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公開 2015年12月11日  

男の子と女の子、育て方は変えた方がいい?

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本屋の子育て本コーナーに行くと“男の子の育て方”“女の子の育て方”“一人っ子の育て方”など性別、兄弟別の育て方の本がズラーリと並べられています。でも、私はちょっと疑問に思うのです。型にはめた個性を伸ばさない育て方のスタートになってしまう気がします。


「性別による育て方」ってある?

人は誰しも人と違っているところに目が行ってしまいます。それを長所と捉えることができず、“短所”と感じてしまう人が多くいます。みんなと同じだと安心する心が人間にはあるからです。

「女の子は女らしく、男の子は男らしく」育ってほしいと思うママが多いのですね。でも人はみんな違っていていいのです。これを認めてこそ個性を伸ばすことができるのではないでしょうか。

そこで『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子が性別による育て方はあるのかについてお話ししたいと思います。

“こんな傾向があるのね”程度に考えておく

女性脳、男性脳はあります。
体つきも成長も男女差は確かにあります。言葉の発達も女の子の方早かったりします。性差による脳の違いを持って生まれてくるのでほっとおいても女の子は女らしく、男の子は男らしくなります。

男の子はミニカーや電車に、女の子は人形やママごとに興味を持ちます。色紙などを選ばせると女の子はピンクや赤などを取り、男の子は青系が好きな傾向があるようです。興味の対象など、まるで生まれつきの本能としてもっているように見えることがあります。

特にママ自身は女性なので、男の子の行動がなかなか理解できません。上の子が女の子だったり、ママ自身が姉妹の中で育っていたりすると尚更です。でも、そんな時は子育て本が役には立ちますが、あくまでも「男の子はこんな傾向があるのね」の参考程度に留めておきましょう。

13人に1人はLGBTであるという事実

LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー/トランスセクシュア(心と身体の性の不一致)の頭文字を取ったものです。

生まれつき心と身体の性が一致しない“セクシャル・マイノリティー(性的少数者)の子どもは、13人に1人という割合でいると言われています。
これは、育て方やしつけの問題ではなく、最初から男子なのに脳が女子、身体が女子で脳が男子なのです。

“男の子として”または“女の子として”の枠組みで育てられ、自分の好みを主張したり、自分のしたいこと禁止されて育った子どもは、自らの気持ちを押し殺し隠すようになります。やがて「変な目で見られたくない」「親に申し訳ない」と思い、自身のことを恥ずかしい存在とみなし、自己否定するようになります。

小学校に入学すると、男女別に行動することも多くなり更衣室、トイレも異なります。これらが原因で不登校になる子どもも出てきます。
やがて思春期を迎え、第二次性徴が訪れて髭がはえたり、生理がきたり、胸が膨らんだりするといった身体的特徴で深く悩むようになってしまいます。その段階でも苦しい胸の内を誰にも打ち明けられないままでいます。

もし、子どもがそうであったならば、親だからこそ子どもの応援団長になって“男児でもスカートを履く“”女の子でも君づけで呼び、男子トイレの使用を認める“などその子の脳にあった配慮を学校側に求めることも必要ではないでしょうか。

一人ひとりが違う、それが当たり前であること

男子、女子、性的マイノリティー・・・100人いれば100人とも違います。人には多様性があるからです。

女の子だけれどもプラレールや恐竜、蛙の解剖に興味を持ち、大人になっても鉄子さん(=女性の鉄道ファンの俗称)もいます。男の子だけれどもピンクが好き、鬼ごっこするより室内でママゴトしたり人形が好きな子どももいます。

もしかしたら、親から見た時に、“持っている身体的性別とは違う感じ”を受けるかもしれません。

こんな時、「将来が心配だわ」と良かれと思って、「もっと女の子らしい遊びをしてほしい、男の子らしい遊びをしてほしい」とつい親の希望を押しつけてしまうことがあります。

でも、子どもの希望を無視し、“女だから”“男だから”とやりたい遊びを禁止する方が、その子自身の個性を潰しかねません。

例えば男児で、公園でみんなの輪に入って元気に走り回ることをせず、地面の石ころを集めてばかりいる、ママから離れようとしない我が子を「意気地がない、男の子らしくない」と無理に親から背中を押されると子どもは苦しいです。そこに行っただけでよしと思いましょう。

最初から「男はこうあるべき!」「女はこうあるべき!」と枠にはめる押し付けはよくありません。「女の子なんだからもっとおしとやかにしなさい!」「男の子なんだから泣くんじゃない!」と育てる必要もありません。

女児だって暴れるときもありますし、男児でも泣きたい時は大泣きすればいいんです。こうして、小さいころに自分の感情を表に出すことがまず大切です。

子どもを“一人の人間として育てる”ということ

子どもが幼いころは、一人の人間として育てていきましょう。
男女問わず“病院や図書館では走らないで静かにしている”“身だしなみに気をつける”“笑顔で挨拶をする”など社会の規範を、人としてしつけていけば良いのです。

皆さんのお子さんが20年後成人した時、さらに時代は変わっているでしょう。専業主婦、家事手伝いの人は今以上に少数派となり、社会に出てバリバリ働き、会議で意見しプレゼンする積極性を男女問わず求められます。

男の子も結婚して共稼ぎの時代、一人の人間として炊事、洗濯、掃除をできなくてはなりません。お爺ちゃん、お婆ちゃんになってどちらが先に逝くかはわかりません。昔の人のように“男子厨房に入らず”で何もできないと困ることになります。奥さんに先立だれお茶もわかせない、靴下のありかも分からない、料理一つ、つくれないのでは大変なことになりますね。

そして、セクシャルマイノリティ―の人も、もっともっと生きやすい社会に変わっていきます。

“個性を伸ばす教育をしたい“のならば人生のスタートの乳幼児期から性別にとらわれた育て方にこだわるのは止めた方がいいかもしれませんね。

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