虐待は他人ごとじゃない。心と体が壊れてしまう前に
28,941 View痛ましい虐待事件のニュースを連日のように目にする昨今。あなたは我が子に手をあげてしまったことや、手をあげてしまいそうになったことがありますか。「我が子に手をあげるなんて、信じられない」。多くの人が、そう思うものかもしれません。
わたしもそう思っていました。この手で我が子を育て始める前までは。
こんにちは、シノヅカヨーコです。二歳の娘がいます。
これは、娘が生まれたばかりのころの話です。
わたしは出産を経験するまで、生まれたばかりの赤ちゃんは、
授乳やオムツ替えの時間以外のほとんどを眠って過ごすものだと思っていました。
「3時間おきに授乳が必要」と聞いても「授乳とオムツ替えさえ済ませれば、あとは休める」とばかり思っていたのです。
現実は、そう甘いものではありませんでした。
元気いっぱいで生まれてきた娘は、ちっとも眠らない子でした。
授乳をし、オムツを替え、寝かしつけようとしても、泣くばかりで思うように眠ってくれません。
どうしてうちの娘は眠ってくれないのだろう…。
周りの子の話を聞いてみても、「起こさないと授乳もできないのよ」なんて子ばかり。
おくるみやオルゴール、メリー、おしゃぶり…寝かしつけに効果があるというアイテムにはすぐに飛びつきました。
赤ちゃんが落ち着くという雨音や、ビニール袋のカサカサ音…なにひとつ、娘には効きませんでした。
先輩ママの「泣かせておけばいずれ寝てくれるよ」の言葉を信じて、実践したこともありました。
一晩中泣きつづけ、最初に音を上げたのはわたしのほうでした。
心配は不安に変わり、不安はストレスへ
新生児の睡眠時間は16時間から18時間といわれています。
ですが、娘の睡眠時間はそれを大きく下回っていました。
もしかしてこの子は、具合が悪いのだろうか。
わたしの寝かしつけ方が悪いせいで、眠れないのだろうか。
こんなに眠らなくて、この子の体は大丈夫なのだろうか…。
そんな思いに苛まれた結果、いつしかインターネット上に答えを探す“検索魔”になっていました。
「新生児 眠らない 原因」
「新生児 泣きやまない 病気」
「赤ちゃん 睡眠不足 悪影響」
検索しても検索しても、わたしが納得できる答えはどこにもありません。
心配は不安に変わり、不安はストレスとなってわたしを襲いました。
睡眠不足と全身の痛み。「壊れる」のを感じた日々
娘が眠ってくれるのは、わたしの腕に抱かれている時だけ。
抱っこをしていないと眠らずに泣きつづけるので、わたしは毎晩、娘を抱いたままソファで眠る日々を送っていました。
ですが、そのわずかな休息でさえ「娘のぐずりはじめる気配」を感じとって、目が覚めてしまうのです。
出産する前は「赤ちゃんの泣き声で起きられなかったらどうしよう」なんて思っていたのに、母親のからだとは不思議なものですね。
わたしの母親センサーは、ずっとスイッチが入りっぱなしだったのです。
すくすくと育った娘の体重は、生後3ヶ月で10キロ(!)を超え、両腕はひどい腱鞘炎でいつもひりひりと痛んでいました。
授乳で乳首は根本から裂け、からだの痛みで熱を出したことも。
育児不安と睡眠不足の日々に、からだと心が「壊れて」いくのを感じました。
ストレスの矛先は夫へ。もしも娘へ向かっていたら…
そのころのわたしは、夫が羨ましくてたまりませんでした。
娘と離れて仕事へ行くこと、ひとりの時間が持てること。
ひとりでゆっくりとお風呂に入って、布団に潜って眠れること。
食事を味わう時間があること。本をめくる余裕があること。
他人と会話をする機会があること。
まだ話すことのできない娘に一方的に話しかけるばかりで、わたしはうまく話せなくなっていました。
なにか話そうにも、言葉がうまく浮かばないのです。はじめての経験でした。
「どうしてわたしばかり辛い思いをしているんだろう」。そんな気持ちでいっぱいでした。
娘が生まれてくるのを誰よりも待ち望んでいたのは、わたしだったはずなのに。
睡眠不足の日々は確実に心を蝕み、一度、狂いはじめたら、もう歯止めがききません。
