そんな苦情を受けたのは、生後10ヶ月の子どもを持つ女性。
申し出たのは、上階に住む三十代の夫婦でした。
妊娠を機に引っ越した、「ファミリー向け」をうたう都内の分譲賃貸マンション。
その土地で子育てをしていくことを前提に、周囲の環境や学校まで考慮してようやく見つけた住まいでした。
そのころ、女性を悩ませていたのは、赤ちゃんの夜泣きでした。
夜に何度も目をさましては、そのたびにわーっと泣き叫ぶ赤ちゃん。
ときには、1時間とぐずり続けることもあったようです。
女性の夫の仕事は不規則で、早朝に家を出ることもしばしば。
一人で夜泣きの対応をしなければならない女性は、寝不足と疲労の日々を送っていました。
そんな矢先の、苦情でした。
「赤ちゃんの声、響きます」
「部屋を歩きまわる音が気になる」
「なんとかなりませんか」
泣き止ませられるものなら、わたしだってそうしたい―。
その晩から、女性は夜泣きの対応のためにマンションの外へ出るようになりました。
赤ちゃんの泣き声はご近所迷惑? 生活音を苦情にしないコツ
85,901 View「赤ちゃんの泣き声、なんとかなりませんか」。赤ちゃんの泣き声や子どもが走り回るドタバタという足音。乳幼児がいる家庭の生活音は、ときに騒音となり、近隣住民からの苦情につながってしまうケースが少なくありません。マンションやアパートなどの集合住宅を選んだ子育て家庭がやっておきたいこととはなんでしょうか。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10449000036「赤ちゃんの泣き声、なんとかなりませんか」
「赤ちゃんを連れて夜中に出歩くなんて…」
夜泣きの対応のために、赤ちゃんを連れて外へ出た女性。
雨の日は抱っこ紐を使うこともあったようですが、「抱っこよりもベビーカーの振動でよく眠ってくれるから」と、ベビーカーを押して歩くことが多かったのだそう。
ぐずっていた赤ちゃんも、外気に触れるとぴたりと泣き止み、少しずつご機嫌になっていきます。
「家にこもっているよりも、かえってよかったかもしれない」
支度の手間は増えるものの、寝かしつけにかかる時間は短くなった、と女性は言いました。
そんな女性に追い打ちをかけることとなったのは、通りすがりの中年女性でした。
「こんな時間に赤ちゃんを外に連れ出すなんて、非常識」
「赤ん坊を夜更かしさせるなんて…」
深夜2時。
たしかに、子どもが出歩く時間ではありません。
とはいえ、あくまでも寝かしつけのため。
ねんねこ半纏を着たおっかさんが、ガラガラ片手にオンブで歩いている―そんな昔ながらの寝かしつけの光景と、なんら変わりはありません。
「どこへ行っても、迷惑だと言われてしまう。居場所がない」
八方ふさがりの状況は、女性を追い詰めました。
赤ちゃんが泣くのは「しょうがない」
言葉を交わせない赤ちゃんにとって、泣くことは大切なコミュニケーションの手段。
不機嫌に泣く赤ちゃんを泣き止ませるというのは、たとえ親であってもそう簡単にできることではありません。
赤ちゃんは、泣くものです。
赤ちゃんが泣くのは当たり前で、泣き声がうるさいだなんて言ってもしょうがないのです。
とはいえ、「黒板を引っかく音」や「救急車のサイレン」と似た周波数を出しているといわれる赤ちゃんの泣き声。
これは、人が本能的に注意して聞いてしまう高さなのだそう。
騒音のレベルはたかがしれていても、その周波数から不快に感じる人がいるのは当然なのかもしれません。
子どもは「うるさくて当たり前」
夜泣きをしていた赤ちゃんはあっという間に大きくなり、一歳を過ぎたころには次第に歩きはじめるように。
すると今度は、泣き声よりもすさまじい「ドタバタ」という騒音がはじまります。
大人しく控えめな子であっても、駆け足やジャンプを覚えたことでつい飛び跳ねてしまう…なんてことはあるもの。
ですが、このころの子どもたちには「走っちゃダメ」「ジャンプはダメよ」なんて効果がありません。
もちろん言って聞かせることは必要ですが、「静かに」を実践できるかどうかは別の話。
子どもは「うるさくて当たり前」。
だからこそ、大人にはやらなければいけないことがあります。
家具を壁際に置くだけで遮音効果が…!
泣き声や話し声は、壁から伝わりやすい騒音。このタイプの騒音は、壁に「遮音シート」や「遮音タイル」を貼ることで対策ができますが、少々大がかりになってしまうのが難点です。
そこでぜひトライしてみてほしいのが、棚などの高さのある家具を壁際に配置してしまうこと。
壁の面積を減らすことで、遮音性がアップするといわれています。
隣家と接している側に家具を寄せるようにすることで騒音を伝えにくくすることができそうですね。
歩きはじめたら「マット」で防音を
赤ちゃんが歩きはじめるようになると、多くの家庭で導入されるジョイントマット。
転倒時の衝撃を吸収してくれるだけでなく、防音にも一役かってくれるので、集合住宅住まいであればかならず導入したいものです。
材質には、クッション性の高いEVA樹脂製やコルクタイプがありますが、防音には厚みがあるタイプがオススメ。
また、防音カーペットをプラスでとりいれると、さらなる防音効果が期待できますよ。
コミュニケーションで「先手を打つ」
騒音を出さないように対策することは大切ですが、乳幼児のいる家庭では、足音や泣き声といった騒音は防ぎきれないもの。
だからこそ、騒音が苦情に変わる前に、近隣とのコミュニケーションをはかり、ご近所づきあいを確立しておくことが大切です。
特に音が伝わりやすい両隣と、上階・下階には、なるべく早い段階で「お騒がせします」とごあいさつをしておくのがベター。
引っ越し時だけでなく、出産時にも「赤ちゃんが生まれたのでお騒がせするかと思いますが…」と一言ごあいさつにうかがうといいでしょう。
自身も二歳の娘と一緒に都内の集合住宅で暮らしていますが、近隣の方々が温かく見守ってくださっているのでとても助かっています。
「子どもの声を聞くと元気になるのよ」と声をかけてくださる方が周りにいる環境というのは、とても恵まれているのかもしれません。
特に都心部では、ご近所づきあいが希薄になってしまいがち。
隣にどんな人が住んでいるのか知らない…なんてことも少なくありません。
ですが、家庭の騒音を「容赦」してもらうためには、ご近所づきあいは欠かせないとわたしは考えています。
生活音を近隣に伝えないよう対策をすることは大切ですが、生活音を苦情に変えない一番のコツは「コミュニケーションをはかっておくこと」。
温かな目で見守ってもらえるよう、日ごろからあいさつを交わせるような関係性を築いておきたいものです。
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