今日もまた同じ絵本?でも、子どもの「繰り返し好き」には、こんな意味が隠されているんです
116,110 View子どもって毎晩、お気に入りの同じ絵本を持ってきませんか?また、今読み終えたばかりなのに「もう一回読んで」とせがんできませんか?でも親は同じ本を毎日毎晩繰り返し読まされるのは、はっきり言って苦痛ですよね。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10387002225子どもって同じ遊びばかりします。絵本も同じ絵本ばかり「これ読んで」と持ってきます。
ちょっとうんざりしちゃう時、ありませんか?
そこで、今日は『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子が、「繰り返し」の大事な意味についてお話ししたいと思います。
子どもは繰り返しが好きな生物
子どもは“繰り返し”が大好きな生き物です。
赤ちゃんに「いない、いない、ばあ」をして1回で飽きてしまうことはありません。何度も何度も喜びます。次にどんな顔が出てくるかわかっていて笑う準備までしています。
伝い歩きをする0歳児、転んでも転んでも何度も果敢に挑戦します。「もう転ぶから嫌になった。立つ練習はもう止めよう」となってしまう赤ちゃんはいませんね。
こうやって様々なことを習得していくのです。もし、この本能にも近い習性である“繰り返し好き”でなければ子どもは成長することができないのではないでしょうか。
大人は繰り返しが嫌いな生物
これに対して大人は真逆です。
“試験問題に出るから”“調べものをするために必要に迫られて”などよほどの理由がない限り、一度読んだ本を何度も読み返すことはまずありません。私も本はよく読みますが繰り返し読む本は皆無です。本棚にしまってそのまんま再び開かれることはまずありません。
講演会だって同じ話だったらまた聞きに行くこともありません。映画も同じ映画を何度もみに行くこともしません。それから人の話でも、同じ過去の栄光の自慢話をする人に対して「また、その話かよ~」と辟易することもあります。
このように大人は同じ話を何度も聞くことははっきり言って苦痛です。だから、絵本の読み聞かせのとき、子どもから同じ本をリクエストされるとうんざりしてしまうのですね。
読むのがしんどい「桃太郎」
昔話として有名な桃太郎というお話はこんな風です。
桃太郎が歩いていると、犬が出てきて言いました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬を連れて鬼が島へと向かいました――
桃太郎が犬を連れて歩いていると猿が出てきて言いました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬と猿を連れて鬼が島へと向かいました――
そこに一羽のキジが飛んできました。
「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
何回も同じ言葉が続くので、つい、こんなふうに省略したくなります。
「キジはさっきの犬や猿と同じことを言いました……」
でも、子どもは「ちゃんと読んで!」と怒ります。
これも読むのがしんどい「大きなカブ」
大きなカブも単調な繰り返しの話。ぺージをめくってもめくっても登場する人や動物が変わるだけで文章はほぼ同じです。めんどくさくなったのでこう省略しました。
「畑にカブがありました。みんなで力を合わせたら抜けました。最後のちっぽけなネズミの力でも役に立ちますね」と教訓をからめて要約して終了!
子どもは不満たらたらで「ちゃんと読んで!」と怒りました。
繰り返してもらうことで日本語を習得している
子どもは一度読んだ絵本を何度も持ってきます。
“て・に・を・は”まで内容を一言一句暗記しているほどです。ちょっとでも間違えると「違う!」と怒ります。絵本がボロボロになってもお気に入りの一冊を持ってきて、毎晩「これ読んで」とせがんできます。
大人と違って知っているからこそ同じ話を何度も聞きたいのです。
しかも!読み終えた途端「もう1回読んで」と言ってきます。好きなページが近づいてくると笑う準備までしています。
でも、子どもは同じ文章を繰り返し読んでもらうことで、その言葉を母国として吸収しているのです。
「突然、犬が出てきてびっくりしちゃった」こんな言葉を話す子どもは「突然、鬼が出てきました(大工と鬼六の話)」を繰り返し読んでもらっていた経験がある子どもなんです。
寒い冬の日「手がかじかんでしまった」とお喋りできる子どもは“マッチ売りの少女”を何度も読んでもらっていたりします。一回だけしか触れていないと母国にはなっていないはずですよね。
繰り返し読むのは、ちょっとしんどいですが“子どもの語彙が増える”と思って辛抱して、トコトン付き合ってあげてください。
貧弱な言語環境をカバーしてくれる絵本
朝から晩まで飛び交うのは貧弱なシンプルセンテンス、「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」「きちんんとしなさい」と機関銃のように口を酸っぱくして怒っているパパママは「絵本の表現豊かな文章が、自分の足りない部分をカバーしてくれている」と思いましょう。
実際に言葉が豊かな子は本をたくさん読んでもらっている子どもですよ。
読んでいる最中「これなあに?」といちいち聞いてくる子ども
せっかく読んでいるのに、猿を指して「これは?」パンダを指して「これは?」と聞いてくる子ども。「わかりきったことを何で一々質問してくるの!」とイラッとしてしまいますよね。
でも、この“いちいち質問”は答えを知りたいのではなくママと関わりたいだけ。赤ちゃんの時「いないいないばあ」を飽きもせず喜んだように同じ反応が大人から返ってくることを楽しんでいるだけです。親子のスキンシップの一つとして、子どもが満足するように「そうね、猿ね」とか「今年は申年(さるどし)ね」と答えてやり、コミュニケーションのツールにしましょう。
例えば、“猿蟹合戦”読み聞かせ、人の物を欲しがってはならない、意地悪をしてはならない、欲張りなことをすると結局は損をするという教訓話です。
ところが・・・・
「何で柿が青いの?」
「猿さん動物園にいた~」
とストーリーに全く関係のないことを話しかけてきます。
そんな時「そこじゃあないでしょ!」「なんで毎回同じことを聞くの!」とか「途中で質問してくると話が中断するじゃない」「最後までおとなしく聞いていなさい」と叱るのはやめましょう。興味があって質問しているのに拒否されると絵本自体がだんだん嫌いになってしまうリスクもあります。
「教訓を学んでもらおう」なんて最初から思ってはなりません。それから、4歳、5歳と成長していくうちに文章やストーリーに関心を持つようになり“いちいち質問”も減ってきますよ。
まとめ
大人から見たら同じことの繰り返しでも、子どもは言葉を吸収し様々な体験をしているのです。繰り返しが苦手な大人にはちょっと苦痛ですが、子どものためだと思って読みましょう。そして、ボロボロになるまで、満足するまで読み聞かせをしてあげたいですね。
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