夫との結婚のきっかけについて聞かれる時、いつも大好きだった祖母の顔が思い浮かびます。
というのも、夫からのプロポーズのきっかけが、実は「祖母の存在」だったからです。
小さいころから私のことを特別可愛がってくれた祖母。
私も祖母に懐いていました。
でも成長に伴い、思春期や反抗期で私の世界が広がっていくにつれ、だんだん会話も減りました。就職を機に家を出てからは、更に話すこともなくなりました。
わが家は両親が過保護気味。それに昔からウンザリしていた私は、たまに実家に帰っても夕食は地元の友人と食べに行くなど、あまり家に寄り付かなくなっていました。
祖母がどんな思いで私を見ていたのかは、今となっては知る由もありません。
ですが、その頃の自分の振る舞いを思うと、もう少し祖母と過ごす時間を取ればよかったなぁと悔やまれます。
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結婚のきっかけとなった「祖母の存在」
もう取り戻せない祖母との時間
そのうちに、高齢だった祖母は体調が優れない日が増え、認知症のような症状も出始めました。
それもあってか、母親から「仕事をやめて帰ってきて、地元で再就職したら?」と何度も電話がかかってきていました。
「せめて顔を見せに、帰っておいで」とも言われていました。
ですが当時、仕事に恋に忙しかった私は、母親からの電話すら面倒に思っており、曖昧な返事の繰り返し。
「次のお盆休みに、休みが取れたら少しだけ帰省するか……」そんなふうに思っていた夏の日の夜のことです。眠っていた私は、父親と母親からのたくさんの着信に気付きませんでした。
「大変なことが起きました、折り返しください」父の固い口調の留守番電話の録音を、私は今でもハッキリと思い出すことができます。
それは、祖母の突然の訃報でした。
落ち込んでいた私に、思いがけない言葉が
こじんまりとした葬式が終わり、憔悴した両親の姿を見て、私はいたたまれない気持ちでいっぱいでした。
母親は、帰って来なかった私を責めませんでした。
ただ、ひどくショックだったのは「〇〇ちゃん(私の年下の従姉妹)はウェディングドレス姿を見せてあげられたから、しっかりおばあちゃん孝行ができたね」という母親の言葉。
思春期以降あまり祖母と過ごしてこなかった罪悪感からか、「なかなか帰って来ず、結婚もしてなかった自分は、孝行ができていない」そう言われたような気がしました。
(後日、母親にこの話をすると「覚えてない」とのことでした)
私は実家から帰ると、当時付き合っていた彼氏にこの話をしました。
自分はたいしておばあちゃん孝行はできてないし、冷たい孫だったのかもしれないこと。
もっと実家に頻繁に帰って、色々話せばよかった。
祖母が自分にしてくれたことを思えば、地元で再就職してでも、もっと一緒に過ごすべきだったのかもしれない……、という思い。
「なんだか親にも申し訳ない気分でいっぱいだし、疲弊してる親も心配だから、もう実家に帰ろうかなとも考えてる」
そんなことを、とりとめもなくポツポツと話しました。
すると、ずっと話を聞いてくれていた彼が、「おばあちゃんには見せてあげられなかったけど、結婚しようか」と急にプロポーズ。
それをきっかけに、その彼が、今の夫になったのでした。
祖母への限りない感謝とともに、家族と過ごす日々
あとで夫に聞いたところ、急にプロポーズしてくれた理由は、「実家(県外)に帰ったらもう会えなくなるかなと思って焦ったから」だったそうです。
祖母のことが無ければ、もしかしたら夫とは結婚できていなかったかもしれません。
というのも当時、夫は「今のところ結婚願望は無い」と言っていたから。
そんな考えの夫がプロポーズするきっかけをくれたのは、祖母でした。
今でもプロポーズの話を思い出すと、嬉しい気持ちと同時に祖母への申し訳なさ、祖母を失った悲しみを思い出します。
でも、あの時のプロポーズのおかげで、今の私たち夫婦と可愛い子ども達がいる。
それを考えると、祖母への思いは後悔より何より「感謝」でいっぱいになります。
祖母が与えてくれた愛情は計り知れない。だからこそ、たくさんの愛情を、私も家族に繋いでいきたいと思っています。
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