「わたしだって布団で眠りたいよ!」と寝室で眠る夫をたたき起こして泣き叫んだことがありました。
「あなたはいいよね、外へ逃げられて!」と、夫に嫌味を言ったこともありました。
「陽気な妻がおかしくなってしまった」と、当時の夫は困惑したことでしょう。
ですが、もしもその矛先が、我が子へ向かってしまっていたら。
娘の泣き声に耳をふさぎ、娘を置いて逃げ去ってしまうことだってあったかもしれません。
泣き止まない娘に苛立ち、強く揺さぶってしまうことだってあったかもしれません。
もう二度と泣けないよう、小さな口をふさいでしまうことだって、あったかもしれません。
わたしは虐待を、他人ごとだとは思えなくなりました。
虐待に走る、その前にできること
1. 「壊れている」ことを自覚しよう
もしも我が子の泣き声に耳をふさぎたくなってしまったり、我が子をかわいいと思えなくなってしまったら。
そんなとき、あなたは「正常」な状態ではありません。
親だって人間。心とからだに余裕がないときに、誰かにやさしくするのは難しいものです。それがたとえ、何物にも代えがたい我が子であったとしても。
壊れる理由は人それぞれです。
わたしは寝不足が原因でしたが、産後のホルモンバランスの乱れが原因で調子が悪くなる人もいますし、育児や生活にたいする不安や孤独感からこころが乱れてしまう人もいます。
まずは、自分が「壊れている」ことを自覚しましょう。
それはけっして、あなたのせいではありません。自分を責めるのではなく、「壊れている」ことを受け止めましょう。
2. 気持ちを切り替える時間をつくろう
子育てに煮詰まっているのを感じたら、赤ちゃんと離れる時間をつくることも大切。
パートナーや両親を頼れない場合は、自治体の預かり制度を利用するのも一つの手段です。
リフレッシュ目的で保育を利用できるかどうかは自治体によって異なりますが、代わりとなる制度があることも。
たとえば、品川区は一時保育のリフレッシュ利用はNGですが、生活支援型一時保育(オアシスルーム)という一時預かり制度があります。
一時保育を利用できる月齢は自治体や園によってさまざまですが、4ヶ月~としているところが多いようです。
もしかすると、「子どもを預けてリフレッシュだなんて…」と批判する人が周りにいるかもしれません。
ですが大切なのは、あなたが健全な気持ちで赤ちゃんと向き合える環境をつくること。
気持ちを切り替えるために必要な時間だと割り切って、リフレッシュできる時間をつくりましょう。
3. インターネットに答えを探すのはやめよう
インターネットには有益な情報もあふれていますが、使い方を間違えると毒になってしまうことも。
特に不安を抱えている時は、ネガティブな情報ばかりが目につき、かえって不安が大きくなってしまうこともあるものです。
インターネットの情報は、ソースが不確かなものも含まれているため、正確な情報とは限りません。
それから、世の中には「母親はこうあるべきだ」という声が溢れかえっています。
誰でも声をあげやすいインターネットでは、それが顕著に表れやすいものです。
覚えていて欲しいのは、そのすべてに耳を傾ける必要はないということ。
あなたの子を育てた経験を持つ人は、他に誰もいないのです。他人の言う正解が、かならずしも当てはまるわけではないということを、忘れないでいてください。
インターネットの海で溺れてしまわないように、ほどほどに使いたいものですね。
最後に…
政府の統計によると、子どもに対する虐待のうち、3歳までの子どもが被害に遭う虐待はおよそ2割弱。
ですが虐待死にいたった事例となると、5歳までの乳幼児が9割、さらに0歳児が4割を占めています。
もしあなたが、子どもに手をあげてしまいそうになったり、育児中に強いストレスを感じることがあったら、なにがなんでも休息をとりましょう。
こころと体を休ませ、健全な気持ちで向き合うことが、虐待事件を減らすことにつながるとわたしは考えています。
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