親目線でみる「魔女の宅急便」のススメ!主人公キキのお父さんの一言に胸がギュっとなる
44,929 Viewスタジオジブリ制作、宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」。子どものころから大好きな作品です。自分も子育てをするようになり、ママ目線で初めて観てみると、今までにはなかった世界が広がって見えました。
13歳の少女の旅立ちと、新しい町での暮らしを描いた魔女の宅急便のストーリー
13歳を迎えた魔女の子キキが、一人前の魔女になるために、親元を離れて「自分の町」を見つける旅に出る。海の見える町で新しい人たちと出会い、挫折を経験しながら前を向いてがんばる少女のストーリー。
私は映画「魔女の宅急便」が大好きで、これまでに何度も繰り返し観てきました。
私自身、18歳で実家を離れて一人暮らしを始めた時や、その後海外留学をした時には、主人公のキキの姿に自分の心境を重ね合わせて、とても共感して勇気や元気をもらってきました。
最近、ママになってから初めてじっくりとこの映画を観ました。すると、これまでとは全く違った場面で心に響く言葉があったのです。
「いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。」
ストーリーが始まって間もなく、キキがその夜の旅立ちを決心し、出発の準備を始めるシーン。キキはお母さんに仕立ててもらった黒い魔女のワンピースを着ています。そんな姿を見て、「母さんの若いころによく似てる」と目を細めるお父さん。
その時、キキが言いました。
「お父さん、高い高いして!小さいときみたいに」
高い高いしてもらったキキは、嬉しそうに笑いながらお父さんに抱きつきます。そのキキを抱きしめたお父さんのセリフに、早くも涙が止まりませんでした。
「いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。上手く行かなかったら、帰ってきていいんだよ。」
私は、自分が高校を卒業して一人暮らしをすることになった時のことを思い出しました。
県外に借りた一人暮らしのアパートまで、家族みんなで車で送ってくれました。そして何日かかけて引っ越しをして、部屋を片付け、いよいよみんなが帰ってしまう時のこと。私はそれから始まる大学生活にワクワクする気持ちと、念願の一人暮らしが実現してウキウキしている気持ちでいっぱいで、家族と離れるということをきちんと理解できていませんでした。
「元気でがんばりなさいね」
そう言って車に乗り込む時、母が手で顔をおおいながら泣いていました。その姿を見た時に、私は初めて「親と離れる」という現実に直面しました。
そしてみんなが出発した後、ひとりぼっちになった私も泣きました。
自分も2児の母となった今、私もあの時の母の涙の意味がよく分かるようになりました。小さな我が子が自分の手を離れて巣立っていく。その瞬間に抱く親としての気持ちは、どんなものだろうかと想像するだけでも胸が張り裂けそうになります。
「いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。」
キキのお父さんのこの言葉は、まさにその喜びと寂しさがギュッと詰まっているように思います。
我が子を送り出す親の気持ちになってこのシーンを観てみると、いつか自分の手を離れて旅立つ娘たちの姿を想像してしまい、それだけで何枚もティッシュを濡らしてしまいました。
親は少しずつ、子どもがひとりで生きていくために必要なものを手渡している
その後のストーリーの中にキキの両親はほとんど出てきませんが、様々な場面で親として大切なことを教えられました。
中でも印象的だったのは、親はいつか子どもが巣立っていく日に向けて、ひとりで生きていくために必要なことを教え、手渡しているのだな、ということです。
魔女の黒いワンピースが地味だとふくれる娘に、お母さんはこんな言葉をかけています。
「そんなに形にこだわらないの。大切なのは心よ。そしていつも笑顔を忘れずにね。」
出発の時、自分が長く使い込んできたほうきを持たせたお母さん。一緒に行くことはできないけれど、少しでもひとりで旅立つ娘の力になれるようにと、最後に手渡したお守りのようにも感じました。
また、キキが新しい町でお届けものの仕事をしていて、依頼主の家の電気オーブンが故障した時、キキが薪のオーブンを使うことを提案したシーンがあります。そこでキキは自信を持って「田舎で母に仕込まれました」と言いました。
親と一緒に過ごす日常生活の、ほんの些細なことの積み重ね。どこでどのような形で、子どもの生きる力につながるか分からないなと思いました。
そして何より、自分から周りの人たちに話しかけ、道を切り開いていくキキの姿を見ていると、小さなころからどんな風に過ごしてきたのかな?と自然と想像が広がりました。キキはしっかりしていてがんばり屋さんですが、甘えるところは素直に甘え、他人の力になりたいと進んで手を貸すことができます。きっと多くの町の人たちに囲まれて、のびのび育ってきたのだろうなと想像してしまいました。
親として大切なのは、子どもを「信じる」こと。そして親の役割は、それを「見守る」こと。
キキがどのように育ってきたのか想像を巡らせるうちに、私は「キキの両親は、娘のことを信じてあげているのだろうな」と感じるようになりました。そのきかっけは、両親が出てくるシーンではなくて、実はいくつかのキキのセリフの中にありました。
キキは町に降り立ってすぐ、交通事故を起こしそうになって警察に呼び止められます。そこで身元を聞かれた時に「親に連絡するの?」と、両親のことを気にかけます。
また、初めて宅急便の仕事の依頼を受けて飛び立った時、一緒にいた黒猫のジジにこう言います。
「ジジ、私この街気に入ったわ。これでお母さんに手紙を書けるもの。」
13歳の少女なりに、親に心配をかけたくない、親を安心させてあげたい。そういう気持ちをずっと持っているのだなと感じました。それは、自分を信じて送り出してくれた両親の期待に応えたいという、親子の信頼関係があってこその気持ちなのだろうと思います。
映画の最後はキキから両親に宛てた手紙で締めくくられますが、その言葉がとても印象的でした。
「仕事の方もなんとか軌道にのって、少し自信がついたみたい。落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです。」
この映画全体を通してキキが乗り越え切り開いてきた日々を、両親は知りません。でも、娘からのこの言葉を通して、きっといろいろな経験を通して成長したのだろうと読み取ると思うのです。
子育てをしていると、失敗しないようについ手を貸したくなることばかりで、子どもを信じて見守るということの難しさをよく感じます。今後、娘たちがどんどん成長していく中で、迷ったらまたこの映画を観ようと思いました。
今まで自分がキキの目線で観ることの多かった映画ですが、親の気持ちに共感したり、ママ目線で娘を見守るような形でキキの成長を観たりするのも、とても新鮮です。お子様と一緒に、久しぶりに観てみてはいかがでしょうか?
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