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公開 2016年01月29日  

「待つ」ことが苦手な現代人。「待つ」ことが必要な出産。

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スマートフォンの普及により、現代では人を待つ・連絡を待つ、ということが少なくなってきました。その待ち時間を効率的に使うことも可能です。逆に言えば、時間に追われることが当たり前にもなってきたように思います。そんな中、「出産」は、時間も距離も見えないゴールを「待つ」ようなものかもしれません。


日常生活で「待つ」ことってどれくらいあるでしょうか?

皆さんは人と待ち合わせをするとき、どうされていますか?私は、友人とならざっくりと「17時頃に××で」のような待ち合わせをすることがあります。スマートフォンの普及により、いつどこにいても連絡を取ることが可能になり、時間や場所など詳しく決めないことも増えてきました。本屋で立ち読みをしながら、喫茶店でお茶をしながら、ブラブラとウィンドウショッピングをしながら、会える時を待っているような感じです。

いつでも連絡が取れるというのは、「待つ不安」がない、ということにもつながります。待ち合わせはここでいいのかな?まだ来ないけど、何かあったのかな?いつまで待っていたらいいんだろう?一昔前までは、こんなことも多かったことでしょう。時代の変化はすごいですね。

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待たなくてもいい、そんな時代になっても、妊娠・出産・育児となると「待つ」必要がある場面がたくさん出てきます。

私も助産師として、「待つ」ことの大切さを身をもって感じています。お産が始まらない時やなかなか進まない時、赤ちゃんが降りてこない時、ママが疲れている時…このような場面では、「手を加える」という選択と「待つ」という選択があります。

私自身が常に動いていたい人なので、以前は「待つ」ことがものすごく苦手でした。でも、助産師になってママと赤ちゃんと触れ合う中で、「待つ」ことが少しずつ苦ではなくなってきたものです。

お産の始まりを「待つ」不安

私が助産師として働く中で、このようなことがありました。

3人目の出産を間近に控えている助産師ママから連絡がありました。このママは1人目も2人目もスムーズに出産しています。妊娠経過も特に問題はありません。それでも母親となれば、何人産んでも、たとえ助産師の経験があっても不安なものです。

しかも上にお子さんがいるので、夫や家族などのサポートが欠かせません。それを考えると、できれば家族の都合に合わせて産まれてきてほしいと思うもの。「おなかの子に言い聞かせて、毎日歩いて、おっぱいマッサージもして、生まれるように頑張っているのに、予定日を過ぎてしまった。」と泣きが入ってしまったようです。

「頑張ったなら大丈夫よ。もうぼちぼち時が満ちる。もうすぐ満月。あと3日くらいで生まれるから、あまり考えずにのんびり過ごしなよ。」私がそう返した2日後に、無事に赤ちゃんが産まれました。

出産の時を「待つ」不安

また、こちらの思うようにはいかないのが「出産」です。陣痛が始まるタイミングもわからなければ、陣痛が始まってもそれが強くなるタイミングもわかりません。いつ生まれるのかも、ある程度お産が近づかなければ予測が立ちません。

例えばこんなことがありました。陣痛が始まって、明け方に入院された初産婦さん。子宮口は2cmで、陣痛は5~10分毎に来ています。付き添いの旦那さんから「いつ生まれますか?」と聞かれます。「わかりません。今日中には生まれると思いますよ。」私がそうお答えすると「え?」と言われます。陣痛が始まって入院するのであれば、どれくらいで生まれるというのが予測できると思われているようです。

陣痛は、一度始まってしまえば強くなり続ける、というものでもありません。強くなったり弱くなったり、時には陣痛がなくなってしまうこともあります。お産するために入院したのに、一旦退院しましょうということもあります。

それでも、いつかは必ず産まれてきます。その時がいつになるのかはわかりませんが、待った先には必ずゴールがあるものです。

「待つ」ことは「信じる」こと

出産となると、先が見えない中で待つのは不安ですよね。産む本人も、そばで見守る家族も、それは皆同じだと思います。

それでも、信じて待ってあげましょう。赤ちゃんの力を信じて、ママの産む力を信じて。赤ちゃんが頑張ってくれている、元気に産まれてきてくれる…一見もどかしくも思えるこのペースが赤ちゃんには必要なんだと思えるうちは、待ってあげることが必要です。

出産後の育児も、子どもの成長を見守るために「待つ」ということが必要になってきます。「待つ」ことが苦手な現代人にとって、出産で「待つ」ことは、その後の子育てにおいても意味あることにつながってくるのかなと思います。

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