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公開 2015年11月15日  

元NICU看護師が観た「コウノドリ」〜若年出産のリアルと命の教育について

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「コウノドリ」で描かれていた若年出産のお話。ドラマでもあったように、若年の出産には母体の身体への負担はもちろん、考えなければいけないポイントがたくさんあります。この機会に是非皆さんにも考えていただきたいと感じたことを、元NICU看護師の目線でお伝えします。


ドラマの中の話ではなく、“現実世界での出来事”です

みなさん、コウノドリ第5話はご覧になりましたか?今回は、中学生の若年出産がテーマでした。

「現実は小説より奇なり」とよく言いますが、実際のNICUにも、今回のような若年の妊婦さんはいらっしゃいます。

ドラマの中では「CGみたい」と初回の検診で命を茶化したような発言をした母親に、医師たちは厳しく命と向き合えるよう声をかけ、徐々に母親としての自覚を感じていく姿が描かれていました。

しかし実際にはそんな時間もなく、「ちょっとお腹痛い」という状況で受診し、そのまま分娩になってしまう、そんなことも決して珍しいことではないのです。

家族の誰も知らない、パパの存在もわからない、そんな時、病院はお母さんと赤ちゃんにどう向き合うか。。。今回はそんなお話をします。

本当に何も感じていないママは少ない

ママは最初は茶化したり、口をつぐんでいますが、私の知る限り、やはり妊娠には気づいていた、だけど「もうどうすることもできないと思っていた」というケースが殆どです。

何ヶ月も自分だけでぐるぐるぐるぐる考え、誰にも言えない状況で妊娠していることも言えず、赤ちゃんは日々大きくなっていく。

「我が子のことが可愛いなら、大切なら、受診するのが当たり前でしょ」

それはもちろん、できるならそうしてほしいですが、本人は本人なりに限界まで考えてどうすることもできずにいたりします。

これだけネット社会で調べればいろいろな情報が出て来るのに、調べて調べて、正しいことも正しくないことも全部真に受ける。

検診に行くお金がない、ばれたら親に何て言おう、親には言えない、彼氏も今はいない・・・。

そうして誰にも頼れなくなった時、どこに頼っていいのか途方にくれた時。ただただ、目の前の現実が過ぎ去るように口をつぐみ、動くこともできず、毎日どうしようの気持ちだけが大きくなる。

「友達には少し話したけど、どうにかなるかなって。やばいかもっておもったんだけど。。。」

命はそう簡単ではありません。震えながらそう言葉を漏らした妊婦さんを見て、よほど見えない不安でいっぱいだっただろうと思ったこともあります。

実際の場面ではどんな対応がされる?

私たち医療者は、赤ちゃんの養育者はママなので、まずはママの意志を確認します。

ただ、赤ちゃんの安全を守る義務もあるので、やみくもに意志だけで一緒にかえすこともできません。

そんな時、今回ドラマの中にでてきたようにソーシャルワーカーさんといって、ママの生活状況から、使える社会資源を探し教えてくれる存在が関わります。

私たち看護師は、ママの気持ちをできるだけ溶かしながら、赤ちゃんとの間をつないでいきます。

無理してないか、泣きたい時に泣けているか、それもどのママに対しても同じですね。

そして、病院の中だけでなく、病院の外に出たときのために、ママの住む地域の保健師さんとも連携します。

私たちは、おうちに帰った後、病院にいる時のように見守ったりサポートすることはできません。

ドラマのように、ソーシャルワーカーさんが退院後の患者さんにずっとつくというケースも稀だと思いますが、保健師は看護師の資格も有する、社会資源のエキスパートでもあり、地域の健康を守るお役目です。

さらに、未受診であることにより、赤ちゃんになんらか疾患が見つかれば、赤ちゃん自体のサポートをどうしていくのか、病院には通えるか、訪問看護は必要か、近くの小児科とも連携し、ママと赤ちゃんを守るため、生きていける手がかりがつかめるよう支援します。

子育ては一人ではできない、困った時は人の手を借りることも大切だということも、しっかり伝えていきます。

それでも、ママと赤ちゃんでは生きていくのが困難な時に、乳児院という選択肢が出てくるのです。

そうなると、今度は児童相談所の方とも連携していきます。

このように、たくさんの関係者が、なるべくお母さんにも赤ちゃんにも最善の道を一緒に考え進んでいくのです。

今回のように、事前に養子に出すことが決まっていて、生まれてすぐに養子縁組というケースは、日本ではまだまだ少ないように感じます。

でも、これだけ書いて少しご理解いただけたかもしれませんが、日本という国は、本当に困っているひとに対して、実はとても優しい国だと思うんです。

本当は逃げ場も、相談できる相手も、素直に正直に早めに打ち明けてさえくれれば、どこかに存在しているのです。

そのために働いているひともたくさんいる。たくさんのセーフティネットが既にある。(もちろん完全ではないですが)

妊娠中の母子手帳の発行ができれば検診も無料で受けられますし、事前に分かっていることで、分娩費用や社会資源についても、いろいろな策が打てたりアドバイスができます。

妊婦検診が無料なのだって、未受診によるリスクを抑えたいからなのに、一番届いて欲しい相手に届かないのは悲しいなと思うのです。

命の教育をするために私が一番効果的だと思うこと

ドラマの中でも語られていたように、命の教育は大切です。

命の教育も各地で様々な形があり、あかちゃんと実際に触れ合う体験を通したり、分娩の様子をみたり様々な取り組みがされていることと思います。

私が思う、ご両親がお子様にできる一番の命の教育は、親御さんから直接「うまれてきたときのこと」を伝えてあげることだと思うのです。

性教育の前に、もっと大切な我が子の命について。

生まれたときのエピソード、そして初めて会ったときの気持ち、どんなに大変で愛され想われて生まれてきたのか、それをお子さんに伝えてあげることだと思うのです。できれば、パパと一緒に。

みんなひとりひとりのドラマがあります。

コウノドリを見ているのなら、見終わった後でもいいかもしれません。

思春期のお子様にいうのが照れくさければ、メールでもいいかもしれません。

あまり年齢は関係ないと思います。ママの話したいと思ったときに伝えてみてください。

その子なりに、理解していきます。

言葉という道具がまだ上手に使えなければ、ママの表情、声、触れる手から感じるでしょう。

是非、一度お話してみてはいかがでしょうか。

何より大切なこと、 SOSを出す勇気。

ひとは抱えきれない大きな問題に直面し、誰のことも頼ることができないと思い込んでしまうと、ひとりで抜け出せないこともあります。

だから、身近なひとと本音で語れる関係性があることは大切だし、いざという時の逃げ場や駆け込みお助け寺のような場所を持っておくことも大切です。

「周りのひとも気づいたらアプローチしましょう」と書こうか迷いましたが、誰かに助けてもらうことを待って限界に達するよりも、まずは、勇気を出してSOSを出せるようになって欲しい。

先ほど書いたように、世間には、思ったよりも優しい仕組みがあったりします。

どうかひとりで思い悩んで、苦しい気持ちでい続ける人が、少しでもなくなることを願うばかりです。

みなさんは、身近なひとのちょっとした変化に気づいたとき、どうしますか?

そして、自分が苦しくなったとき、SOS出すことができそうですか??

すこしだけ、考えるきっかけになってくれたらと思います。

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