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公開 2015年12月01日  

不妊症の原因にも!性感染症の基礎知識~淋菌とクラミジア~

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淋菌やクラミジアといった性交渉により感染する病気は、放置しておくと不妊症や妊娠や出産時の母子感染、流早産など様々なリスクの原因となってしまうことがあります。近年の性感染症患者数の推移とともに、各疾患の特徴や注意点について解説します。


性感染症(STD)の基礎知識

性交渉によって感染する病気を指して、Sexually Transmitted Diseases(STD)と呼びます。HIVやB型肝炎、淋菌感染症やクラミジア、性器ヘルペスやケジラミ等沢山のウィルスや細菌が性交渉によって感染してしまいます。

原因ウィルスや細菌の多くは、粘膜感染という感染経路をとります。男性では尿道の内側、女性では膣内が粘膜にあたり、コンドーム非使用下の性交渉で感染リスクが高くなります。さらに口腔内も粘膜にあたるので、近年オーラルセックスなどでも感染例が多く報告されています。

女性の妊娠や出産にも深く関わる疾患が多く注意が必要です。今回は代表的なSTDである、淋菌、クラミジアについて、近年の感染患者数の推移を示しながら、各疾患の特徴を解説します。

淋菌とは?

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淋菌の患者数の推移。近年は横ばいになりつつある。

淋菌の患者数の推移は上図のようになっています。10年前と比較すると患者数は大分少なくなってきていますが、最近は横ばいになりつつあります。

男性の患者数が女性と比べて多いことがわかります。しかし、この背景には、男性が淋菌感染した際は強い自覚症状を伴う尿道炎を発症するため、病院に受診せざるを得ないために男性患者数が多いという事情があります。

反対に女性に感染した場合は、症状が弱いことも多く、病院受診する人自体が少ない可能性があるのです。しかし症状がないからといって淋菌感染を放置してしまうと、子宮頸管や卵管に炎症を来たして不妊症の原因になったり、ひどい時には骨盤内に炎症が広がり、骨盤内炎症性疾患(PID)という状態になったりしてしまうことがあります。

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さらに妊娠後も流産・早産のリスクが高まるほか、未治療のまま分娩に至ると、新生児結膜炎を来たし最悪の場合、失明してしまうこともあります。淋菌は産科健診で検査が義務付けられているわけではないため、自主的な注意が必要です。

クラミジアとは?

クラミジアは女性では淋菌と似たような感染症状を伴います。子宮頸管や卵管炎を来たし、不妊症や流産・早産のリスクとなりえます。クラミジアの患者数推移は以下の様になっています。

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クラミジアの患者数の推移。こちらも横ばい。

患者数も淋菌と同様減少傾向ですが、下り止まっている印象があります。またグラフ横軸に注目するとわかりますが、患者数が淋菌と比較して多いことがわかります。これはクラミジアの高い感染力によるものです。

一般的にクラミジアは一度の性交渉で、約40%という高い確率で感染するといわれています。そのため避妊具を使用しない性交渉により、あっという間に感染が広がってしまう病気なのです。

さらに厄介なのは、男性女性ともに無症状のケースが多いことが挙げられます。クラミジアに感染していても病院を受診すらしていない人々が多く存在することが予想され、報告数よりも多くの感染者がいると思われます。

クラミジアも淋菌同様、分娩時に母子感染することが知られており、新生児の結膜炎や肺炎を来たすことがあります。クラミジアは淋菌と異なり、産科健診で妊娠中期くらいにほとんどの産院で検査をしますので、陽性になったらきちんと治療することが大切です。

さらに重要なのは、パートナーもきちんと検査して治療をすることです。これを怠るとせっかくクラミジアを治療しても、再感染してしまうことがあります。

まとめ

淋菌・クラミジアは昔よりも減少傾向ですが、未だ感染者は多い疾患の一つです。きちんと検査と治療をしないと不妊や生まれてくる赤ちゃんにも大きな障害が残る可能性もあり、注意が必要です。普段からパートナーと一緒に気を付けていきたいですね。

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