自己肯定感や幸せを感じられる子はどう育つ?「絶対評価」と「相対評価」を考える
14,473 Viewもし、人間の顔に目が一つしかないのが一般的だったらどうでしょう。全員が一つ目だったら、目が二つある人はどんな風に扱われるのでしょう。異質な人間として奇異の目で見られきっと生き辛いでしょう。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10272001819もし、人間の顔に目が一つしかないのが一般的だったらどうでしょう。全員が一つ目だったら、目が二つある人はどんな風に扱われるのでしょうか。異質な人間として奇異の目で見られきっと生きづらいでしょう。
今回は、自分と他人との比較について、『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話ししたいと思います。
「ひとつめのくに」という絵本
「ひとつめのくに」という絵本を読んだことがあります。落語に元々ある話が絵本になったものです。
そのお話は、ある男が、見世物にしようと“一つ目小僧”を捕まえに行き、一つ目の子どもをさらおうとします。しかし、一つ目の子どもの悲鳴を聞いた人々が集まってきて、男は捕まってしまいます。連れて行かれたのは一つ目の国。二つ目の男は自分が見世物になってしまった、というちょっと怖くて面白いお話。
場所が変われば「見世物にされる」立場が逆転してしまうのですね。
周りとの「比較」で言われること
・もし、生涯未婚の人が人口の9割を占めていたら、結婚している人は「わあ、既婚者なんだ」と天然記念物級に珍しがられるでしょう。
・もし、ブラジャーを付けないのが普通だったらブラつけている人は「どうしてそんな締め付ける下着を着けているの?」と言われるかもしれません。
・もし、クラス全員が眼鏡をかけていたら眼鏡をかけていない子どもはいじめられるかもしれません。
・もし、男性がみんなスカートを履くのが普通だったら、ズボンを履いている男性はびっくりされるかもしれません。
このように周りと比べて判断をするということは多いのではないでしょうか。
成績表の付け方とは?
学校の成績のつけ方には、「絶対評価」と「相対評価」があります。
相対評価は生徒を成績順に並べ、5段階評価の場合、5の人数、4の人数、3の人数とパーセンテージが決められています。どんなに頑張って良い点をとったとしても、自分よりも成績のいい子がたくさんいれば5の評価はつきません。これに対して絶対評価は5の人数、4の人数が決められていないのでクラス全員がオール5でも全員がオール1の場合もあります。
それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。
相対評価のメリットは全員が1とか全員が5というのは許されないので教師が極端に偏った成績をつけるのを防ぐことが出来ます。デメリットはどんなに頑張っても成績のいい子がいれば学力の低い子どもは永遠に浮かばれなくなってしまいます。又、生徒同士も、成績上位者がいなくなれば自分が上に上がれるので他人の足を引っ張ろうとする者が出てきたりします。
絶対評価は他人との比較がされないメリットがありますが、全体から見た自分の位置がわかりにくいというデメリットがあります。
今は小学校は絶対評価、中学は相対評価という学校が多いようです。
テストで35点→65点となった時、どう声をかける?
成績表の評価方法はなんであれ、子どもが平均点に達していないと親としてはどんな反応をするでしょう。
前のテストで35点しか取れなかった子どもが頑張って65点をとりました。30点もアップしたのです。けれども、たいていの親は子どもの努力を認める前に、クラスの平均点が90点であること耳にしていると「どうして平均点をとれなかったんだ。うちの子は出来が悪い」と嘆くでしょう。
でも、子どもが65点という事実を周りと比較してあれこれ言っても、なんの意味もありません。意味がないどころか子どものやる気をそいでしまいます。
「幸せ感」とは?
多くの人は自分の幸せを周りとの比較で感じます。
周りのみんなに彼氏がいて、自分だけいなかったら焦ったりしますが、周りの誰も彼氏がいなければ、特にどうってことないかもしれません。これも自身への相対評価なのでしょうか。
脳科学者の茂木健一郎さんの本にこんなことが書いてありました。
「周囲が自分よりも抜きん出ていれば幸せだけど、周囲も同じ生活レベルなら特別に自分が幸せだとは思わない。このように、私達が常に他人との比較において幸福を感じるのだとしたら、幸せとは絶対的なものではなく相対的なものということになります。
・・・・中略・・・
友達がどんどん結婚していき子どもに恵まれる中、自分一人がずっと独身でいると焦燥感にかられることもありますね。・・・」
他者と比較されて育った私
私は母親から同じマンションに住む同年齢のひろみちゃんと比べられ「ひろみちゃんは出来るのにどうして美津子はできないの」と常に比較されて育ちました。身体も小さく頭も悪かった私はどんなに頑張っても追いつけませんでした。
考えてみれば元々、出来のいい子だって同じように勉強するのですから、成績の悪い私が努力したって差は縮まるはずはありませんでした。当時は、永遠に終わることのないマラソンレースをさせられているようでかなりしんどかったです。
最低の点をとった私
私の通っていた中学は10段階評価の成績表でした。音楽理論のペーパーテストでなんと10段階評価の「2」を取ったことがあります。クラスで1名しかそんな酷い点数はとりません。
嘆き悲しむ親を見て何とか次のテストは挽回してやろうと音楽理論の参考書を買って猛勉強をしました。結果、成績表は2から4に上がりました。
10段階評価の4ですから、これもかなり悪い評価でした。でも、私にしてみれば2→4のアップは相当努力した結果なのですが、常に全体の位置からしか評価しない親だったので永遠に褒められることはありませんでした。
幸福感をあまり味わえない脳
私は著者として活動し、人が持っていないものを持っているのかもしれません。でも、自分が手に入れているものには目が行かず、他人が持っていて自分がないものばかりに目が行く思考癖が付いてしまっています。
もし、65点という点数をとっても平均点と比べられることなく「頑張ったね」と褒められ、音楽の通知表が“4”でも「努力したね」と認められていればこんな風にならなかったのかもしれません。
“自尊感情”だとか“自己肯定感”のフレーズは聞き飽きるほど耳にしますが、「100点と取って偉い」とか「一番なっておりこうだね」という他者との相対評価による褒め方をしていると、二番手三番手、またビリになったときあっという間にもろくも崩れ去る“偽りの自己肯定感”が付いてしまうのではないでしょうか。
だから、65点でもまず認めてやること、ダメ出ししないことです。そうすることで子どもの心の中に「今の自分でよい」「自分は生きている価値がある」「かけがえのない存在」と思うことができ自分が好きになります。結果、幸せな人生を歩むことになるのではないでしょうか。
常に能力の高い人と比較される人生を送っていると、どんなに成功しても「どうせ僕なんて」と不幸の種を見つける悪い癖が付いてしまい、ないもの探しの旅をおくることになります。
子育てで一番大事だと思うのは“努力しても成績が上がらない”“経済的に恵まれない”“女の子なのにあまり可愛くない”あまりハッピーとは言い難い状況下に置かれても置かれた状態を幸福と感じられる脳を作ることだと私は思っています。
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