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公開 2016年01月04日  

生まれながらの犯罪者なんていない!?大人にできることとは?

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毎日のように報道される殺人や暴行、薬物事件。特に薬物乱用被害は、幼い命にまでも広がっています。薬物使用後に妊娠が分かったタレント、生後数ヶ月で覚せい剤を投与されて死んでしまった赤ちゃん…。この親たちは、いつから人の道を踏み外してしまったのでしょうか。子どもたちを取り巻くすべての親と大人は、未来の犯罪者を減らすために今何ができるのでしょうか?


看守をしていたママとの出会い

私が助産師としてお仕事をする中で、かつて警察官をしていたAさんと出会いました。Aさんは赤ちゃんを産んだばかりのママで、産休前までは「看守」として働いていたそうです。看守とは、刑務所または拘置所で犯罪を犯した人を監督するお仕事。我が子を虐待して殺した母や、妊娠中に覚せい剤を常習している人にも関わっていた、と話してくれました。

そのAさんがおっしゃった言葉が、私の心に強く残りました。それは、「赤ちゃんが生まれてから、いい人ばかりに会う生活になった」という言葉です。

Aさんは今まで、刑務所や拘置所で「目つきがきつい人たち」と毎日関わる仕事をしてきました。しかし、出産後に赤ちゃんと過ごしている今、周りの人が優しく笑いかけてくれることに驚く日々なのだ、とおっしゃっていました。社会にはこんなにも優しい表情をする人が多いのだと、あらためて感じる日々なのだそうです。

誰もが最初は赤ちゃん。でも、犯罪者になってしまうのはなぜ?

私はAさんと出会ってから、こんなことを思うようになりました。それは、「人はどこから犯罪者になるのだろう」ということ。

毎日のように報道される凶悪な事件。看守のAさんいわく、犯罪者になるのは「親が犯罪者」か「彼氏彼女が悪い」ケースがほとんどだとか。その生い立ちの中で、いつしか子どもも人を殺すようになり、傷つけたり、残酷なことをするのも平気になっていく。そして、そのような人間は自分自身のことを大切にしていないから、自分の未来を破滅させてしまう麻薬を使うことも厭わなくなってしまうのだと。

しかし、私はこんなことも思うのです。
「犯罪者と呼ばれるその人だけが、100%悪いのだろうか?」と。

もしも幼い時に、周りの大人たちから毎日のように「かわいいね」「いい子だね」「ありがとう」と声をかけてもらう環境に育ったならば、その後の人生は違ったのではないだろうか?どんな時にも周りの人からたくさんの愛を注いでもらえていたならば、もっと違う人生を歩んでいたのではないだろうか?と思うのです。

そして人の道を踏み外しそうになった時、もしも「あなたは大切な存在だから、自分の未来を大切に生きてね」と応援してくれる大人が見守り、寄り添っていてくれたなら…。もしも家族や友人や恋人が、誤った行動を正そうと本気で関わってくれていたなら…。

犯罪者と呼ばれる人たちをかばうわけでは決してないけれど、私は、人を殺したり騙したり欺いたりしたくなるほど追い込まれてしまう人の経緯は、100%すべて本人のせいではないように思うのです。

もしも優しく言葉をかけ、本当に支えてくれる人がいたならば

私自身も、追い込まれて気持ちがすさむことはあります。絶望的な気持ちに涙があふれて、夜眠れないこともあります。人生は楽しいことばかりではないし、大人になったら誰かに抱きしめてもらい甘えることはなかなかできません。

しかし、どんなに辛く苦しい時でも、いつも私を支えてくれる人がいました。それは家族だったり友人だったり、時には出会ったばかりの人だったり。そんな人たちに支えてもらい、優しい言葉をかけてもらったからこそ、今まで人の道を踏み外すことなく頑張ってこれたように思います。

犯罪者と呼ばれる人たちはきっと、このように「本当の意味で」支えてくれる人がいなかったのではないかと思うのです。だから安心して生きることも、誰かを信じることもできなくなってしまったのではないだろうか、と。中には、必要な教育さえも受けられず、善悪を判断する力すらない人もいるかもしれません。

毎日、目つきがきつい人とばかり一緒にいたら、人をにらみつけることが当たり前になる。ズルイ人とばかり会っていたら「人は信用できない」と考えるようになってしまう。親に「お前なんて生まなければよかった」と言われ続けていたら、自分は生きている価値のない人間だと思ってしまう。「バカ」と言われ続けていたら、頑張ったって自分はたいしたことができないと思ってしまう。素敵だと思える大人が周りに1人もいなかったなら、どんな大人になりたいのかも分からなくなってしまう。

無垢な赤ちゃんが、犯罪を犯す人間に育ってしまうのはなぜか。私はこのような悲しい背景があるのではないかと考えています。

わが子の幸せを願うこと。そして誰もが子どもたちに温かいまなざしを向けること。

すべての親は、我が子が生まれた時に「一生守り抜こう」「幸せな未来を生きてほしい」「すてきな友達に出会ってほしい」そう思って笑いかけたり、抱っこしたりして過ごすと思います。

例外なくすべての親は、わが子の幸せな未来を願い、一生懸命に考えて名前を付けます。犯罪者にしようと思って育てる親は1人もいないと、私は信じています。
でも、自分の子だけが幸せな社会や自分の子さえよければいいというのは、決して幸せな社会ではないように思うのです。

すべての親が、「わが子を取り巻く社会を良くしていきたい」「わが子と周りの子どもたちの安全を守ろう」「わが子が育つ地域から犯罪をなくそう」そう意識して過ごし、行動に移していくことが、未来の犯罪者を減らす一歩なのではないだろうか?と思います。

看守のAさんが感じたような「目つきの悪い人たち」の数よりも、もっと多くの親や大人たちが、子どもたちを「温かいまなざし」で見守る社会。そうなれば、犯罪を犯す一歩手前で食い止められるかもしれない。毎日のように報道される犯罪のニュースを見るたびに、私はそんなことを思い、願っています。

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