
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