「山に行く?海に行く?それとも動物園?」と聞くと、
やったー!と喜んでくれるのが子どもだと思っていました。
でも、うちの子は違います。
「えー?やだ。家にいたい」と言うのです。
子育ては思い通りにはいかない。
完全に自然派のわたしは、娘が自然の中で遊びたがらないことを受け入れるのに数年かかりました。
娘が10歳になった今も、隙あらば自然の中に遊びに行こうと試みるのですが、うまくいかないことがほとんどです。
この傾向は、2歳のとき海に連れて行ったら「足に砂がつくから嫌だ」と言われたときから、薄々感じてはいました。
自分と娘は違う人格!自分の「好き」を押し付けない子育て
11,528 View完全に自然派の私と、都会っ子の娘。全く意見が合わない二人は、休日の過ごし方についてよくケンカになります。親が好きなものは、子どもも好きになるのか?
一方的に押し付けてしまいがちな親の価値観。少し立ち止まって、親子は全く違うそれぞれの個人だということを、あらためて見つめ直したいと思います。
子育ては、思い通りにいかない
西表島に娘を連れて行くのが念願だった
20代の頃に沖縄の西表島に住んでいたわたしは、子どもを産んだらお世話になった島の人たちに会いに行きたいと願っていました。
娘を産んで5年。ようやくその願いを叶えるため、西表島の大自然に1週間の予定で娘と出かけました。
すると・・・日に日に娘の元気がなくなってしまったのです。
最初の数日こそ海や川で遊んだりもしましたが、最後の頃にはとうとう
「ママだけで行ってきていいよ。わたしは車で待っているから」
と、星砂が拾える海が目の前なのに、駐車場で待っていると言うのです!
どれだけ説得しても娘は車を降りません。
そしてついに最終日。娘は元気をなくして10歩も歩けなくなってしまいました。ちょっと歩くと「ママ抱っこ」と言って止まります。歩く気力がないのです。
大好きな西表島で、娘と一緒にたくさん遊びたいと思って、この日を夢見てお金を貯めたのに・・・。
いざ来てみたら、全然うまくいかない。「また来ようね」と言いたかったけれど、もう娘とは2度と来られないかも知れないな、と悲しい気持ちで島を後にしました。
それが羽田空港に帰ってきた瞬間、それまでぐったりしていた娘が急に元気になったのです!
「ねえねえ!おみやげ見ていい!?」と走り回っています。
ああ、この子は都会っ子なんだ。子どもは自然を喜ぶなんてわたしの勝手な思い込みだった。そう思い知らされた瞬間でした。
「子どもを慣れさせる」のはいいことなのだろうか?
「自然を嫌いな子どもなんていないよ」「1ヶ月もいれば慣れるよ」
周囲からはそんな言葉をかけられました。
でも、初めは嫌だったことに慣れていくのって、本当に良いことなのでしょうか。
親が良いと思うものに、子どもが慣らされていく姿って、わたしはあまり好きではありません。その子にはその子の感性がある。
子どもには大自然の中でのびのび遊んでいてほしい。
これが多くの大人が子どもに望む姿なのですよね。
そこから外れると、かわいそうになる。大人の望みから外れると、かわいそうな子になる。
でも、実はその子はかわいそうではありません。
だって、大好きな場所で遊んでいるのですから。それが都会であろうが自然であろうが、大好きな場所で遊べる。それはとても幸せなことです。
わたしはそれを分かっていませんでした。
大好きな西表島の大自然にふれたら、娘は野生児のようにのびのび遊びまわるものだと思い込んでいました。
でも娘が好きなのは、クーラーの効いた清潔な部屋でゴロゴロ過ごすことであって、暑くて虫が多い島で暮らすことではなかったのです。
「自分と娘は違う人格」という当たり前のことに気づいた
西表島の一件は、当たり前のことですけれど、「自分と娘は違う人格なのだ」と性根に叩き込む良いきっかけとなりました。
どんなにわたしが良いと思うものでも、娘にとってはちっとも良くないこともある。
わたしはわたしで、この子じゃない。この子の喜ぶものは、この子が決める。そう誓って今があります。
ただ、これはなかなか、簡単なことではないのです。
よく後悔するのが、つい「子どものための提案」をしてしまうこと。
たとえば、娘が喜ぶだろうと思って「子ども向けアニメ映画に行こう」と提案したとします。
自分はそんなに観たくなかった映画だったとしても、娘が喜んでくれただろうし、良かったと思っていると、娘から「今回はママの行きたいところに行ったから、来週はわたしの行きたいところにしようね」と言われるのです。
あ、またやってしまった・・・。と、ここで思います。
子ども向けアニメ映画を喜ぶだろう、というのはわたしの勝手な思い込みだった。
喜んだとしても、娘の自発的な「見たい」という気持ちではなかった。こちらの「見せてあげたい」を押し付けてしまったー!
と、反省するのです。
かくして、翌週は娘の行きたい原宿・竹下通りに付き合わされることになります。
そう「一緒に行く」ではなく、わたしは「付き合わされる感」満載で出かけることになります。なぜなら前の週も、自分が行きたい場所ではなく、娘が喜ぶと思った場所に行っているから。
前の週にわたしがちゃんと「自分の行きたいところ」を提案していれば、こんなことにはならなかったのです。
ニコニコ笑って「そうだね、先週はママの行きたいところに行ったから、今週は娘ちゃんの行きたいところに行こうね!」と言えていたはずなのです。
自分が喜ぶことは、自分にしか分からない
「誰かのため」ではなく「自分のため」が大切です。親の方も、子の方も。
自分の喜ぶことは、自分にしかわからないのですから。
そうそう、わたしの仕事はベビーマッサージ講師ですが、赤ちゃんが自分から「ベビーマッサージに行きたい」と言ってお教室にいらっしゃることは皆無です。全てのお母さんが「この子のためになるはず」という気持ちでいらっしゃいます。
でも、だからこそ、もちろん赤ちゃんのためにもなるのですが、お母さんが喜んでくれるといいな、と思ってお教室をやっています。
それがどんなに子どものことを思った行為だったとしても。それを思っているのは誰ですか?ということです。子どものことを「思っている」のは、自分です。子どもと自分は別の人間。決して押し付けないことが大切です。
娘の感性を大事にしながら、押し付けず、でも自分の行きたい場所もあきらめず、地味に10年間取り組んできた結果、娘は「自然も行けば楽しい」ということは感じるようになったみたいです。
5歳のときに行った山登りを未だに自慢するので、やり遂げれば誇りにもなるようです。ただ、もう登りたくないようなので、2度目の山登りに連れ出すのは難関。次は平らな草原のハイキングに、わたしが楽しむために、連れ出すことが目標です。
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