「集中力がない。」
小さな子ども達は、大人からよくこの言葉を言われます。
保育園や幼稚園のクラスなどで、工作をしているとき。
ママに絵本を読んでもらっていたけど「次!」と違う絵本を持ってきたとき。
すべり台で1回すべっただけで違う遊具で遊びだしたとき。
「この子は集中力がない。」と見られてしまうのです。
本人からすれば、ただ、やめただけ。
「もう終わりにしよう」と、自分で判断しただけなのに。
本当は、自分の活動を自分で決めるって、すごい力です。
しかしそれを「集中力がない」と見られてしまう。
これっておかしいと思いませんか。
「集中力がない子ども」なんていない
5,968 View小さな子どもたちが、遊びや絵本を読むことを早い段階でやめると
「まだ集中力がない」
「集中力が育っていない」
と大人は言います。
しかし本当にそうなのでしょうか?
今日は子どもの『集中』に対する誤解について、お話させてください。
やめる=「自分の活動を自分で決める力がある」ということ
大人におきかえて考えてみる
この違和感は、大人のシチュエーションにおきかえるとわかりやすいと思います。
例えば、友人がある音楽をすすめ、アルバムをかしてくれたとき。
聴いてみると、自分にはあまり好みじゃない。
あなたは、それでも聴き続けますか?
「せっかく紹介してくれたし」、「聴いているうちに良くなるかもしれない」と、そういう自分なりの理由や興味を見つけて最後まで聴く人もいるでしょうが、「わたしには合わなかった。」と途中で終わりにするのが自然な反応ではないではないでしょうか。
じゃあ、それは、あなたの集中力がないからか。
違いますよね。
ただ、自分には好みが合わなかったと、聴くのはやめようと判断しただけのことです。
こんな当たり前のことが、子どもだとそうはいきません。
他の子と比べられ、大人が決めた時間の長さと比べられ、
「この子はできない」「集中力がない」と、本質とは異なる見方をされてしまうのです。
「子どもは未熟」という先入観をなくすと見えてくるもの
じゃあなぜそう見られやすいのか。
それはきっと多くの大人が無意識的に 「子どもは大人が育てないと育たない未熟な存在」 という先入観を持っているからではないでしょうか。
たしかに子どもの育ちの中には、大人のサポートが必要な部分はあります。
しかし全ての力が未熟で、教えないと育たない、何もできない、というわけではないのです。
私自身、これまで5万人を超える子ども達と出会わせてもらいましたが、
出会った限りでは、集中力のない子どもって、見たことありません。
先日も、こんなことがありました。
ある保育園にて、4歳児クラスの子どもたちと色紙や画用紙を使ってお菓子をつくって遊ぶワークショップをしたときのこと。
打合せの際に、担任の先生がこう言いました。
「すみません。なかには集中がもたない子もいると思いますが…」
実際はどうだったか。
クラスの子どもたちはみんな、予定してした2時間では足りないというほど、集中して遊んでいました。
子どもたちは、自分の好きなお菓子をつくることから始め、それぞれの興味・関心をもとにあそびを発展させていきます。
お菓子を作り続ける人。
店員さんになる人。
お客さんになる人。
お金を作る人。
一つ新しい発見が生まれると、周りの遊びと繋がり、さらにイメージの世界が膨らみ、新たなアイデアが生まれてきます。
お店の看板を作る人。
品物を管理するタブレットを作る人。
どんどんお金を作って、みんなに配る人。
お金をしまう財布を作る人。
そして、またお菓子を作る人。
これらは、全部子ども達が自ら考え、表現してきたものです。
作って、なりきって、遊んで、考えて、また作って。
集中力を存分に発揮していました。
この日のワークショップを終わりにした理由は、子どもたちが集中力をもっていなかったからでも、集中力が切れてしまったからでもありません。
「お腹がすいたから。」
最高の理由だと思いませんか。
集中力のない子どもなんていない!
集中力のない子どもなんていません。
この保育園の例のように、子どもというのは、様々な興味・関心・好奇心との出会いがあって、それを自分で考えて、見つけたり、意味づけたりしながら行動する時間があれば、どこまでも集中力を発揮する人たちなんです。
今回はその要素に加え、時間や行動を共有する存在がいたので、より集中力が増していたように感じます。
「子どもは自ら育つ」という視点をもつ
「子どもというのは、大人が導かないと何の力も育たない未熟な存在だ」という先入観を一回置かないと、見えてこない子どもの育ちや魅力というものが、たくさんあると思います。
子どもは自ら育つ。
そんな視点を持って、子どもたちの育ちや魅力をたくさん見つけていきたいですね。
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