連載第4回で主夫時代のエピソードをお話しましたが、親子というものは信頼関係があるが故に負の感情を出す際のブレーキが利きにくいことが多々あります。
子どもは実の親に対して、他人の親には見せない様なわがままの限りをぶつけてきますし、親も実の子に対しては他人の子には見せない様な「大人の都合」をぶつけてしまいます。
親である私たちは、この様に遠慮のない感情表現をぶつけられることの理不尽さに、気持ちがざわつきます。そして、自分が感情的になってしまったことへの自責の念にかられることでイライラを募らせてしまいます。
自分の「怒りのスイッチ」を知ろう!主夫になったパパがみつけた育児ストレスとのつきあい方
9,968 View子育て中にまったくイライラしたことのない人はいないと思いますが、イライラに振り回される人と、うまく付き合っている人がいますよね。私がプレイワーカーとして、そして主夫として子どもと向き合う中で見つけた、育児ストレスとのつきあい方について紹介していきます。
「怒ると怒る」の法則を発見した主夫時代
そんな風にイライラに苦しんでいた主夫時代、私はある日、この負のスパイラルの中に潜む重大なことに気が付くことができました。それは「怒ると怒る」ということです。
要するに親の負のエネルギーは、子の負のエネルギーを更に増幅させることにしかならないということですが、具体的にはこんなことがありました。
長男が3歳になるちょっと前ぐらいのことです。
近所の公園に外遊びに行こうと自転車のチャイルドシートに乗せた際、彼はベルトの装着を自分でしたかったのですが、手先がまだ器用に使えないため、つけることができませんでした。そして、悔しい気持ちがいっぱいになりベルトを振り回しながらぐずぐずし始めました。
そんな様子を見ていた私も早く公園に行きたかったので、面倒くさくなり、強引に彼の手からベルトをもぎ取って、イライラしながら装着してしまいました。
すると、彼は「自分でやりたかったのにー!」とチャイルドシートで怒りを爆発させて私や自転車に当たり散らすまでになってしまいました。
自身の怒りの感情に注目してみる
現在も同じ様なことがあるのですが、私自身が気を付けているのが「自身の怒りの感情」に気が付く様にしているということです。上記のケースに例えれば“ぐずる我が子の姿”は私にとって一つの怒りのスイッチでした。
この様に怒りの感情が生まれやすい時がどういう状況なのかを知ることで、うまく対応ができる様になってきたのです。
長男がぐずり始めた時は、あー、これは私の中に怒りの感情が生まれそうだぞ!と心の中でベルが鳴ります。そして、「怒ると怒る」のキーワードを頭の中で唱えながら心を鎮めることに集中するのです。
そして、心の中の動きと同時に体も動かします。多くの場合、私は子どもを抱きしめて、子どもの気持ちを代弁するようにしています。先ほどの自転車のチャイルドシートの事例であれば「できなくて悔しかったねぇ」ですし、嫌なことがあったのであれば「嫌だったねぇ」という具合です。
時に子どもの怒りの感情がすでに大きく、抱きしめることを拒まれる場合もありますが、そんな時もなるべく目線を合わせられるようにしゃがんだりして話しかけます。
この時、子どもが嫌がらないのであれば、肩や手など子どもの身体の一部に軽く手をかけさせてもらえると良いです。これらは抱きしめることと同様に、いずれも子どもの怒りの感情を鎮めることに効果を発揮します。
感情のコントロールができるのは大人のなせるわざ
子どもは大人と違って、思考を働かせて、自身の感情を整理することはなかなかできないことが多いです。そのため、言葉にならない苦しさを様々な負のエネルギーに代えて発散しています。
親の怒りが子どもの怒りを呼び起こす様に、子どもの怒りもまた親の怒りを呼び起こします。そのサイクルを断ち切れるのは思考が発達した私たち大人側の役割だと思っています。
実際に自身の怒りの感情をコントロールするとどの様なことが起こるのでしょうか。怒りの感情に注目できる様になってからの具体的な子どもとのやりとりにはこんなことがありました。
同じく長男が3歳前後だった時、朝食後に30分だけと約束して見ていたテレビの視聴時間を延長しても消さない彼に、視聴時間の長さを注意する私の一言から「だってもっと見たいんだもん」とぐずり始めました。
私の怒りスイッチが動きそうなことに気づき、「そうかもっと見たいんだもんね。」と穏やかなトーンで彼の気持ちを代弁すると「もっと見てもいい?」と聞かれます。私はそこで
「見たい気持ちはわかるんだけど、長く見ると目が疲れちゃうよ。また夕方見ようねー。」(ここでぎゅーっと抱きしめました)「嫌だ!今見たいもん!」と彼も折れないのですが、変わらず「そうだね。気持ちはわかるよ。でも、お父さんは○○(子どもの名前)の目が疲れちゃうのは嫌だし、悲しいよ。それより一緒に遊びたいなぁ。」と答えます。
何度かこういったやりとりを続けながらも頭を撫でたり、手を握ったりしている内に、ふっと彼の眉間によった皺がほどけて、私の目を見ながら「いいよ。じゃあ、また夕方に続き見るね。」と言い、その後は「じゃあ、何して遊ぼうか!」と笑顔で気持ちが切り替わりました。
誰でもできる!感情に気が付く「客観視」トレーニング
私たち大人は日々の生活の中で感じていることと思っていることを混同しがちなのです。誰かにご飯を作ってもらっている時、赤子は「お腹がすいたなぁ」と感じたら泣きます。大人は「お腹がすいたなぁ」と感じても「今、作ってくれているから、もう少し我慢しなきゃ」と思います。この様に、本来は感じたことと思うことは別々です。
しかし、怒りは人が危険な目にあった際に逃げたり反撃するために必要な感情でもあるため、感じたままの反射を言葉に出してしまったりすることが多いのです。だからこそ、意識的にトレーニングが必要です。
プレイワーカーをしていた際にも、遊びに来ている子どもたちが私がムッとする様な言動をすることはあったのですが、プレイワーカーが子どものする悪意のない(時に悪意のある)遊びに対して、自分がその遊びを好きか嫌いという感情だけで判断して対応してしまったら、子どもの遊びは「私」という個人の価値観の枠を越えて遊ぶことが許されなくなってしまいます。
そのためプレイワーカーは子どもたちの遊びの中で、自分の人生を賭けてでも子どもに伝えようと思ったこと以外は、子どもたち個人個人の価値観からくる「遊び」の範疇として収めることが多々あります。(例えば、虫の命を奪うことも目の前でやられているのか、私から遠く離れたところでやっているのかによって、対応が違ったりします。)
しかし、そういった心がざわつく様な瞬間、自分の感じ方を客観視していないと、「ここは大人として止めないと」と感じたことをそっちのけで行動してしまいがちなのです。
みなさんも、「感じていること」と「思っていること」と敢えて分解して心を見つめてみると怒りのスイッチ(何に対してざわつく癖をもっているのか)が解るようになってきますよ。ぜひ、試してみてください。
次回のコラムでは
次回は「子どもにとって有益な危険とは?~リスクとハザードの見分け方~」として子どもの遊びにつきものである「危険」にまつわるお話しをしていく予定です。お楽しみに!
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