我が家も、今考えると産後3年間は、産後クライシスの深みに嵌っていたと思います。
夫が長期出張に行くといえばホッとし、ある意味「いないほうが楽」と思うなど、今では考えられないくらい、夫婦間は険悪でした。
その後、紆余曲折があって今は本当に充実した家族生活を送っていますが、どうやって産後クライシスを脱却したのか、その過程やポイントを尋ねられることが本当に多いのです。
我が家なりの幾つかのポイントはあるのですが、そこにも通ずるヒントを、偶然手にとった1冊の本から学ぶことができました。
なぜ夫婦はすれ違ってしまうのか?産後クライシスから脱却する方法
68,100 View出産後、それまで仲の良かった家庭にも起こる可能性がある「産後クライシス」。産後クライシスを体験したご夫婦も、実は多いのではないかと思います。今日は何気なく手にとった一冊の本から得た、「産後クライシスからの脱却方法」について、ご紹介したいと思います。
我が家も例外なくハマった、産後クライシス
その本の名前は「その時までサヨナラ」
作者は山田悠介さんです。
ここから先、少し内容やあらすじに触れざるを得ない事がありますので、もし本をまだ読んでおらず、楽しみに読みたい、という方は、先に当書をお読みいただくことをおすすめします。
この本の主人公は、1人の男性ですが、仕事に命をかけ、それが家庭内の自分の役割だと思っています。
妻との会話もなく、息子の事をカワイイと思うこともない。
息子の病気をきっかけに、家を出て行った妻子のことを、疎ましくさえ思っています。
ところが、あることをきっかけに、彼は息子の面倒を自分が見なければならない状況に陥ります。
料理も、洗濯も、掃除もしない。
息子の幼稚園の行事にも参加しない。
息子と一緒にお風呂に入ったことすらない。
そんな生活を送っていた彼が、一つ一つ、家のこと、子どものことを知り、身につけていくその過程が、この本には書かれています。
そして、崩壊仕掛けていた家族がふたたび一つになっていく、家族の再構築の様子も。
物語から読み解く、「産後クライシスの原因」
この本に見る、産後クライシスの原因は、以下の2つのポイントだと私は考えます。
①夫も妻も、それぞれの思いを抱えているのに、それをうまく噛みあわせる行動をしていないこと。
②夫も妻も、相手の考えていることを、「自分の尺度で」理解してしまっていること。
この夫婦は子どもができたことで結婚をするので、いわゆる「夫婦だけの期間」というのがほぼありません。
結婚後、息子が産まれるまではそれでも仲良くできていたのですが、息子が産まれて以降、妻は息子にかかりきりになる。
そして、夫は「仕事で成果を出し、出世して稼いでくるのが自分の家庭での役目」とばかりにますます仕事に没頭します。
妻は家庭を守るために、子供の面倒をみて家事をする。
夫は家庭を守るために、長時間でも精力的に仕事をし、成果をあげようとする。
実は、夫婦ともに、行動の基本は家庭の事を考えて、なのです。
でも、相手にとっては、「子ども優先で自分の仕事にはケチをつけてくる妻」「仕事ばかりで子どもの病気にも無関心な夫」と映ってしまう。
見事なまでのすれ違いです。
さらに、夫婦がそれぞれに抱えている思いは、お互いに共有されることはないのです。
家庭を守るために良かれと思ってしている、ということは相手に伝わりませんし、出てくる言葉は相手を否定し、傷つけるものばかり。
どうせ妻は、こんな風に思っているんだろう、と心のなかで自己理解していく夫の気持ちの描写が、いたるところに出てきます。
産後、会話がなく冷えきってしまう家庭の多くは、こんな感じで、自分の思いを相手に伝えることもなく、ただただ自分が良かれと思った役割や行動を全うしているケースが多いのではないかな、と思います。
「産後クライシスからの脱却」そのポイント
そして、彼らの産後クライシスからの脱却方法のポイントは、次の2つです。
①父親が子どもと接する時間をとり、「子どもという存在を知っていった」こと。
②妻も素直になり、自分の思いをきちんと夫に伝えるようになったこと。
このお話では、夫は半ば強制的に、子どもとの時間を過ごし、子どもの面倒を見ざるを得ない状況が続きます。
朝食を作り、洗濯を回し、掃除をして、幼稚園バスのお見送りをする。
運動会にお弁当を作って見学に行く。
一緒にお風呂に入る。
今まで全くやったことのない事を、彼は毎日こなしていくことになるのです。
最初はお風呂に一緒に入るのも「怖かった」父親が、お弁当を用意して運動会を観戦に行く姿は、ちょっと感動ものです。
父親の行動が変化するに伴って、息子も、父親のことを信頼し、気持ちを預けるようになっていきます。
それと同時に、妻の方も、「一度は諦めた。でも、あなたにちゃんと気持ちを伝えたかった」と自分の気持を吐露するようになるのです。
冷えきった家族が、段々と再構築され、最後に暖かな光で包まれる様子は、小説に隠された伏線も相まって、何度読み返しても涙が出ます。
再生の物語は、家族それぞれ
どこの家庭でも、こんなふうに家族が再生できるというものでもないかもしれません。
それぞれに事情があり、また背景や環境があるので、これは出来過ぎた物語なのかもしれません。
けれども。
同じように家族を守ろうとしながらもすれ違ってしまう夫婦。
長時間働く事を頑張りすぎて、子どもという存在について知らない、知れない男性。
家事や時に仕事を全部自分で背負い、更に子育てまで全てを背負おうとギリギリまで頑張ってしまう女性。
そんないっぱいいっぱいなご夫婦も、もとを正せば、「家庭を守りたい」という気持ちから、家庭のために行動しているに過ぎないケースもある。
そんなことを、ショッキングな出来事とともに教えてくれるのが、この物語だと思います。
そう、この物語の背景には、とてもショッキングな出来事があります。
それこそ、取り返しの付かないことが。
そうならないように、そして万が一そうなった時に後悔しないように、私たちは産後の生活を、夫婦のコミュニケーションを生きていかなくてはいけないのかな、と思います。
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