露の団六さんは、落語家さんです。私が初めてお会いしたのは、娘の支援学校時代、PTAのイベントで講演にお越しいただいた時です。落語も聴かせていただきながら、大変楽しくダウン症のお兄さんについてをお話しくださいました。
この本の内容も、噺家さんらしく、笑いを織り交ぜながら、テンポよく軽快に文章を綴られています。登場してくる家族の描写も“おもろい”。
そんな中、団六さんが小さかった時代、当時は、幼稚園はおろか、特殊学級も養護学校も兄であるお兄さんの受け入れを断られたことや、やがて、お母さんが血眼になって受け入れてくれる学校を探してこられたことも記されています。笑いが盛りだくさんですが、時にホロリと泣かせてくれます。
ちなみに、「あほやけど…」の『アホ』は、関西では、褒め言葉なんです(笑)
障害は特別じゃなくて当たり前!きょうだい児が書いた”障害”の本 2選
4,302 View障害をもったお子様に関する本は沢山あるけれど、きょうだい児、つまりその子の兄弟姉妹に関する本は少ないようです。そして、実際の兄弟姉妹自身が執筆された本は、もっと少ないようですね。どんな気持ちで過ごしていたのか、何が嬉しくて何が嫌だったのか、きょうだい児によって綴られた本が何冊かあったのでご紹介させて頂きます。
『あほやけど、ノリオ ダウン症の兄貴を持って』(噺家 露の団六さん)
講演会でも団六さんはおっしゃっていたのですが、「親にとって、障害のある子を授かる、ということは『普通と違う』と思うかもしれないけど、自分にとっては生まれた時からダウン症の兄がいるわけで、それは『普通』のことだ。」と。そして、ダウン症の子が千人に一人うまれるなら、「うちへ来い。」
また、団六さんは、お母さんから「あんたには、苦労、かけたなぁ」とボソッと言われたことがあって、団六さんにとっては、それは一番言われたくない言葉であったとおっしゃっていました。
これが、兄弟の言葉なんだと思えます。そんなご自身の思いも、綴られています。
『お~い!お~ちゃん! 自閉症の弟と私のハッピーデイズ』(廣木佳蓮・廣木旺我 著)
こちらは、自閉症の弟を持つ姉の立場で書かれた著書です。姉である佳蓮さんは、まだ大学生なんです。
『自閉症のおーちゃんは、絵を描くことが大好きでケンカが嫌い。そんなおーちゃんとの保育所から、小学校、中学校、高校までの面白すぎる毎日を、「お前の弟、ガイジやろ!」と言われ悲しかったことなども交え、姉の目から語る。障がい児・者への理解につながる好エッセイ。』 紹介文には、そんな風に書かれています。
エッセイの合間には、楽しい4コマ漫画もあって、これがまた、おーちゃんとの様子がわかりやすいのです。
そして、おーちゃんは、何度もの受験を経て、公立の高校に通い、絵を描くのが大好きだったため、大阪市立のデザイン専門学校へ、今、毎日通ってられます。
障害のある子の子育てに、たった今、悩まれている親御さんにとっても、佳蓮さんのエッセイから、廣木さん一家の家族みんなの生き方は、何かの参考になるかもしれません。
知的障害のある子にとっては、「高校受験なんて、無理!大学や専門学校なんて、とんでもない!周りに迷惑かけるだけ!」と思ってられる方も多いと思うのですが、廣木さん一家は、それらに挑戦していかれます。
そのため、しんどいことも沢山経験されますが、その中に、何かしら希望を見いだしていかれます。簡単には前に進まなくても、チャレンジし続ける姿は、周りの人の心も動かし、そして、いつの間にか、沢山の人との繋がりができていきます。もちろん、廣木さん一家は特別な家族ではありません。障害があっても当たり前の人として、おーちゃんと向き合いながら子育てされてきた中、ごく自然に、高校受験や絵画などデザインの道へ進んでいかれたのだと思います。
「障害児(者)は何もできない。」のではなく、挑戦する機会を奪われているだけかもしれません。そして、障害のある子がいることで、ステキな生き方ができる場合があることを、佳蓮さんや廣木さん一家が教えてくれています。
親の思いとは違う、きょうだい児の思いを感じることができるから…
団六さんも触れられていますが、障害者の親が書いた本と兄弟姉妹が書いた本は、少し違うようです。もっと少なくなりますが、障害当事者の書かれた本や文もあり、その当事者に一番近い考えや思いをうかがえるのは、やはり、きょうだい児が書いた本ではないか?と思っています。
団六さん、佳蓮さん、お二人ともに、ご自身の境遇を“不幸”だなんて思っていませんし、兄や弟のことを、そして、障害のある人たちの理解が広がり、周りに優しい人が増えることを願って、私たちに伝えてくださっています。きょうだい児の思いを通して発見できることがあると思いますので、ぜひ、読んでみてください。
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