あるとき、小学校6年生のクラスで、絵本を読ませていただく機会がありました。いつも、大きい子どもたちにむけて絵本を読むときには、まず聞くことがあります。それは、「絵本は、読んでいますか?」という質問。しかしいつも手が上がるのは、ほんのわずかな女の子だけ。
今回もいつもと同じように質問をしてみることに。すると、めずらしく男子の手が4人あがりました。それぞれに何の本を読んでいるのか尋ねると、まずは「浦島太郎」、次が、「金太郎」、そして「桃太郎」、最後が「赤ずきんちゃん」。なるほどねぇ、そうきましたか・・・。
こんなときは、もしものために持ってきた絵本が役に立ちそうです。持ってきてましたよ。偶然にも、「ももたろう」を!!
あの桃太郎の絵本の別の物語~五味太郎がおくる新ももたろう伝説~
3,410 View最近、桃太郎や金太郎がCMで実写になって使われていますね。昔話のブームがきているのでしょうか?それとも定番の安心感でしょうか?でも、今回はそんな昔話の絵本「ももたろう」が普段とは違った結末をあゆむこの絵本を紹介します。きっと新しい視点で昔話を味わうことができますよ。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28144100793小学生のみんな、あの桃太郎の絵本知っているかな?
五味太郎の絵本『ももたろうーだれでも知っているあの有名な』
「ももたろう」とはいっても、6年生向けに用意したのは、こちらの「ももたろう」の絵本。『ももたろうーだれでも知っているあの有名な』(作・五味太郎)という作品です。
普通だったら、「昔々、あるところに・・・」と始まる昔話ですが、こちらの『ももたろう』の絵本は一味違うんです。桃太郎がどうやって生まれたか、おばあさんは何してたか、おじいさんもどこへ行ってたか、そして、名前の由来も…誰でも知ってること。とっても有名なこと。でも、それ、ほんとにほんと?ほんとにあってる?この絵本は、そう問いかけてきます。
桃太郎はどうやって育った?家来は、ホントに三人?ホントに勇気凛々勇ましく、鬼が島へ向かったの?そう次々問いかけてくる作者によって、固定概念を脱ぎ捨て、丸裸の感覚になったところで、新説桃太郎が楽しく語られます。
鬼退治もはじまりますが、しかし、桃太郎たちが実際にあった鬼は、聞いていたような鬼とはちょっと違っていました。桃太郎は、鬼たちの話に耳をかたむけ・・・しだいに・・・?!
作者:五味太郎のメッセージとは
常識をそのまま鵜呑みにして、まるでそれが正しいかのような気になってしまう私たちですが、この作品は「君が知っているのは、本当に、本当の姿なの?」と問いかけてきます。簡単に信じてしまうことの怖さであったり、実際に会ったり、話したりしてみることの大切さを教えてくれているいのかもしれません。
ネット社会は情報は得ることは容易だけれども、その真実は自分でつかむ必要があります。自分で知ろう。本当のことは、そこにあるんだよ。作者から、そんなメッセージが伝わるような気がするのです。こどもにも、大人にも、ぐっとささる問いかけをこの本はしてくれているのではないでしょうか?
そうだよなぁ・・・なんて思ったてところにまた こういうのです。「これ、本当に、本当の話だからね」・・・・って。うーん、深い。パラドックス的な面白さは、大人の心をもくすぐります。五味太郎作品は大人の心もぎゅっと掴んでくれるんです。
桃太郎の絵本から~絵本とは哲学である!?~
最近は、絵本を大人のカウンセリング、心理学の教材として取り扱われることもあるようです。絵本の奥深さを示す一つの例かもしれません。絵本は、哲学だなぁ・・・と思わされることが多々あります。シンプルな絵と、少ない言葉で語りかけられる絵本ならではの投げかけが心に波紋をおこしていきます。
哲学的思考に浸り、この面白さわかる?と子どもに問いたくなるくらいですが、あえて問わずにその余韻を楽しむのも、またいいものです。ときには、その余韻が、また何かを生んでくれるかもしれません。そして、成長する折々で、思い出したように読んでみてあげてください。お子さんの反応が変化しているかもしれません。その反応に、お子さんの成長を感じるかもしれません。それも、絵本を何度も読む楽しみのひとつなのです。
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