私には長年疑問に思っていたことがありました。
子どもたちが努力と根性で頑張った授業よりも、半分遊びのような授業の方がなぜ成果が上がるのかです。
たとえば担任時代、理科の授業で牛の心臓を解剖してその仕組みを観察したあと、
フライパンで調理してみんなで食べました。
別にそこまでのことをしなくてもよかったのですが、子どもたちがおもしろがるだろうと思いました。
音の伝わり方を「見える化」したこともあります。
黄色い旗を手にした子どもたちに校庭から山の斜面まで並んでもらい、
私が運動会で使うピストルをパンと打ち、音が聞こえたら旗を上げてもらうのです。
音がすると黄色い旗が連続して次々と上がっていきました。
これで音の伝わり方を子どもたちは理解しました。
日本人は集中と緊張を混同している。集中はリラックスから生まれる。
17,606 View「だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です ママたちとの対話から生まれた 子育ての知恵ツイート41」(著:陰山英男)より、全10回にわたり「知恵ツイート」の一部をご紹介いたします。
第4回目は「日本人は集中と緊張を混同している。集中はリラックスから生まれる。」をご紹介します。
日本人は集中と緊張を混同している。集中はリラックスから生まれる。だからアスリートは試合を楽しもうとする。しかし、周囲は今度の試合は重要だからと気合いを入れろと、あえて緊張させてしまう。これでパフォーマンスは落ち、テストなら1割は点が落ちる。本番前には笑顔で必ずできると言ってやれ!
— 陰山英男 (@Kageyama_hideo) September 18, 2015
おもしろいから集中する
おもしろい授業の方が成果が上がる理由がわかったのはかなり後になってから。
ロンドン五輪のメダリストたちにインタビューしたときです。
12人のメダリストたちに共通していたのは、試合を楽しみ、リラックスしてしたことでした。
近年のオリンピックの選手たちは、あきらかに昔とは違います。
選手たちが「楽しんできます」と言うようになりました。
それと軌を一にしてメダルの数も増えてきました。
私が子ども時代のオリンピック選手は日の丸を背負って歯を食いしばって頑張るというイメージでした。
当時「楽しんできます」などと言う選手はひとりもいなかったと思います。また、そのようなことを言える空気でもありませんでした。
当時の選手たちは緊張していたことでしょう。
歯を食いしばった結果、今ほどの数のメダルはとれませんでした。
ここからわかるのは、集中はリラックスから生まれるのであって、緊張からは生まれないということです。
私の授業も子どもたちがおもしろがることで集中し、その結果成果が上がったといえます。
私自身もその授業を楽しんでいました。おもしろいと感じているのが集中の姿なのです。
不安を取り除く
アスリートたちから私はとても多くのことを学びました。
そのなかでも吉田沙保里選手には深い感銘を受けました。
インタビューには監督も同席していたのですが、両者の関係がとてもフレンドリーであることに驚きました。
普通は格闘技というと厳しい上下関係があるように思われます。
でも50歳過ぎの監督と吉田沙保里選手は
気のおけない友人同士のように冗談を言い合っていて、笑いが絶えないのです。
それでいて彼女は監督をリスペクとしていることも十分に感じることができました。
絶えず笑いを引き出す話をして周囲を明るくする吉田選手。
彼女がいるとまわりがパッと明るくなるのです。
このリラックスした雰囲気があるから吉田選手が絶対王者でいられるのだと思いました。
緊張すると集中できなくなります。
これはどのような場面でも同じです。
テストでも落ち着いて問題をよく読めば解けるのに、
緊張すると問題が頭に入らなくなり解ける問題も解けなくなってしまいます。
明日テストというときは緊張させるよりも「きっとできるよ」と子どもを安心させてあげてください。
試合を終えた子どもが帰宅したときにアスリートたちの親がまず聞くのは
お腹は空いてないか、
疲れていないか、
十分頑張れたかと、
本人の気持ちばかり。
試合の勝ち負けにはあまり大きく反応せず、
子どもが気持ちよく取り組めるよう配慮していました。
不安の除去、これこそ親が第一にすることだということも、アスリートたちから学ぶことができました。
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