東大卒で外資系金融に17年勤めた田内学さんが、41歳で作家になった理由

お金を追うはたらき方は孤独になる

―人気企業に入っても慢心せず、自分のはたらき方を見つめ直せた理由は?

入社した頃は慢心していたかもしれません。与えられた仕事を要領よくこなしておけば会社が自分を支えてくれるという意識で働いていました。しかし、入社して5年経った2008年、リーマンショックが起きました。会社の中はリストラの嵐。僕は運良く会社に残りましたが、そのときに、自分と会社の関係について考えることができました。「会社が社員を支えてくれるのではなく、自分たち社員が会社を支えているんだ。会社という箱を通して、世の中に役立つものを提供しているからお金がもらえているんだ」という当たり前のことにようやく気づいたんです。

―理想のはたらき方や望むキャリアを手にするためには、何を意識したらいいでしょうか?

きれいごとに聞こえるかも知れませんが、「社会のために働く」ということを意識することだと思います。自分のことだけを考えて、好きなことをやりたい、良い会社に入りたい、たくさん稼ぎたいと思っても協力してくれる人はほとんど現れません。就職活動もそうですよね。僕自身も孤独な戦いを強いられた思い出があります。
ところが、社会をより良くするために本を書きたいと思うようになってからは、佐渡島さんをはじめ多くの人がサポートしてくれるようになりました。誰かのためにはたらいてこそ味方が増え、はたらく意義も感じられます。

―これからはどんな活動をしていきたいですか?

世の中の人、特にこれから社会に出ていく若い人が、お金と自分と社会の関係を知り、他者の協力を得られるようにしていきたいです。お金だけを求めても、その先にあるのは殺伐とした競争だけ。きちんと役に立ってお金の先にいる人とつながることで、初めてキャリアの可能性が広がります。
価値あるはたらき方を一人ひとりが見つけられるように、これからも活動を続けていきたいです。

(文・秋カヲリ)